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第二章 聖杯にまつわるお話

第147話

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 授業が終わり、僕と幼児は帰宅、ネヴォラはナンパ二人を退治出来なかったことにぷりぷりしていました。
 ご飯に夢中になった君が悪い。

「ママごめんね?」

 夕方、学園が終わって帰宅したアー君が即行で媚びてきた。
 両手を合わせ、首をちょこんと倒したポーズがあざとい。

「あの依頼をミスさせる訳にはいかなかったんだよ~」

 ご機嫌治してね、と逞しく成長したふわふわの胸板で僕を懐柔しようとしている。
 あーふわふわぁ。
 はっ、いかんいかん、僕は僕を囮に使ったアー君に怒っているんだ。

「あいつら能力は高いけど息を吸うようにナンパするから評判がね、ちょっと落ち気味で、子供の護衛をすることで点数稼ぎさせたかったんだよ~」
「幼児アー君になら絆されるかもしれない」
「っく」

 ギルドの将来の優秀な斥候と自分の羞恥心を天秤にかけているようだ。

「じゃぁこれなら、どうだ!」

 ぼっふん。とアー君が煙とともに変身した。

「!!」
『獣アー君!』
「にいちゃが、獅子になった」
「僕より体形がっしりです!」

 僕がアー君の毛皮の魅力に抗うべきか負けを認めて飛び込むべきか迷っていたら、子供達がわらわらと寄ってきてアー君に群がった。
 獅子に群がる子犬、子豹、ドラゴン、とてもいい。

「わふわふ」

 さらに追加されるワンコ三匹。

「ぎゃっぎゃっ」

 そこに追加でもふもふズがドン。
 至福の光景です。
 ちょっと君たち場所を開けてくれたまえ、アー君は僕のために獅子になってくれたんですよ。

 もふもふたちを潜り抜け、アー君のお腹にダイブ。
 ふおおおおおお!!
 ふんわり毛皮の奥に眠るがっしり手前の筋肉がまだ子供な証拠!

「おお何だでかい毛玉が出来ているな」

 あれは刀雲の声、おかえりなさいって言わなきゃ、でも毛皮から離れられない。

「もしやアー君?」
「そうなのか?」

 騎士様も帰宅したようだ、あれ、夕食作ったっけ?

『パパおかえりっ! って、あれ?』
『どうしたの?』
『待って、あれ?』

 ぐるぐる言っているアー君可愛い、今日はずっとこのままでいよう、そして一緒に寝よう。

『ママ、ちょっと戻ってきてくれないかなぁ!?』
『ママー?』

 もちろんお風呂も一緒に入るし、乾かすのも任せてほしい。

『パパ助けて! 戻れない!』
『ママー!』
「にいちゃ!?」
「あらぁ」

 きっとご飯も食べ辛いだろう、僕が食べさせてあげるから何の問題もないよ。

「樹、一回アー君から離れようね!」
「イツキ、夕食の時間だぞ、子供達が腹を空かせている」
『そうそう腹ペコ!』
『ペコペコー』
「かあちゃぁぁぁ!!」
「ふわふわ」
「アー君の毛皮に魅了されちゃいました」

 外野がなにか言っている。
 もふもふに埋もれた僕には何も聞こえませんよ。

 はぁ至福。
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