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第二章 聖杯にまつわるお話

第150話

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 シャムスの鼻歌をBGMにワンコ親子を泡でもこもこにしております。
 エムは爽やか森林の香り、ローはエレガントに薔薇、食いしん坊ルドは焼き芋の香り、ルークはライムの香りがするシャンプーを選んだのだけど……ルドは本当にそれでいいのだろうか、そもそも誰だ焼き芋の匂い開発したのは。

 洗い終わってお風呂を堪能し、お風呂上りに牛乳を飲んで縁側で寛いでいたら騎士様が帰宅した。
 そして何やら玄関から入れないと騒いでいるのが聞こえてきた。

「あっママ!」
「また新しい子を連れて来たの? 玄関壊れる前に庭から入ってもらってね」
「はい」

 下を向いていて顔は分からなかったけど、悪魔みたいに捻じれた角を持っていても翼が上に引っかかって悪戦苦闘している姿は間抜けだった。
 玄関の高さは世界の背丈に合わせてあるはずだけど、あの人はその基準を遥かに超えていたようだね。

 庭で出迎えようと縁側に回ったら、ワンコ親子が同じ寝相で並んでいた。
 カメラ下さいまし。
 春日さんカメラ、これ投稿して。
 素晴らしい、エクセレント、芸術です、こういうの大好きですのよ。
 脳が混乱して言葉遣いが乱れるぐらい大好き。

「あの、ママ?」
「っは!」

 ワンコ親子をガン見して目的を忘れていた。
 アー君の声に僕が顔を上げるのと、ワンコ親子が顔を上げるのは同時だったと後でアー君に言われた時の心情を理解してほしい。
 なんでその場で教えてくれなかったかと問い詰めたら「本題が置いてけぼりになるから」という正論をいただきました。

「樹」
「ママ、あのえっとな」
『アー君おかえりー』
「ただいま」

 騎士様に背を押され前に出てきたのは、先ほど玄関に引っかかっていた魔物さんだった。
 あんなでかい翼で我が家に入ろうとしないでほしい、玄関先には来客用にタイガ作の花瓶とか見栄え良く置いてあるので困る。

「こちら、刀雲です」
「え?」
「聖女を名乗る例の連中に襲撃され、呪いを受けてこの姿に――」
「そ、そんな」

 このボロボロの邪魔くさい翼を持ったミノタウロスっぽい魔物の正体が、刀雲!?
 僕の旦那様がこんな姿にっ!
 ショックのあまり床に膝をつくと、慌てたシャムスやイネスが駆け寄ってきた。

『ママー!!』
「か、かかかかあちゃ!」
「ママしっかり!」
「う、うぅ」

 エロい感じの褐色の肌の名残はちょっと残ってるけど違う!

「僕の、僕の、僕のシックスパックがぁぁあ!!」
「え、そこぉ!?」
「ブモー!?」

 ミノタウロスの肉体も筋肉質だけどちょっと違うの!
 
「やだやだやだやだ! 刀雲のシックスパックじゃないとやだーー!」
『僕もやー』
「パパ……背中の足凄い食われてます」
「イグが何かソースかけ始めたけど止めなくていいのか?」
「あっ、こらちょっと、刀雲にソースかけないの!」
「美味しく頂いてます」
「うん」

 刀雲の筋肉を惜しがって嘆く僕、ソースが駄目なら炙り焼きでと涼玉の炎で焼こうとする邪神一家、我が家の夜はいつになくカオスです。
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