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殿下との授業の後、サッと身支度をしてからドラゴンのところへ向かう。
濡れた髪が冷えないようにフードを目深に被るが急いでいたのでシャワーのみで終わらせた体は少し冷えてしまった。ドラゴンが待っていてくれているのではないかと気持ちがはやる。
「遅くなってごめんよ!」
枝をかき分けた先で待っていてくれていたドラゴンに声をかけ首に抱きつく。いつもなら鼻先で俺の頬を擦ってくれるのに今日はそれも無く、なんだか素っ気ない様に感じる。
「遅くなったのを怒っているのか?実は追加の仕事を受け持ってしまったからこれからは来るのが遅くなってしまうんだ。なるべく早く来られるように頑張るから許してくれ」
頭をドラゴンの首筋に擦り付けて謝ると被っていたフードが落ちた。濡れた髪がドラゴンに触れる。冷たかったのか…ドラゴンの赤い瞳が少し揺れ動いたあと温かい空気が俺の体を包んだ。
「そんな濡れた状態で外に出るんじゃない!」
どこからか聞こえてきた声。そしていつの間にか乾いてしまった髪に何が起こったのか理解できなかった。
「…今ドラゴンが乾かしてくれたのか?…ってか…お前…喋れたのか?!」
「なぜ髪を乾かしてこなかった!真冬に濡れた髪で出歩くなど正気ではないぞ!」
「いや…乾かしたかったんだが今魔法が使えないんだ。俺は捕虜だから魔導具を付けられている。行動制限と魔法制限の魔導具があるから魔法を使うことができないんだよ。一度どんなものかと魔法を使ってみたことがあるんだが半日意識を失った。これはなかなかの物だな」
ドラゴンに両腕に付けられた魔導具を見せると噛りつこうとするので咄嗟に腕を引く。
「やめてくれ!俺を殺す気か?!こういった魔導具は無理に外した途端に大爆発ってのがセオリーなんだ。頼むから危ないことしないでくれよ」
いつもの定位置であるドラゴンの腹の間に座るとドラゴンが尾を巻いてくる。ドラゴンの尻尾を抱きしめながら話を続ける。
「それよりお前喋れたんだな?今までなんで話しかけてくれなかったんだ?一人でずっと喋ってて変なやつだっただろ」
「別に話す必要性を感じなかった。お前はここにきて勝手に喋って寝てしまうからな」
直接脳に声が響いてくる。
ドラゴンの口が動いているわけでは無いのでテレパシーみたいなものなのだろう。
「もしかして俺…邪魔だったか?」
「邪魔ではない。お前が暫く来なかった時は寂しかった」
鼻先で俺の髪をスリスリと梳かれてくるドラゴンの方に顔を上げ俺はドラゴンの鼻に頬を擦りつける。
「俺も…寂しかった。お前がいなかった時。寂しかった」
あまりに寂しくて…1人取り残された様に感じてしまうほどに…
あの時は仲良くしていた騎士団のみんなも戦場に行ってしまいドラゴンも長い間帰ってこなかった。夜に一人この巣に座ってた時のことを思い出すと今でも胸が痛む。
「あの時なんで夜にいなかったんだ?俺…毎日来てたんだ。お前のいないここは…巣は寒くて…寂しかった」
擦り付けていたドラゴンの鼻に抱きつくと自分の鼻先をくっつける。目を瞑りドラゴンの体温を全身で感じる。体を包んでくれる尻尾が俺の背中を撫でる。
「私はいつもいるわけではない。初めて会った時も久しぶりにここへ来た時だった。次の日は…お前が来るかもしれないと思いのぞきに来ただけだったが…ジークが毎日会いに来るから私も何とか時間を作ってきていたのだ」
「そうなんだ…俺の為にここにいてくれたのか?ありがとう。あれ?…って言うか俺名前…教えたっけ?」
ドラゴンから俺の名前を呼ばれ、少しドキッとした。
いつの間にか名前を伝えていたのだろうか?
「……。あぁ…名乗ったから知っているのだろう」
「そっか…なぁドラゴンにも名前あるの?」
「…あぁ……アレク…だ」
「アレク?なんだか人間みたいな名前だな?」
「人間がつけた名前だからな…」
擦り付けていた鼻先が離れていく。
顔を地面に下ろすと、俺を抱きしめる尾が寝ろとばかりに定位置に移動する。顔の横に来た尻尾を抱きしめ目を閉じる。
「俺…ずっと悪夢を見てたんだけどアレクと一緒に寝てると悪夢を見ないんだ。だから毎日ここにきて寝てた。アレクってとっても温かいからよく寝られるんだろうな?だからお願い…これからも一緒に寝てくれるか?」
尾の先が頭を撫でる。
肯定された様に感じる。
「ずっと一緒にいてやる。だから安心して眠れば良い」
眠りにつく前に頭に響いた声に安心した。
※※※※※※※※※※
ストックが切れましたので暫く更新をお休みします。
また話が溜まってきたらアップしていきますのでよろしくお願いします。
濡れた髪が冷えないようにフードを目深に被るが急いでいたのでシャワーのみで終わらせた体は少し冷えてしまった。ドラゴンが待っていてくれているのではないかと気持ちがはやる。
「遅くなってごめんよ!」
枝をかき分けた先で待っていてくれていたドラゴンに声をかけ首に抱きつく。いつもなら鼻先で俺の頬を擦ってくれるのに今日はそれも無く、なんだか素っ気ない様に感じる。
「遅くなったのを怒っているのか?実は追加の仕事を受け持ってしまったからこれからは来るのが遅くなってしまうんだ。なるべく早く来られるように頑張るから許してくれ」
頭をドラゴンの首筋に擦り付けて謝ると被っていたフードが落ちた。濡れた髪がドラゴンに触れる。冷たかったのか…ドラゴンの赤い瞳が少し揺れ動いたあと温かい空気が俺の体を包んだ。
「そんな濡れた状態で外に出るんじゃない!」
どこからか聞こえてきた声。そしていつの間にか乾いてしまった髪に何が起こったのか理解できなかった。
「…今ドラゴンが乾かしてくれたのか?…ってか…お前…喋れたのか?!」
「なぜ髪を乾かしてこなかった!真冬に濡れた髪で出歩くなど正気ではないぞ!」
「いや…乾かしたかったんだが今魔法が使えないんだ。俺は捕虜だから魔導具を付けられている。行動制限と魔法制限の魔導具があるから魔法を使うことができないんだよ。一度どんなものかと魔法を使ってみたことがあるんだが半日意識を失った。これはなかなかの物だな」
ドラゴンに両腕に付けられた魔導具を見せると噛りつこうとするので咄嗟に腕を引く。
「やめてくれ!俺を殺す気か?!こういった魔導具は無理に外した途端に大爆発ってのがセオリーなんだ。頼むから危ないことしないでくれよ」
いつもの定位置であるドラゴンの腹の間に座るとドラゴンが尾を巻いてくる。ドラゴンの尻尾を抱きしめながら話を続ける。
「それよりお前喋れたんだな?今までなんで話しかけてくれなかったんだ?一人でずっと喋ってて変なやつだっただろ」
「別に話す必要性を感じなかった。お前はここにきて勝手に喋って寝てしまうからな」
直接脳に声が響いてくる。
ドラゴンの口が動いているわけでは無いのでテレパシーみたいなものなのだろう。
「もしかして俺…邪魔だったか?」
「邪魔ではない。お前が暫く来なかった時は寂しかった」
鼻先で俺の髪をスリスリと梳かれてくるドラゴンの方に顔を上げ俺はドラゴンの鼻に頬を擦りつける。
「俺も…寂しかった。お前がいなかった時。寂しかった」
あまりに寂しくて…1人取り残された様に感じてしまうほどに…
あの時は仲良くしていた騎士団のみんなも戦場に行ってしまいドラゴンも長い間帰ってこなかった。夜に一人この巣に座ってた時のことを思い出すと今でも胸が痛む。
「あの時なんで夜にいなかったんだ?俺…毎日来てたんだ。お前のいないここは…巣は寒くて…寂しかった」
擦り付けていたドラゴンの鼻に抱きつくと自分の鼻先をくっつける。目を瞑りドラゴンの体温を全身で感じる。体を包んでくれる尻尾が俺の背中を撫でる。
「私はいつもいるわけではない。初めて会った時も久しぶりにここへ来た時だった。次の日は…お前が来るかもしれないと思いのぞきに来ただけだったが…ジークが毎日会いに来るから私も何とか時間を作ってきていたのだ」
「そうなんだ…俺の為にここにいてくれたのか?ありがとう。あれ?…って言うか俺名前…教えたっけ?」
ドラゴンから俺の名前を呼ばれ、少しドキッとした。
いつの間にか名前を伝えていたのだろうか?
「……。あぁ…名乗ったから知っているのだろう」
「そっか…なぁドラゴンにも名前あるの?」
「…あぁ……アレク…だ」
「アレク?なんだか人間みたいな名前だな?」
「人間がつけた名前だからな…」
擦り付けていた鼻先が離れていく。
顔を地面に下ろすと、俺を抱きしめる尾が寝ろとばかりに定位置に移動する。顔の横に来た尻尾を抱きしめ目を閉じる。
「俺…ずっと悪夢を見てたんだけどアレクと一緒に寝てると悪夢を見ないんだ。だから毎日ここにきて寝てた。アレクってとっても温かいからよく寝られるんだろうな?だからお願い…これからも一緒に寝てくれるか?」
尾の先が頭を撫でる。
肯定された様に感じる。
「ずっと一緒にいてやる。だから安心して眠れば良い」
眠りにつく前に頭に響いた声に安心した。
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