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第二章 聖杯にまつわるお話

第121話

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 村はそんなに広くないのですぐに目的の場所に付きました。
 広場にあたるその場所にはキャンプファイヤーの下準備がされており、その近くに集まった村人が忙しく動いてるけど何をしているんだろう。

「おーい、見学に来たぞー」

 牛に乗って現れた僕らをぎょっとした目で見たものの、すぐに正気に戻って一斉に地面に伏せ頭を下げた。
 そう言えば身分制度ある世界でしたね、冒険者を始めとした知り合った人達が皆気さくで忘れてた。

「頭上げていいぞ、作業続けてくれ」
「は、はいっ!」
『うっふふー』
「くふふぅ」
「ふ、ははははは!!」

 シャムとイネスが何か企んでいるらしく機嫌よさそうに笑い、涼玉は牛が小走りを始めたことに上機嫌、マールスは七体に分身して一体を涼玉の傍に残すと人間の手伝いに散っていった。
 便利だなー。

「大変だ、あっちの畑に植えてあった実が一斉に実った!!」
「東の田んぼは稲が実ったと思ったら勝手に俵になってるぞ!」
「アルジュナ様これなんですか、謎の実がぁ!!」
「アー君、先に来てたんだね。注文の品届けに来たよ」
「今年の宴会会場こっちって聞いたから肉持ってきたぞー」
「マグロ釣りたて! 今なら生で食べれるよ!」
「おせち料理も持ってきたぞ」
「魁焔様がお好きな酒を持ってきた」

 村人が悲鳴を上げながらアー君に駆け寄ったと思ったら、かぶせるようにアカーシャ、騎士様、刀雲、魔王様などがぞろぞろと姿を現した。
 アー君相手に地面にめり込みそうだったけど、村人の方達の精神面は大丈夫……みたいだね普通に働いている。これも謎能力の力でしょうか、凄いや。

「騎士様、神薙さんは?」
「邪神一家専用地で飲み明かすって言ってたよ、いつ作ったんだろうね?」

 専用地、あれか、さっきアー君が言ってた神薙さんの脱皮したやつで作った山のことか。
 確かにあそこなら瘴気を溢れさせようが問題ないね、元々の大地が神薙さんの皮だし。

「餅つき始めますぞ!」
「俺あっち行ってくる」
「はぁい」

 刀雲と騎士様は餅つきに、アカーシャはオロオロする村人に近付き、作物の説明を始めている。
 おお皆頼りになるなぁ、さて僕は……まず牛から降りようか。

 お願いしたけど降ろしてもらえない、そのままのんびりと散策を始めてしまった。
 どうしよう、高いから自分じゃ降りれないし、騎士様に頼もうにも刀雲と餅つき始めちゃった。
 仕方がないので涼玉と並走しております。その間にもあちこちで作物がわっさわっさしているらしく、作業が追い付かない悲鳴が上がっている。

「黒牛疲れないか? 俺降りなくて大丈夫?」
「ンモ!」
「そっかぁ、かっちょええなぁ」
「ンモァァ」

 黒牛さんは軽やかな足取りで牛の群れを先導している。
 そして牛の群れが暮らしているのだろう村はずれに到着、すると同時に爆走を始めた。

「ヒャッハーーー!!」
「モオオオオオオ!!」

 そう言えばロデオしたいって言ってたね、すげードラゴン乗せてロデオしてるよあの牛。

「最高だぜぇぇぇぇ! 皆あんがとーー!」

 イヤッフー! と初めてとは思えない乗りこなしをする涼玉も凄いと思う。
 あ、僕はやらなくていいからね、このままのんびりでお願い。
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