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第二章 聖杯にまつわるお話
第435話
しおりを挟む北の辺境に響くイネスを称える歌。
軍歌っていうのかな、あれ風にアレンジして歌いながら砦前の草原を大勢のゾンビが走っています。
「もっと声を出せ!」
「ひぃ……ひぃ……」
「み、ず」
参加を強制された貴族の跡継ぎさんが死にそうになりながら走り込み中です。
僕?
巻き込まれないように砦の上から見学してます。
「もう、だめ」
「うぉあぁぁ」
ばたりと倒れる人、ゾンビのような声を上げながら前に進み続ける人、死屍累々です。
その横を走り抜ける筋肉ムキムキの牛、背には涼玉とシャムスが乗り、イネスはネヴォラと一緒になって並走してます。
皆元気だなー。
「今日も元気だイネス様!」
「「今日も元気だイネス様!」」
「トップスピードで走り抜けろ!」
「「トップスピードで走り抜けろ!」」
足並み揃えた筋肉軍団がゾンビ軍団を追い抜かして行く。
脳筋がイネス信者になるとあんな感じに落ち着くのか……イネスがご機嫌ならいいんだけどね。
ゾンビが全滅した所で休憩。に見せかけたひよこ豆のスープでドーピングタイム。
「よし全員に行き渡ったな、5分経ったら次の訓練に移るぞ!」
「ひぃぃ」
「次は走るトレントを追いかけながらの収穫だ!!」
「落ちた実を拾ってもいい! ノルマは一人に付きカゴ一杯とする!!」
何を言っているのかちょっと意味わからないですね。
えっちゃんは分かる?
尋ねたら影で砦の門付近を示したので、そちらを見たら筋肉軍曹が走り出し、その後を追うように森が動き始めた。
……トレントですね。
幹がムッキムキだけど、トレントだね。
散々走らされ、5分の休憩の後はトレントとの追いかけっこらしいですよ。
帝国皇子が好きそうだなぁ。
「トレントなのに足が速い」
あっという間に休憩中の貴族子息がいる場所まで辿り着き、ひよこ豆のスープを奪ってそのまま軍曹と走り去って行く。
食べれた人は回復してるだろうけど、食べる余裕がなかった人は悲惨じゃない?
しかも食べ残しはトレントが食べたようで、明らかにパワーアップしてスピードを上げた。
そのトレントにイネスとネヴォラが飛び乗ったかと思ったら、するするっと木を登ったようで木の上から顔を出して僕に手を振ってくれた。
お二人さん余裕ですね。
「わははは!! ロデオもっとスピード上げていいぞー!」
「モオオオオ!!」
『きゃー! たのしー!』
ノリノリの涼玉、張り切るロデオ、はしゃぐシャムス、当然のようにトレントが強化され、それぞれが実らせている果実がキラキラと太陽を反射し始めてます。
あれ、特殊な加護とかついてるやつ。
「うおおお、神の加護じゃぁぁ!!」
「もっと力を手に入れて、イネス様の役に立つぞぉぉ!!」
「おおおおお!!」
トレントが実りを落とし始めた所で、足並み揃えて走っていた人達が一斉にそれに群がった。
貴族の人達、カゴ一つ分どころか一つも拾えない人出そうですね。
「あっ、でも食いついている人もいるね」
「キキ」
ひよこ豆のスープを食べたのか、歯を食いしばってトレントを追いかける人影がちらほら。
あれ、でもカゴに集めるもどこにもカゴがないような……。
「そーれー」
「ネヴォラのカゴ編みは神業ですねー」
どうするのだろうと見守っていたら、ネヴォラがトレントの上からカゴを落とし始めた。
トレントの上で休憩してるかと思いきや、カゴを作るために登っていたらしい、ネヴォラが作ったカゴって結構いいお値段付くらしいけど、本人は秒で作っている模様。
いやぁそれにしても今回の目的ってなんだっけ?
軟弱貴族を脳筋にする合宿?
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