英雄様は愛されたい

結人

文字の大きさ
19 / 21

19

しおりを挟む
今回攻め入ってきた二国との戦争は停戦という形で幕を閉じた。


元々貿易で交流のあった国なので関税などで再調整していくとのこと。交渉を宰相ミネルヴァが主体で進めていく。

「前線の私たちもやっと帰ることができますね」

「大きな被害が出なくて本当に良かった」

ヴィーザル殿下の初陣として華々しいものではなかったが、彼がこれから成長できるものになったのではと思える。

「あ!ジークは陛下といつ一緒になるのですか?」

ヴィーザル殿下と片付けられていく野営地を見ていると、思い出したように聞かれた。

「…一緒に?…ですか?護衛はこのあとすぐに復帰して同行しようと思ってます。あ!ヴィーザル殿下の護衛は他の者に伝えてありますのでご心配には及びません」

「いや…違うよ!そんな話じゃなくて!いつ城に入るのかなって思って。母はいつでも構わないと話してますし。あとはジーク次第なんでしょう?」

「…城に入る…ですか?帰還はここからですと2日ほどかかるかと…陛下の安全を確保しながらですので余裕を持った行程で行く予定です」

目の前の殿下が渋い顔をしている。
何か…殿下との会話が噛み合ってない気がする。

「ジーク?…ワザとはぐらかしてる?」

「すみません。ヴィーザル殿下が話されている意味がよく分かっていないようです。何の話をされているのですか?」

「何って…ジークは父上の伴侶になるんだろ?」

「…は?…ハンリョって?…っ…伴侶?!何のことですか?!」

なぜそんな話になっているのだ?
護衛騎士として陛下のもとに戻るって話ではなく??

「あれ?まだその話はジークに伝わってないのか?」

「いや、話も何も陛下と俺はそんな関係ではありませんよ!!なぜそんな話になっているんですか?!」

伴侶とは恋人や婚約者がなるものだろ??
陛下は若い頃に皇后陛下と結婚されているしヴィーザル殿下という後継者もおられる。

「いや…父上はこれからもずっと一緒にいると言っていたと話していましたよ?」

「ん??…護衛騎士としてですよね?確かにそんな話はありました。側にいると言った気がします」

「え?!いや!そうだ!…夜…夜も一緒に過ごしてるんですよね?」

「よる!?夜は陛下の護衛はしてませんよ?!退勤後ヴィーザル殿下の授業もしてるじゃないですか!?」

夜はいつもアレクの巣に行っている俺が陛下と一緒に過ごせるわけがない。なぜ、そんな話が出てくるのか不思議で仕方がない。
怪訝そうな顔をこちらに向けてくるヴィーザル殿下。納得はしていない様子だったがこれ以上この件について話してこなかった。

「…何か…お二人がすれ違っている気がしますね。とにかくまだまだのようだと母に報告しておきます」

よくわからないが話が終わったようなのでずっと気になっていたことを聞いてみる。

「そういえば、アレクはまだここに残っているのですか? 私を助けてくれた後は見かけていないので巣に戻ったのかと思っていたのですが?」

「僕がジークの所に来る前に陛下の天幕の方でミネルヴァ宰相と話しているのを見かけましたけど?」

「やっぱり陛下も宰相もアレクの事をご存知なのですね。まぁ、あんな大きな竜をこの国の陛下や宰相が知らないはずないか。忙しいならまた城に戻った後にお礼するとするよ」

やっと平和な日常が戻りそうだ。
城に戻り事後処理が終わるとすぐに俺はアレクの巣に向かった。





「アレク!!」


巣についてすぐ声をかけたがその場所はまだ誰も居なかった。

「まだ、アレク戻ってきてないのか…アイツも忙しいんだな…」

アレクがいつも座っている場所に寝転がり空を眺めていると月にかかる影が近づいてくる。何か?なんて悩むことはない。空から降りてきた彼の首に俺は飛びつく。

「もう来てたのか?」

「あぁ!アレクにお礼が言いたかったんだ!あの時、俺を助けてくれてありがとう!!」

俺の頬に鼻先を擦り付けてくるアレクの顔を抱きしめて俺からも鼻にキスをする。

「目の前で崖から飛び降りるお前を見て助けないわけないだろう?」

「そうだ!対岸にアレクもいたんだな?逃げるのに必死だったからかな?この大きな体を見つけられてなかったんだよ」

「もう、二度とあんなことはしないでくれ。私の心臓がいくつあっても足りない」

「いや、下に川があるのも確認してたし、風魔法で落ちるスピードも調整してたから大丈夫だと判断して飛び降りたんだよ?」

尾が立ったままの俺の身体に巻き付き、優しく抱きしめる。いつもアレクに触れているだけで幸せな気分で満たされる。…いや、アレクがいるだけで本当に幸せだ。

「お前は俺の伴侶だ。勝手に死ぬのは許さん。危険なことはするな」

そう言うとアレクはオレの体を尾で巻き付け持ち上げる。大きな赤い瞳が目の前でギラリと光りオレの姿を映した。

「え?…俺ってアレクの伴侶なの??」

「ずっと一緒にいると約束したではないか?」

「そう…だったかな?」

最近、伴侶という言葉をよく聞くな…
共に連れ立つ者…か。

「そうだな…アレクとならずっと一緒にいたいな。アレクの体温を感じながら寝ないと俺はもう熟睡できないんだよ」

アレクに抱きつき体に耳を当てるとゆっくり響く心臓の音が聞こえた。

「竜の心臓の音ってゆっくりなんだな」

「竜は長生きだからな。大きな生き物ほど心拍はゆっくりで長生きだと言われている。そしてその竜の伴侶はその心臓が分け与えられる」

「心臓を分けるの?!」

凄くグロテスクな映像が頭の中で流れてくる。
俺がものすごく嫌な顔をしていたのだろう。アレクが面白そうに笑う。

「いや、本当に切り分けるわけではない。契約をするんだ。ただ1人、一度だけ出来る契約だ」

「それは今ここでも出来るのか?」

「…出来るが。ここでは私がしたくないな」

「なんだよそれ!!気になるなぁ」

何か特別な事をするんだろうな。
外…では出来ない事とか??

「じゃあ、いつかアレクが契約したいって時には俺に声をかけてくれよ。俺もアレクとずっと一緒にいたいって気持ちに嘘はないからさ!!」


温かいアレクの体温に包まれ、ゆっくり刻むアレクの心臓の音を聞きながら俺はいつもの様にアレクの横で眠る。




※※※※※※※※

やっとBLの気配がきた…?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」 仕事終わりの静かな執務室。 差し入れの食事と、ポーションの瓶。 信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、 ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。

【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!

白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。 現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、 ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。 クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。 正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。 そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。 どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??  BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です) 《完結しました》

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

天上の果実

曙なつき
BL
 大きな果実の実が頭に当たったことにより、記憶を失った婚約者のルシス。  目を覚ました彼に、私はこう言った。 「愛しい人。あなたと私は愛し合っていました。来年には式を挙げる予定なのですよ」  それは少しの真実と多くの嘘を織り交ぜた言葉だった。  ルシスは私を嫌い、厭うていた。  記憶を無くした少年と、彼を囲いこむ王子の物語です。  ※なお、ルシスの兄と弟の物語も併せて掲載します。完結まで予約済みです。

処理中です...