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とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-15

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 魔法の授業を終えて、昼休み。

「お前ら何やったんだ? Sクラスで噂になってるぞ?」

 食堂でよく近くに座る子が興奮気味に話しかけてきた。

「先生が暴走しただけだ」
「ああなんだ、例年のあれか」
「え、そんな感じ!?」
「そりゃな、他国の人間からしたら貴族というとうと~い身分を振りかざしたら相手が公爵家の嫡男、しかも売ったつもりのない喧嘩を高い値段で買われてエリートクラスが敵に回るとかただの悪夢だろ。けどそこで引けばいいのにたまにSクラスに本当に喧嘩売りに行く奴がいてさ、恒例行事みたいになってる」
「エリートクラス?」
「俺らそんなのに目を付けられたの?」
「いや、目を付けられたとは違うな、獲物をくれてありがとう、みたいな感じ。学園の方針で優秀な学生に最高峰の教育を、ってのがあるらしくて、その被害を受けているのがSクラス、真面目に結果を出したら勉強漬けだろ、キェェェェェってなってるところに身分を盾に喧嘩を売ってくるやつがいればそりゃ八つ当たりの一つもするだろ」
「なるほど」

 納得してしまった。

「先生のあの態度も作戦の一つ、とか?」
「あれは素だ」
「えー!?」
「貴族相手というか子供相手に一歩も引かないどころか煽るとか」
「あーうん、先生、邪神一族崇拝している一族って有名だからなぁ、神を敬うどころか礼の一つもせずに身分をぶん回すとキレる」
「なにそれ怖い」
「俺も最初は怖かった、今は慣れた」
「あ、はい」

 先生が怖い人なのは分かった。

「で、何があった?」
「先生が貴族のお嬢さんに絡まれまして、先生がそれを返り討ち」
「先生大人げないもんな」
「大人しく公爵家の跡を継いだのも、身分の上にふんぞり返る他国の貴族の鼻を片っ端から折るためだって聞いた」
「そういや、俺も父ちゃんに『身分を振りかざす相手はさらなる権力でぶん殴れ』って言われた」
「とんでもない教育方針」

 先生が怖い人だと再確認したところで、午後の実技授業。
 今日のクリーンの授業は講堂で行われる。クリーンは便利だけど、熟練度によって出来ることが大きく違ってくるらしい。
 うちのクラスにいる孤児院のエースは遠距離攻撃ならぬ遠距離クリーンが出来る。ちょっと意味がわからない。

「さて、これで留学生の皆さんもクリーンを最低限使えるようになりましたね、では次はクリーンを使った掃除の仕方です。まず床に膝をついてください」

 はい? 俺だけじゃなく、みんな頭に「?」が浮かんでますよ。
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