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第二章 聖杯にまつわるお話

第228話

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 僕が食べたかったのは聖なるタルトと紅茶。
 お腹の子が食べたがったのは芋羊かんとお煎茶。

 意見が一致しなくて久しぶりに気が向かないものを食べることを強要されてました。
 羊かん好きだけどね、焼きたてタルトを食べたかった。

「刀雲」
「なんだ?」
「この子ちょっと好き嫌いが激しすぎないかな?」

 お腹をドンドコ蹴ってもっと食べさせろと主張するので、パンを食べようとしたら拒否をされ、刀雲がならこれはとふんわりオムレツを作ってくれたけどそれも拒否、昨日まではこんな事なかったのに、今日になって突然好き嫌いを主張し始めたのはなぜだろう。

『ママミルク飲んで』
「ストロー使うか?」

 いつもなら定期的にドリちゃんミルクを飲んで補給しているのに、今のところ羊かんとお煎茶しか摂取してないのでじわじわと魔力枯渇の気配がですね。
 ミルクも飲まないとはどういう了見だろうか、魔力枯渇になると困るのは僕なんですけど!

「イツキ、これは飲めるか?」
「?」

 刀雲が渡してきたのは抹茶だった。
 しかもただの抹茶ではなく、パフェのように何層かに分かれている抹茶ミルクパフェもどき。

「お腹の子、うっきうき」

 抹茶って苦いんだよね、それを分かっていて喜んでいるのだろうか。
 吸収するのは君だけど食べるのは僕なんだよ、勘弁してもらえないかなぁ。

『ママあーん』
「見た目も味も渋そうだな」

 シャムスが小さなおててでスプーンを持ち、あーんしてくれているのでテンションと足蹴りが最大になっております。痛い、痛い、痛い。

「痛くて食べれない」
『いい子にするのよ、っめ!』

 静かになった。
 シャムスが怒ってくれたんだね、ありがとーー!!

 大人しくなった所で改めてシャムスにあーんしてもらった。

「ん、これ!」
「抹茶にドリちゃんミルク混ぜてみたんだ、これなら食べるだろう」
「うん!」
『良かったねぇ』
「工夫が必要なのか、抹茶ラテも飲めそうだな! セバツーに言って高級抹茶を用意させよう!」

 涼玉が名案を思い付いたとマールスにお願いをしている。
 セバツー、ヘラ母さんの所で働き、使い魔として働き、我が家関連でもこき使われ、悪いね!

「寿司を作ってみたがどうだ?」
『にぎりぃ』
「へいマグロ一丁!」
「うん食べれる」

 和食しか受け付けないとか厄介な子だな!

 ならばこれはどうだと刀雲が寿司のネタをミルクに漬けようとしている。
 刀雲、刀雲、寿司とミルクを混ぜようとしないで、それ混ぜたら危険な奴。
 摂取させればいいってものじゃないからね、僕の味覚破壊するのは勘弁してね!

 お腹の子にドリちゃんミルクを採らせる戦いは一日続いたけれど、意外な形で決着がついた。

「作った料理にドリちゃんが魔力を込めるのはダメなの?」
「「あ!!」」
『その手があったのよ!』

 夕食のために帰宅した騎士様が僕らの話を聞いて放った一言が全てを解決しました。

「うぅミルク漬け寿司食べる覚悟してたけど良かったぁぁ」
「ああ沢山食べろイツキ!」
『ママ、玉子焼きもおいちいよ』
「とうちゃ、シャムス兄、その料理はまだ魔力込められてないぞー」

 僕が食べれなかった料理は涼玉が消費したんだけど、有り余ったエネルギーは果樹園の植物が吸収したらしく、その日、黄金シリーズが普段の数倍の量実ったそうです。
 イネスに見つからない内にと収穫しまくったアー君がホクホク顔で教えてくれました。
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