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優しい人生を

第49話

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 アー君がこの世界を『ファンタジー』だとふんわりと理解したようだ。
 きっかけはあの夢の世界で覚醒できたのがきっかけ、気が抜けたら幼児に戻ってしまったり、他の世界では共有出来ないあれこれをホイホイ共有出来ていたり、真面目に現実と向き合ったら開き直った方が楽だと悟ったみたい。

 かつては聖者として世界を救った悲劇の救世主。
 過酷な時代を自分の力で生き延びた人物、適応力がチートだった。

『ふぉぉぉぉ、へーーんーーしーーんーー』

 あれこれを理解すれば力を正しく使うのは朝飯前、庭にある平地に二本足で立ち、ポーズを取りながらカッと光を発したアー君は次の瞬間、8頭身の獣人になっていた。しかも夢の中よりしゅっとしている。

 わぉイケメェン。
 ちなみに僕らは縁側に並んでそんなアー君を眺めている。

『霧よ!』

 ふわりと庭全体を一瞬で霧が覆った。

『状態異常無効付与!』

 ……今、霧が七色に光った気がする。
 あ、霧消えた。

『これがファンタジーの力、なるほど追求すれば面白いな、ならば次は』

 ぐっと目を閉じアー君が瞑想を始めた。
 はー、アー君凄いなぁ、それにしても今日の夕食は何にしようかなぁ。

『ぬ、ぬぬぬぬおおおおお! ていや!』

 ぽん。と軽快な音と共にアー君の手が肉球から人の手に。

『これで剣が持てる!』
「アー君、進化のお祝い何がいーい?」
『バイキング!!』

 返事と同時にぽふんと音を立てて元に戻ってしまった。

「まま、アー君はバイキングが食べたいそうです」
「そっかー、じゃあ今から仕込み始めないとなぁ。今日は何をメインにしようかな」
『カレー!!!!!』
「カレーは僕も食べたいです」
「アー君甘党だからなぁ、でもそうだね、色々な種類のカレー用意して、ご飯だけじゃなくてナンやパンも用意して選べるようにしようか」

 カレーうどんやカレーラーメンも捨てがたい、そうと決まれば……。

「よぉし、カレーの為に食材切るぞー! スラちゃん皮むきお願い!」

 ぷるるん

「いやぁいいタイミング」

 にこにこと笑顔で登場したのは騎士様だった。
 一緒に春日さんやレイアさんもいる。

「ヴァルカが出産ラッシュでさ、春日に手伝ってもらってたんだよ」
「主神使い荒いよな」
「俺は産まれたてのもふもふを堪能していた」

 お二人が働いていた中、騎士様はいつも通りだったみたい。

「ってわけでイツキ、酒頼むな」
「はぁい」
「俺はラッシーだっけ? あれ飲みたい」
「俺はどうしようかな、ミルク? 樹の」

 騎士様が何か言ってるけど無視しました。
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