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第二章 聖杯にまつわるお話

第281話

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 帝国が支配する国の一つで内戦が起き、生き残ったお姫様が助力を乞いに刀国に秘密裏に来ていたらしい。
 刀国に入ったのは確認出来たけど、その後の消息が途絶えたそうです。
 
 神隠しですね、あるある、よくある。

「ママ何か知らない?」
「神薙さんのおやつを邪魔して食べられた人なら知ってる」

 でも身元は知りません。

『護衛の人は女神の信徒だったから命は助かったよ』
「それよりアー君、キリッとした表情で人参残そうとしないでね」
「っぐ」

 アー君親衛隊が後ろでオロオロしている。
 いくら有能でもこういった場面では無力です。

「パパは? 今日お休みのはずでしょ?」
「まだ暗いうちに刀雲と釣りに行ったよ」

 ヨムちゃんが新しく釣りスポットを見つけたらしい、ドリちゃんとお弁当を作って昨日渡した時に楽しそうに教えてもらった。
 最近は刀雲に夜勤が増えてきて、騎士様と休日重ならないことが多々あるんだよね、だから余計嬉しそうに釣りに出掛けて行った。

「うーん、じゃあ今日はちょっと山の散策にでも行くか」

 食事を終えたアー君が口元を拭いてもらいながらそう言うと、涼玉が目をキラッキラに輝かせた。

『トラブル起こるよ、今日は門のところ』
「涼、どっちに行きたい?」
「森で大暴れも楽しいけど、見学も捨てがたい!」
「お出掛けですか?」
「ついてく」

 にゅんとえっちゃんからイネスとネヴォラが現れた。
 正確には僕の影にえっちゃんが潜んでいるので、僕の影から現れたことになるのかな?

「ママも行く?」
「うん」

 僕が一緒に行ってトラブルが回避出来る訳ではないし、むしろ混沌が深まる可能性の方が高いけど、このメンバーを町中に解き放つ方が心配です。
 霧ちゃんってシャムスに関しては過剰防衛上等な子だし。

 そういう訳で食後のデザートを楽しみ、本日のポンチョを無地のものからアルパカポンチョに着替えさせられ、その格好で城下におりました。
 アー君がお休みの本日、つまり城下町にはアー君の学友を始めとした子供たちがいるという事で、いつもより人通りが多いんじゃなかろうか、なのにアニマルポンチョ?
 僕の前世何をしたんだろう、何もしてないな、ただの犬好きだった。

 現実逃避をしている間に目的の門に到着。
 森に接している桜並木通りの門は冒険者の出入りが主だけど、こっちは商人や旅人など様々な人が出入りするから道の幅が結構広い。
 そしてトラブルが最も起きやすいのもこちらの門、名称なんだっけ、正門とかその辺りだろうきっと。勉強不足がカイちゃんにバレたら面倒だからこの問題はスルーで。

 とにかく。
 こちらは他国からやってきた人が王都へ入るための唯一の入り口のため、他国の人が一番最初に通るトラブルの発生源。
 つまりまぁ、邪神一家の出現率が高いのもここと言われている。

「港は入り口に入らないの?」
「そもそも船を持っている国が少ないから入り口として認識されてないかな」
『へぷし!』
「シャムス大丈夫か?」
『くちゃい』

 今、シャムスがくしゃみをした。
 とても可愛いくしゃみでした。天使かな。

 霧ちゃんが服の裾でシャムスの鼻を拭きつつ、周囲に霧を広めているのはなぜでしょうか。
 え、なに、今のくしゃみがトラブル発生の合図だったの?
 可愛すぎじゃない!?
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