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第二章 聖杯にまつわるお話

第115話

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 無事、夕方前に女神様の離宮に到着することが出来ました。
 今日の夕食はピザパーティー!

 女神様に一言文句を言おうとしたら、そっとにんにくとトマトの苗を渡された。
 作れと、育ててチーズなしピザを作って食わせろということですね、ワインを返すどころか更なる要求を押し付けて来たよこの女神!!

 それにトマトなら裏庭菜園のものがあるんだよなぁ、これはアー君にあげよう、日本の品種だから転移に伴って謎のチートを秘めているかもしれない。

「涼、こいつら今日仲間になったドラゴンとバックダンサーのゴブリン」
「……負けない! 俺にはマンドラゴラがいる!」
「勝負相手じゃないから、涼のダンス仲間にどうかって思って勧誘しただけだから」
「仲間?」
「ギャオ」

 首を傾げた涼玉にドラゴンたちが力強く頷き返す。
 二人の横ではゴブリンとマンドラゴラがメンチを切っているのだけど、本当に仲良くやれるのだろうか、ジャンル違いで喧嘩とかやめてね?
 でもライバルがいた方が上達する?
 う、うーん。

「引っ越し先はゴブリン農園を勧めようと思ってる、あそこなら涼もたまに遊びに行くし、他のドラゴンやゴブリンもいるしな」
「おう!」
「ママのおかげで異種族でも軋轢なく暮らせるのは素敵ですよねー」
『スケルトンもそっち?』
「そうだな、食堂作ってくれという要望が多いから、食堂作ってそこで働いてもらう予定」

 モヒカン君の出身地であるあの村はイネスがぺかーっとして浄化したのち、謎能力の影響を受けた魔物が住むことになった。
 僕がシャムスとイネスのお腹に顔を埋め、ふわふわしていた事によって起こった喜劇ですかね。いつものことですよ、日常茶飯事の範囲内です。

 僕自身は謎能力をコントロール出来ないけれど、子供たちはある程度法則を理解しているらしい、たまに都合よく使われている。
 シャムスとイネスのお誘いも謎能力の力を発動させるためのものだったしね、いい思いをしたので文句は特にない、またのお誘いをお待ちしております。

 ピザを食べた後は子供たちにお風呂に誘われたので、皆で入りました。
 アー君が見当たらないけど別エリアに行ったのかな?



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 アルジュナは風呂には向かわず父と刀雲、皇帝に今日の出来事を報告するため応接室にいた。
 壁際に控えるのは皇帝の腹心である懐かしのメンバー、万が一にも情報漏洩はしないだろう。そう判断して聖女と遭遇したこと、聖女の言い分、その後に起こったことを一通り説明した。

「ふむ、何も知らなければ十分に通じる話ではあるな」
「そうだねぇ、けれど一番大事な事を知らないから話が嘘だとすぐ分かるね」

 前に置いてあった酒を一口飲み眉をしかめる、ウィスキーだと思ったらそれっぽくついである烏龍茶だった。
 恐らく酒を飲めないアルジュナが雰囲気重視で用意したのだろう。

「あの村にいたゴブリンはアルジュナが畑仕事補助のために用意したゴブリン、人を襲うわけがない」

 おつまみはドリちゃん手製の柿の種、試行錯誤を繰り返し、本家に近い味が再現されつつあった。
 刀雲はこれが好きで、かなりの量をアイテムボックスに溜め込んでいる。

「アー君の見解は?」
「見解というかアンデッドになった村人とゴブリンに普通に聞いた。
 ゴブリンが村の中にいるのを発見した聖女と取り巻きが村人の制止を聞かずにゴブリンを攻撃、村人を庇って無抵抗でゴブリンは全て殺された。抗議する村人に対し、聖女の取り巻きの一人である王子は自分は王子、村人が自分を傷付けたら戦争になると脅したらしい、そして気の弱そうな村人を一人連れて村を後に去っていった。と思ったら魔術師と盗賊だけが戻ってきて、村に結界を張り、村人が逃げられないようにした上で全員殺害」

 連れていかれた村人こそ「偶然に保護」したと彼らが言った人物であり、死亡原因の傷は聖女一行が拷問してつけたものだろうと容易に推測できた。

「村人の遺体は?」
「自分たちが弔うと言って聖女らが引き取っていったそうだ。ギルドに身柄を渡したら拷問の跡がばれるからな」

 皇帝の問いにアルジュナが答える。

「ラーシャに魂を探させよう、依頼を出したギルドからそう遠くない場所に遺棄したはずだ」
「そっちはパパに任せる。俺は聖女を探す、突然現れたり、消えたり、移動距離もおかしい、あれの身柄の確保を急がないと嫌な予感がする」

 それぞれのやるべき事を確認し、その日は解散となった。

「よし、じゃあお風呂行こうか」
「いやもう上がったんじゃ……」
「大丈夫、温めのお風呂を回ってねってイネスにお願いしてあるから!」
「対価は?」
「この世界にない果物の苗」

 嫁とのお風呂タイムのために賄賂を惜しまない――それが神々のトップに君臨する男の正体だった。
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