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8人集結秘話
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なんら変哲のないP◯MAの筆箱が宙を舞う時、こたつの中の戦争の火蓋が切って落とされる。
夏の暑さも残る日の休み時間、衣替え期間の終了によって長袖着用を強いられ愚痴をこぼす少年らがいる。
「暑い…暑すぎる!敦よ、お前の名前にあつがあるせいだ!果てろ!」
理不尽極まりない持論をかましているこの人こそ、後のトラブルーカーとなる早坂絢士である。
「俺のせい!?おかしくない!?」
長瀬敦はその理不尽な主張に声を大にして反論した。
「いやー、これは間違いなく敦のせいだね。何かお詫びしないとじゃん?」
絢士の悪ふざけに便乗する松本飛駆。この光景は中学2年から1年間変わらず続いていた。そう、続いていたのだ…次の絢士の行動までは…。
「じゃあお詫びとしてこのP◯MAの筆箱には快適なお空の旅をしてもらいましょう。」
絢士はそう言うと敦の筆箱を取り上げ飛駆に投げ渡した。
「おい!返せ!」
敦の抵抗もむなしく、筆箱は絢士と飛駆の間を何往復とすることとなった。
しかし、ただでやられている敦ではない。この1年で培ったいじられスキルを発揮し、とうとう筆箱を持つ絢士の腕を捉えることに成功した。
「さあ観念したまえ!その筆箱をおとなしく返してもらおうか!」
「くそっ!斯くなる上は、この想いよ…届け!」
そう言って無造作に投げられた筆箱は近くにいた女子の元へと落ちていった。
「それ俺の筆箱なんだ、へいパス!」
筆箱が女子の手に渡ったことで安心した敦は、絢士への拘束を解き女子の元へと近づいた。それがさらなる災厄をもたらすとも知らずに。
「「「へ?」」」
絢士ら3人が素っ頓狂な声をあげた。突然女子が絢士の元へと筆箱を投げたのだ、満面の笑みを浮かべて。
それからその筆箱が何回空の旅をしたかは言うまでもない。
これが僕ら3人と秋月美希との出会い。そして、こたつの中の足元戦争の序章である。
時は過ぎ12月の始め、すっかり3人と意気投合した美希とその友達の東宮奈美子、そして絢士らと元々仲の良かった隣のクラスの星村譲二の6人は昼休みに教室でとある話をするために集まっていた。
「さて、もう12月です。12月と言えば?」
そう声高く問いかけた絢士はどことなくテンションが高い。
「大晦日、ガキ使だね!今年はなんだろ?」
「そこ、静かにねー。」
話を全く拾えてもらえず撃沈する奈美子。
「あ!絢士の誕生日じゃん!」
「そう!俺の誕生日!みんな祝ってね~って違うわ!俺そんなに傲慢じゃないわ!」
会心の一撃かと思った飛駆の発言は不発に終わった。
「あー天皇誕生日だね。」
「斜め上の発想!」
素で言っているのか狙って言っているのかわからない譲二。
「クリスマスイヴだね!」
「なに?これ正解出しちゃいけないの?」
確実に狙ってる美希。
終わりのないこの状況に、仕方ないとばかりにため息を混ぜながら敦が言った。
「クリスマスだろ?クリパやろうって話かい?」
「そうそう、そうなのよ!敦はわかってるな~、さすが俺の恋人!」
「誰が彼女じゃ!」
「え?彼女は俺だよ?」
「そういう問題じゃねえ!」
当初の目的も忘れくだらないやりとりで盛り上がってる中、譲二が冷静に言った。
「で、クリパの話だけどどうするの?」
「んー、話し出した俺が言うのもなんだけど全く考えておりません!」
「そう言うと思ったよ。やるなら俺の家とかどう?広いし10人弱なら全然入るよ。」
敦の家は昔ながらの平屋であり、和室の広さはかなりのものであった。
「そうだな、じゃあそうしよう!敦は親に大丈夫か聞いといてね。」
「りーかい。」
クリパの計画が着々と進む中、奈美子がとある提案をした。
「10人弱まで大丈夫ならあと2人友達誘ってもいい?」
「友達がよければいいんじゃない?俺らは問題ないよな?」
全員問題ないと首を縦に振った。
「なら声かけてみるね。」
そうして時は流れクリスマス当日、6人と奈美子の友達、ニ山美穂と島川詩乃が敦宅に集まり無事クリパを迎えることができた。
いつも通りバカ話をしながらクリパを楽しんでいたのだが、終盤に差し掛かったところで事件が起こった。
「いたっ!おい誰だ!今俺の足を蹴ったやつ!」
いくら室内といえど寒い冬の夜。敦宅ではこたつが用意されていたのだが、8人が入るには少しばかり窮屈なものだった。なので足が当たってしまうのは仕方のないことではある。しかしそんなことなど御構い無しなのがかの有名なトラブルーカー絢士、1番近くにあった足を仕返しとばかりに蹴り返した、不運にも美希の足とは知らずに。
「いった!ふんっ!」
まだ数ヶ月の付き合いだが美希が負けず嫌いなのは他の5人、ましてや奈美子の友達ですら知っていることである。そんな負けず嫌いの足を蹴ってしまったが最後、美希は誰彼構わず足を蹴り続けた。
そこからはもうこたつの中は混沌としていた。皆がどれが誰の足かもわからないまま蹴り続け、卓上では平静を保ちつつも足元で戦争かのごとく争いが繰り広げられるという異様な光景がそこにはあった。敦の親がケーキを運びにくるまで…。
こうして今の8人が集結し、この争いは後にこたつの中の足元戦争と名付けられることとなった。
夏の暑さも残る日の休み時間、衣替え期間の終了によって長袖着用を強いられ愚痴をこぼす少年らがいる。
「暑い…暑すぎる!敦よ、お前の名前にあつがあるせいだ!果てろ!」
理不尽極まりない持論をかましているこの人こそ、後のトラブルーカーとなる早坂絢士である。
「俺のせい!?おかしくない!?」
長瀬敦はその理不尽な主張に声を大にして反論した。
「いやー、これは間違いなく敦のせいだね。何かお詫びしないとじゃん?」
絢士の悪ふざけに便乗する松本飛駆。この光景は中学2年から1年間変わらず続いていた。そう、続いていたのだ…次の絢士の行動までは…。
「じゃあお詫びとしてこのP◯MAの筆箱には快適なお空の旅をしてもらいましょう。」
絢士はそう言うと敦の筆箱を取り上げ飛駆に投げ渡した。
「おい!返せ!」
敦の抵抗もむなしく、筆箱は絢士と飛駆の間を何往復とすることとなった。
しかし、ただでやられている敦ではない。この1年で培ったいじられスキルを発揮し、とうとう筆箱を持つ絢士の腕を捉えることに成功した。
「さあ観念したまえ!その筆箱をおとなしく返してもらおうか!」
「くそっ!斯くなる上は、この想いよ…届け!」
そう言って無造作に投げられた筆箱は近くにいた女子の元へと落ちていった。
「それ俺の筆箱なんだ、へいパス!」
筆箱が女子の手に渡ったことで安心した敦は、絢士への拘束を解き女子の元へと近づいた。それがさらなる災厄をもたらすとも知らずに。
「「「へ?」」」
絢士ら3人が素っ頓狂な声をあげた。突然女子が絢士の元へと筆箱を投げたのだ、満面の笑みを浮かべて。
それからその筆箱が何回空の旅をしたかは言うまでもない。
これが僕ら3人と秋月美希との出会い。そして、こたつの中の足元戦争の序章である。
時は過ぎ12月の始め、すっかり3人と意気投合した美希とその友達の東宮奈美子、そして絢士らと元々仲の良かった隣のクラスの星村譲二の6人は昼休みに教室でとある話をするために集まっていた。
「さて、もう12月です。12月と言えば?」
そう声高く問いかけた絢士はどことなくテンションが高い。
「大晦日、ガキ使だね!今年はなんだろ?」
「そこ、静かにねー。」
話を全く拾えてもらえず撃沈する奈美子。
「あ!絢士の誕生日じゃん!」
「そう!俺の誕生日!みんな祝ってね~って違うわ!俺そんなに傲慢じゃないわ!」
会心の一撃かと思った飛駆の発言は不発に終わった。
「あー天皇誕生日だね。」
「斜め上の発想!」
素で言っているのか狙って言っているのかわからない譲二。
「クリスマスイヴだね!」
「なに?これ正解出しちゃいけないの?」
確実に狙ってる美希。
終わりのないこの状況に、仕方ないとばかりにため息を混ぜながら敦が言った。
「クリスマスだろ?クリパやろうって話かい?」
「そうそう、そうなのよ!敦はわかってるな~、さすが俺の恋人!」
「誰が彼女じゃ!」
「え?彼女は俺だよ?」
「そういう問題じゃねえ!」
当初の目的も忘れくだらないやりとりで盛り上がってる中、譲二が冷静に言った。
「で、クリパの話だけどどうするの?」
「んー、話し出した俺が言うのもなんだけど全く考えておりません!」
「そう言うと思ったよ。やるなら俺の家とかどう?広いし10人弱なら全然入るよ。」
敦の家は昔ながらの平屋であり、和室の広さはかなりのものであった。
「そうだな、じゃあそうしよう!敦は親に大丈夫か聞いといてね。」
「りーかい。」
クリパの計画が着々と進む中、奈美子がとある提案をした。
「10人弱まで大丈夫ならあと2人友達誘ってもいい?」
「友達がよければいいんじゃない?俺らは問題ないよな?」
全員問題ないと首を縦に振った。
「なら声かけてみるね。」
そうして時は流れクリスマス当日、6人と奈美子の友達、ニ山美穂と島川詩乃が敦宅に集まり無事クリパを迎えることができた。
いつも通りバカ話をしながらクリパを楽しんでいたのだが、終盤に差し掛かったところで事件が起こった。
「いたっ!おい誰だ!今俺の足を蹴ったやつ!」
いくら室内といえど寒い冬の夜。敦宅ではこたつが用意されていたのだが、8人が入るには少しばかり窮屈なものだった。なので足が当たってしまうのは仕方のないことではある。しかしそんなことなど御構い無しなのがかの有名なトラブルーカー絢士、1番近くにあった足を仕返しとばかりに蹴り返した、不運にも美希の足とは知らずに。
「いった!ふんっ!」
まだ数ヶ月の付き合いだが美希が負けず嫌いなのは他の5人、ましてや奈美子の友達ですら知っていることである。そんな負けず嫌いの足を蹴ってしまったが最後、美希は誰彼構わず足を蹴り続けた。
そこからはもうこたつの中は混沌としていた。皆がどれが誰の足かもわからないまま蹴り続け、卓上では平静を保ちつつも足元で戦争かのごとく争いが繰り広げられるという異様な光景がそこにはあった。敦の親がケーキを運びにくるまで…。
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