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第二章 聖杯にまつわるお話

第146話

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 ネヴォラと幼児に今日はアー君の授業だから邪魔しちゃダメだよと説得してみた。

「うーんどうする?」
「護衛をチェンジ」
『賄賂?』
「魔物役をやらせて気持ちを分からせるか?」
「涼玉、それだと護衛に雇った意味がないでしょ?」
「ダメかー」

 入口の横に移動し、護衛の処遇について真剣に話し合う子供達。
 どれも彼らに優しくないなぁ、あの人達なにをやらかしたんだろう。

「あっ、お話してる間に抜けられた!」
『気配なかったの』
「にいちゃに出し抜かれた」
「そして僕も置いて行かれた」

 授業見学出来ない。
 おのれアー君、どうしてやろうか。

「イツキを仲間にした!」
『最強よ』
「ナンパな二人に世の中の厳しさを叩き込もう!」

 そういう訳で魔物側として授業参戦です。
 いやでも本当、あの二人なにしたの?

 四人でパーティーを組んだものの、スピードが速いのはネヴォラだけで、涼玉の移動はマールス頼り、シャムスは子犬になればそれなりに速いけど今は僕の腕の中。
 僕ですか?
 持久力のなさに自信があります。

 でも大丈夫、遠くで見ていた麦な魔物の群れから一頭近寄ってきて、僕とシャムスを乗せてくれたんです。
 毛皮が麦じゃないことに驚いていたら、ネヴォラがこの子は普通の羊だと教えてくれた。

「ギレンがアカーシャにクッション代わりとして貢ぐために連れてきたけど、港街はあっちぃし潮風で毛皮ぺっしょりだからうち来たの」

 半野生で暮らすにはシャムスの守りの一つでも持っていた方がいいだろうと会わせたら、そこから発覚した驚愕の事実。
 こちらの羊、元々は他国で奴隷だった羊の獣人らしい、ただ奴隷に落とされたストレスで獣に退化、役に立たないと魔物狩りの囮に使われ、逃亡中に崖から転落、波に流されて溺れていたのをギレンに拾われたらしい。
 大変な半生でしたね。

 アー君の担任の先生に通じる強運を感じる。

 冒険者に二度見されながら、いざダンジョン!
 そんな風に張り切っていたら入って数分の所でアー君の同級生と遭遇した。

「他の皆は?」
「グループで別れて行動中だよ、僕は休憩中」
「休憩早いな!」
「ネヴォラも食べる?」
「食べる!」

 ふわふわ頬っぺたのマシュマロみたいな男の子がネヴォラに差し出したのは串に刺されたチョコレート、向かい側ではゴブリンが焚火に串刺しにした魚を並べている。
 これが前にアー君に聞いたゴブリンの胃袋攻撃か!

 そしてこの男の子はアー君が置いて行ったネヴォラの足止め役に違いない、一人だけ入り口付近に残っているのが不自然すぎる。

「ネヴォラ、魚食え」
「小骨嫌い!」
「スライムが食ってある」
「ならいっか」
「ほれそっちの小さいのも食え」
『あい』
「あんがと」
「ありがとうございます」

 小さいのの中には僕も含まれていたようで、魚の串焼きを一匹貰いました。
 熱いけど美味しい。

 食べ終わったら引き続きアー君を追いかけよう、そう思っていたけどゴブリンとマシュマロ君に次々あれこれもらって追いかける暇がなかった。
 なるほど、これがアー君の考えたネヴォラ対策か。やるな。
 でも僕を置いて行ったのは忘れない、次回はえっちゃんにお願いしてこっそり授業を覗きに行くとしよう。
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