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第一章 紡がれる日常

第19話

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 危機感が足りなすぎる。そう言って僕の頬っぺを潰し、説教をするレイアさん。
 ポンチョのお陰でダメージは通らないけど、そろそろ頬っぺたの形が変わりそうです。

「なぁ知っているかイツキ、お前が騎士様、騎士様って呼んでるあのアホな、私らのトップなんだよ」
「ふぁい」
「お前はその伴侶、もうちょっと危機感持とう」

 トップの伴侶の両頬を潰しながら説教するのはいいのだろうか、ああ騎士様にも容赦ない人だった。

「お前の危機は世界の危機と思っとけ、な」
「ふぇ」
「ママーー!!」
「もがっ」

 そこへ乱入してきたのはアー君だった。
 どーーんと横から僕の腰にコアラのように全身でしがみついている。
 可愛い!
 アー君が可愛い!
 しかも幼児バージョン!!

「いきなり消えたと思ったらダンジョンの中心に気配を感じるし、びっくりした!」
「もがもが」

 アー君を慰めたいので、手を放してください戦女神様。
 あとパニックのあまり幼児に逆行しているアー君を撫でまわしたいです!

「アルジュナ、こいつはな、トラブルのど真ん中でダンジョンコアを変質させ、その腹の上で暢気に昼寝してたぞ」
「……」

 うわぁ、アー君の目線が痛い。

「このダンジョンを作ったのも、イツキを召喚したのも、月のあいつらの仕業だった」
「絶滅したはずじゃ? 残党?」

 冷静さを取り戻したアー君は僕の体から離れ、するんと現在の少年姿に戻ってしまった。
 無念です。ちゅっちゅしたかった。

「高難易度のダンジョンを作り、私達をおびき寄せ、ダンジョンごと葬ろうとしたんだろうな、まぁ一部だけ成功してたから計画が破綻しているのにも気付かなかったんだろうけど」
「秋の味覚に染まっている時点で女神の欲望に乗っ取られてるもんなぁ」

 神の墓場として用意したはずが、秋の味覚に対する女神様の執念に負けたのか……そして呪いを発動させるために命を捧げようとして、ダンジョンボスにプチっとされたと。
 僕、その上で寝てたのかぁ。
 そりゃ怒られますよね。

 しかもあのお姉さんたち、数年前に海に悪意を入れてペンギン関係でシャムスらにトラウマを植付けたり、スタンピードを世界規模で起こしたりした人達の仲間だった。
 どちらも失敗した上に粛清されたはずだよね、でもまた現れたと。
 執念深い種族なのだろうか。

「一生懸命考えて作った罠は乗っ取られ、呼び出せたと思った絶望はママの色に染められ、最後はプチっ、あいつらって馬鹿なのか?」
「まぁ学習能力はないな、自分達が絶対だと思ってるから」
「どこから来るんだ、その自信」
「一回頂点に立ったからその夢を今も見続けてるんだろ」

 会話を続けるアー君とレイアさんだけど、手はせっせと柿や葡萄を始めとした果実を採取している。
 その向こうでは熊と協力して高所に実る果物を採っている皇帝、いつの間に仲良くなったんだろうか。

「ねぇアー君、混沌の闇ってなに?」
「混沌と書いてカオスと読む。ママのことじゃないかなぁ」
「僕!?」
「混沌と秩序を司る何かにレベルアップしてるじゃないか? 謎能力なら何でもありだし」

 知らないうちにカオスを司っていたらしい、そんなのありなのだろうか。
 あ、でも僕じゃなく謎能力が司っているならありえ……いや待って、謎能力はあくまでスキルっぽい何かだし、それもそれでありえないような気がする。

 ん?
 秩序も司ってるの?
 もしやそれって空気清浄機能のこと?
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