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ヴィーザル殿下の予想は当たりだった。
地図を挟み話し合っていた際、彼が気づいた異変。
「この街はそんなに大きな拠点が用意できるのですか?」
「各国の富豪たちの別荘なども立ち並ぶエリアです、この街を中継地点に別の国へ貿易しているとも聞きます。それぞれの所有する敷地としても大きいので騎士や傭兵が滞在していても気にならないかと…」
この街から湧き出る敵に挟み撃ちされるのなら悠長に構えてはいられなくなった。
「ありえなくないですね…。一度態勢を立て直しましょう。一部の兵を南に配置し街の動向を観察します。変化があればすぐ動けるようにしていったほうがいいでしょう」
諜報隊員が確認に向かうと怪しい動きが見られると報告もあった。そして、態勢を立て直す準備を開始する。
皆を見送り、相手が攻め込むタイミングを待つ。
天幕を張ったままにした基地に敵が攻め込んで来たのを確認し罠を放っていく。奇襲をかけた相手が慌てる様子が見える。
準備したからくりを駆使し崖の上から岩を落とすと大勢の兵が残っている様な動きを演出する。
最初の反撃が功を奏したのか少しずつ攻め込まれながらも相手も予定していた動きが反撃を食らい、上手くできなかったのだろう。警戒している様子で動きは鈍い。
「あと2日はもたせたいな…」
3日目の夜を迎えようとする頃、疲れがピークに達し、木の上で相手の動向を確認しつつ少し休憩を取る。
「ヴィーザル殿下は陛下の軍と合流できただろうか?」
予定では早馬を走らせた兵に陛下の隊の所へ向かわせた。動けるようならと、こちらの現状を伝え合流できるようにしてある。何とかヴィーザル殿下が立て直し動けるように援助していただきたい。
「俺だけでは力不足だったのか…。上手く出来る自信はあったんだが…まだまだ…だな…」
木の幹に頭を預け空を見上げる。今のところ相手の動く様子は見られなかった。
顔に当たる日差しで意識を取り戻す。
いつの間にか眠ってしまったようで気がつくと朝日が昇っていた。
「しまった…。何時間経ったんだ?!相手の軍はどのあたりまで来てるのか確認しないと…」
木の上から周りを確認しようと動いた時、近い距離に人の声が聞こえた。夜の間にだいぶ距離を詰められてしまったようだ。
殿下との合流地点までは少し距離があるが急げば合流出来る。しかし、今から向かって準備が終わっているだろうか?
もう少し時間を稼いだほうがいいのか…
判断に迷ってしまった。
悩みながらの移動中に偵察の敵とかち合い応戦した。それほど多い数ではなかったこともあり、すぐに敵を倒し相手の馬を拝借すると合流地点に向かった。俺が逃げる後を敵が追ってきた。
応戦するか?
いや、これ以上は流石にこちらの分が悪い…。
このまま走れば合流地点に間に合うはず…。
必死に馬を走らせるが後ろからは矢が降ってきた。
「くそっ!距離がまた縮められてる!!」
降ってくる矢を躱し目的地を目指すと、合流地点が目の前に広がった。
だが、味方がいたのは崖の反対側だった。
逃げてる途中で道を間違えたのか…。
彼らは谷の向こう側にいる。
飛び越えるには遠すぎる距離。
後ろからは敵の音が迫る。
弓を引く音が俺の耳に届いた。
迷っている時間はなかった。
「よし!行ける!俺ならできる!!!!!!」
駆ける馬から降り、崖の上から勢いよく飛び降りると自分で風魔法を展開する。
今回は大丈夫だ!俺一人だけしかいない。奈落の崖ではない。下に流れる水音を確認した。ゆっくり落ちるように調整すれば残りは崖下の川の水が受け止めてくれるはずだ。
目を閉じ魔法で自分の体を浮かせると自分の魔法とは違う風が俺を包む。
目を開けると目の前には龍がいた。
「…ア!アレク?!」
落ちていく俺を拾い上げ背に乗せるとそのまま空に飛び上がる。なぜここにアレクがいるのか?頭の中が混乱する。ここはライスドリューの王都からだいぶ離れている。飛び降りた時に味方の陣にアレクは見えなかった。
周りにはいなかったはず…。
「ジーク話は後だ。まずその傷を治してこい」
味方の陣に下ろされアレクにそう言われてはじめて自分の傷に気付く。矢がかすった傷は全身にあり、肩には矢が刺さったままになっている。
谷を挟み睨み合った両者が動く様子はない。
すぐにここで争いは起こらないだろう。
「アレク助けてくれてありがとう。」
地図を挟み話し合っていた際、彼が気づいた異変。
「この街はそんなに大きな拠点が用意できるのですか?」
「各国の富豪たちの別荘なども立ち並ぶエリアです、この街を中継地点に別の国へ貿易しているとも聞きます。それぞれの所有する敷地としても大きいので騎士や傭兵が滞在していても気にならないかと…」
この街から湧き出る敵に挟み撃ちされるのなら悠長に構えてはいられなくなった。
「ありえなくないですね…。一度態勢を立て直しましょう。一部の兵を南に配置し街の動向を観察します。変化があればすぐ動けるようにしていったほうがいいでしょう」
諜報隊員が確認に向かうと怪しい動きが見られると報告もあった。そして、態勢を立て直す準備を開始する。
皆を見送り、相手が攻め込むタイミングを待つ。
天幕を張ったままにした基地に敵が攻め込んで来たのを確認し罠を放っていく。奇襲をかけた相手が慌てる様子が見える。
準備したからくりを駆使し崖の上から岩を落とすと大勢の兵が残っている様な動きを演出する。
最初の反撃が功を奏したのか少しずつ攻め込まれながらも相手も予定していた動きが反撃を食らい、上手くできなかったのだろう。警戒している様子で動きは鈍い。
「あと2日はもたせたいな…」
3日目の夜を迎えようとする頃、疲れがピークに達し、木の上で相手の動向を確認しつつ少し休憩を取る。
「ヴィーザル殿下は陛下の軍と合流できただろうか?」
予定では早馬を走らせた兵に陛下の隊の所へ向かわせた。動けるようならと、こちらの現状を伝え合流できるようにしてある。何とかヴィーザル殿下が立て直し動けるように援助していただきたい。
「俺だけでは力不足だったのか…。上手く出来る自信はあったんだが…まだまだ…だな…」
木の幹に頭を預け空を見上げる。今のところ相手の動く様子は見られなかった。
顔に当たる日差しで意識を取り戻す。
いつの間にか眠ってしまったようで気がつくと朝日が昇っていた。
「しまった…。何時間経ったんだ?!相手の軍はどのあたりまで来てるのか確認しないと…」
木の上から周りを確認しようと動いた時、近い距離に人の声が聞こえた。夜の間にだいぶ距離を詰められてしまったようだ。
殿下との合流地点までは少し距離があるが急げば合流出来る。しかし、今から向かって準備が終わっているだろうか?
もう少し時間を稼いだほうがいいのか…
判断に迷ってしまった。
悩みながらの移動中に偵察の敵とかち合い応戦した。それほど多い数ではなかったこともあり、すぐに敵を倒し相手の馬を拝借すると合流地点に向かった。俺が逃げる後を敵が追ってきた。
応戦するか?
いや、これ以上は流石にこちらの分が悪い…。
このまま走れば合流地点に間に合うはず…。
必死に馬を走らせるが後ろからは矢が降ってきた。
「くそっ!距離がまた縮められてる!!」
降ってくる矢を躱し目的地を目指すと、合流地点が目の前に広がった。
だが、味方がいたのは崖の反対側だった。
逃げてる途中で道を間違えたのか…。
彼らは谷の向こう側にいる。
飛び越えるには遠すぎる距離。
後ろからは敵の音が迫る。
弓を引く音が俺の耳に届いた。
迷っている時間はなかった。
「よし!行ける!俺ならできる!!!!!!」
駆ける馬から降り、崖の上から勢いよく飛び降りると自分で風魔法を展開する。
今回は大丈夫だ!俺一人だけしかいない。奈落の崖ではない。下に流れる水音を確認した。ゆっくり落ちるように調整すれば残りは崖下の川の水が受け止めてくれるはずだ。
目を閉じ魔法で自分の体を浮かせると自分の魔法とは違う風が俺を包む。
目を開けると目の前には龍がいた。
「…ア!アレク?!」
落ちていく俺を拾い上げ背に乗せるとそのまま空に飛び上がる。なぜここにアレクがいるのか?頭の中が混乱する。ここはライスドリューの王都からだいぶ離れている。飛び降りた時に味方の陣にアレクは見えなかった。
周りにはいなかったはず…。
「ジーク話は後だ。まずその傷を治してこい」
味方の陣に下ろされアレクにそう言われてはじめて自分の傷に気付く。矢がかすった傷は全身にあり、肩には矢が刺さったままになっている。
谷を挟み睨み合った両者が動く様子はない。
すぐにここで争いは起こらないだろう。
「アレク助けてくれてありがとう。」
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