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優しい人生を

第48話

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 アー君が覚醒した。

 光を受けて眩く輝く純白の毛並み、2mを超す身長と隆々とした理想的な筋肉、神気をまとう二息歩行の獅子。
 僕は断言する、女神様がこの姿を見たら間違いなくゲームのキャラで再現するに違いない。

 だけど残念!
 ここ夢の中なんだよね~。

『ふはははは、体が軽い!!』
「負けぬぞ!」

 夢の中とは言え、覚醒して成人できた事にはしゃぐアー君はただいまタイガと手合わせ中、獅皇さんと言う保護者もいるので安心です。
 僕はせっせとお茶菓子の準備中、お祝いに何か珍しい物出してあげたいよなぁ。

『この手、剣を持ち辛い!』
「男ならば拳で粉砕せよ!」
『それもそうだな! ふはははは!』

 っぺと剣を放り捨てたアー君は、今度は素手でタイガと取っ組み合いを始めた。

「っく、肉球の感触が!」
『くくくく、どうしたタイガ! 本気を出せ!』
「待て、ぷにっとした感触に気が散る」
『む?』

 力比べをしていたと思ったら二人の動きが止まってしまった。
 組んでいた両手を離し、アー君が自分の両手を見つめている。

 怪我でもしたのだろうか、心配になって二人に駆け寄った。

「どうしたの?」
「それが……」

 肉球のぷにっとした感触に癒され、どうしても本気を出せないらしい。

『肉球とは柔らかい物だろう?』

 困惑するアー君の両手を取り、徐に自分の頬っぺたに当ててみた。

 ぷにん

 ああこれは至福だわ、攻撃する気なくなるよねー。

『は、母上……』
「はぁ至福」

 現状、室内でぬくぬく過ごし、スプーンより重い物を持った事がないアー君の肉球が硬くなるわけがない、下手すればスラちゃんの方が硬いかもしれないね、これ。

 ぽふん

 アー君が幼児に戻ってしまった。

『理想と違った』
『アー君元気出して、おやつ食べましょ』
『食べる』
『タイガ抱っこ』
「うむ」

 シャムスにねだられたタイガがシャムスとアー君を抱き上げた。

「「かあさまー」」

 どうやら今日は双子も参加出来るようだ、もうちょっと早ければアー君の覚醒姿見れたのに残念。

「少し見ない間にキラキラ度がアップしてるね」
「魂を磨いているからね」
「でも魑魅魍魎がいないんだよ、普通はうじゃうじゃいるはずなのに」
「周りの魂が綺麗で眩しいぐらい」
「宮廷の泥沼想像してたのになー」

 確かに、普通物語の中では裏の裏まで探ったり、暗殺されるとか定番だよね。

「勉強辛くて逃げ出したくても、宰相が扱い上手くて……」
「気付くとおやつ片手に部屋に戻ってるよね」

 さすが宰相さん、孫自慢するだけはあって子供の扱いお手の物!

「隠れてもきっちり一時間後には見つかるんだ」
「最近は隠れ場所にお茶が用意されている事もあるよね」

 それは行動パターンを完全に把握されているのではないだろうか、二人が楽しそうだからいいか。

 今度何か差し入れを持っていこうかな、宰相さんに。
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