18 / 21
18
しおりを挟む
アレクに助けられたあと治療を受けた俺はそのままテントで眠ってしまったようで、次に気付いた時には俺の後を追ってきていた敵兵は撤退した後だった。
目を覚ましたと連絡を受けたヴィーザル殿下がテントまで足を運び俺に現状報告をしてくれる。
「さ…流石…陛下ですね」
「はい。崖を挟み睨み合いの膠着状態だった間に敵兵の後ろに兵を配置し、挟み撃ちで…あの早い判断は見事でした」
「後ろに兵をって…短時間には難しいでしょう?」
目の前には崖、崖下は激しい水が流れる川がある。対岸にいる敵兵の後ろに、しかも短時間に兵を配置するなんていくら陛下でも無理だ
「奈落の崖には私たちしか知らない洞窟が多くあります。その洞窟を使い、裏を突いたようです」
「洞窟…ですか…。地元の民が使っている洞窟があるという話は確かに聞いたことが…」
「陛下はジークを助けた後、すぐに動かれていました」
ここで長く住む彼らにしかできない作戦。
よそ者の俺にはできないことだった。
「そうですか…。あ…殿下。先日は私の判断の遅さで御身を危険にさらしてしまいました。申し訳ございません」
「何を言ってるんだ!それを言うなら私の方だ!あなたに殿を任せてしまった。危険な任務をあなた一人に任せた。本当にすまない。そして無事戻ってきてくれてありがとう」
頭を下げる俺にヴィーザル殿下の綺麗な顔が目の前でほころぶ。安心したようなその顔を見て彼にとても心配をかけてしまったのだと気づいた。
「…ご心配をおかけしました。長く前線から離れていたからか、つい気を抜いてしまったようでした。気づいたら敵兵が近くまで来ていて…無様な姿を見せてしまいましたね。師匠として失格です」
「無様だなんて!!とてもかっこよかったです!崖の向こうから駆けてくるあなたを見てどれほど興奮したか!あなたは必ず約束を守ってくれると信じていましたから!」
瞳に涙を溜めて言うヴィーザルの頭を撫でると彼は俺の肩に頭を乗せた。
「ジークおかえりなさい」
「ただいま…です…」
俺の体をぐっと抱きしめてくるヴィーザル殿下を俺も抱きしめ返す。これからも彼の成長を見守りたい。
俺のために…兵士の為、民のために心を砕く彼がいつか賢王と呼ばれる素敵な統治者となる日が楽しみで仕方がない。
お互いが生きていることを確かめ合っていると大きな影によって俺たちは引き剥がされた。
「ヴィー…。お前は何をしている?」
ヴィーザル殿下の首根っこを掴み睨みを利かせていたのはアレクサンドロス陛下だった。
「…師弟の愛を確かめ合っていただけです。陛下にとやかく言われる事はないと思いますが?」
「陛下…すぐに駆けつけてくださりありがとうございます。そして、私の力不足でご迷惑をおかけし申し訳ございません。ヴィーザル殿下を助けていただきありがとうございます!そして敵兵も…」
「…他に言うことは?」
俺の言葉を遮り俺に問いかけてきた陛下は、ヴィーザル殿下を掴んでいた手を離すと手を振り、彼に退室を促した。
「…他に…ですか?」
「お前が殿で残っていると聞いた時の私の気持ちを考えもしなかったのか?」
退避する際は必ず殿が必要になる。
隊の中で殿を務めるなら俺しかいなかった。
判断を間違えたとは思えない。
「…もしかして…俺を心配してくださったのですか?」
「…なぜ…心配しないと思う?」
「一部下である私の事をそれほど気にしてくれていたとは思いもせず…ご心配おかけしました」
頭を下げ言うと陛下の手が俺の頬を包む。
顔をあげ彼を見上げると俺を見つめる瞳と視線がぶつかった。
「ジーク。もう二度と私のそばを離れるな」
「わ…わかりました」
彼の顔が近づき目の前まで来ると、こめかみにキスをされた。
「まぁ、勝手に離れようとしても私が許さん」
そう言って今度は俺の頬にキスをすると陛下はテントを出ていった。
一人残された俺はなぜ陛下にキスされたのか分からず固まった。この国の挨拶…なのだろうか??
母国でも令嬢とのダンスの後に挨拶として手の甲にキスをすることもあったから…こめかみや頬にキスする挨拶があってもおかしくない…?
いや、流石に…
何が起こってるのかよくわからず頭が混乱する。
陛下にキスされた頬に熱が集まるのを感じた。
目を覚ましたと連絡を受けたヴィーザル殿下がテントまで足を運び俺に現状報告をしてくれる。
「さ…流石…陛下ですね」
「はい。崖を挟み睨み合いの膠着状態だった間に敵兵の後ろに兵を配置し、挟み撃ちで…あの早い判断は見事でした」
「後ろに兵をって…短時間には難しいでしょう?」
目の前には崖、崖下は激しい水が流れる川がある。対岸にいる敵兵の後ろに、しかも短時間に兵を配置するなんていくら陛下でも無理だ
「奈落の崖には私たちしか知らない洞窟が多くあります。その洞窟を使い、裏を突いたようです」
「洞窟…ですか…。地元の民が使っている洞窟があるという話は確かに聞いたことが…」
「陛下はジークを助けた後、すぐに動かれていました」
ここで長く住む彼らにしかできない作戦。
よそ者の俺にはできないことだった。
「そうですか…。あ…殿下。先日は私の判断の遅さで御身を危険にさらしてしまいました。申し訳ございません」
「何を言ってるんだ!それを言うなら私の方だ!あなたに殿を任せてしまった。危険な任務をあなた一人に任せた。本当にすまない。そして無事戻ってきてくれてありがとう」
頭を下げる俺にヴィーザル殿下の綺麗な顔が目の前でほころぶ。安心したようなその顔を見て彼にとても心配をかけてしまったのだと気づいた。
「…ご心配をおかけしました。長く前線から離れていたからか、つい気を抜いてしまったようでした。気づいたら敵兵が近くまで来ていて…無様な姿を見せてしまいましたね。師匠として失格です」
「無様だなんて!!とてもかっこよかったです!崖の向こうから駆けてくるあなたを見てどれほど興奮したか!あなたは必ず約束を守ってくれると信じていましたから!」
瞳に涙を溜めて言うヴィーザルの頭を撫でると彼は俺の肩に頭を乗せた。
「ジークおかえりなさい」
「ただいま…です…」
俺の体をぐっと抱きしめてくるヴィーザル殿下を俺も抱きしめ返す。これからも彼の成長を見守りたい。
俺のために…兵士の為、民のために心を砕く彼がいつか賢王と呼ばれる素敵な統治者となる日が楽しみで仕方がない。
お互いが生きていることを確かめ合っていると大きな影によって俺たちは引き剥がされた。
「ヴィー…。お前は何をしている?」
ヴィーザル殿下の首根っこを掴み睨みを利かせていたのはアレクサンドロス陛下だった。
「…師弟の愛を確かめ合っていただけです。陛下にとやかく言われる事はないと思いますが?」
「陛下…すぐに駆けつけてくださりありがとうございます。そして、私の力不足でご迷惑をおかけし申し訳ございません。ヴィーザル殿下を助けていただきありがとうございます!そして敵兵も…」
「…他に言うことは?」
俺の言葉を遮り俺に問いかけてきた陛下は、ヴィーザル殿下を掴んでいた手を離すと手を振り、彼に退室を促した。
「…他に…ですか?」
「お前が殿で残っていると聞いた時の私の気持ちを考えもしなかったのか?」
退避する際は必ず殿が必要になる。
隊の中で殿を務めるなら俺しかいなかった。
判断を間違えたとは思えない。
「…もしかして…俺を心配してくださったのですか?」
「…なぜ…心配しないと思う?」
「一部下である私の事をそれほど気にしてくれていたとは思いもせず…ご心配おかけしました」
頭を下げ言うと陛下の手が俺の頬を包む。
顔をあげ彼を見上げると俺を見つめる瞳と視線がぶつかった。
「ジーク。もう二度と私のそばを離れるな」
「わ…わかりました」
彼の顔が近づき目の前まで来ると、こめかみにキスをされた。
「まぁ、勝手に離れようとしても私が許さん」
そう言って今度は俺の頬にキスをすると陛下はテントを出ていった。
一人残された俺はなぜ陛下にキスされたのか分からず固まった。この国の挨拶…なのだろうか??
母国でも令嬢とのダンスの後に挨拶として手の甲にキスをすることもあったから…こめかみや頬にキスする挨拶があってもおかしくない…?
いや、流石に…
何が起こってるのかよくわからず頭が混乱する。
陛下にキスされた頬に熱が集まるのを感じた。
20
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!
白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。
現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、
ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。
クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。
正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。
そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。
どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??
BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です)
《完結しました》
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
天上の果実
曙なつき
BL
大きな果実の実が頭に当たったことにより、記憶を失った婚約者のルシス。
目を覚ました彼に、私はこう言った。
「愛しい人。あなたと私は愛し合っていました。来年には式を挙げる予定なのですよ」
それは少しの真実と多くの嘘を織り交ぜた言葉だった。
ルシスは私を嫌い、厭うていた。
記憶を無くした少年と、彼を囲いこむ王子の物語です。
※なお、ルシスの兄と弟の物語も併せて掲載します。完結まで予約済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる