迷宮サバイバル! 地下9999階まで生き残れ!

ねこねこ大好き

文字の大きさ
10 / 78

地下十二階、迷いの森

しおりを挟む
 あるはずの無い階層、地下十二階。そこは森が生い茂る地上だった。
 太陽がある。風がある。木がある。土がある。山がある。人工物は見当たらない。唯一、地下十一階へ続く階段の入り口だけが異彩を放す。入り口は大きめの岩に刻まれていた。とてもではないが、上り階段の入り口とは思えない。
 まるで時空が歪んでいるようだった。
 
 木々の皮を剣で剥ぐと樹液がにじみ出る。
「生きている木だ」
 暑い日差しが木漏れ日となって降り注ぐ。涼し気な風が青臭い森の臭いを運ぶ。
「私たちは本当に、地下迷宮に居たのか?」
 リリーは指先で土を摘まみ、ゆっくりと捏ねる。
「土だ。レンガでも何でもない、踏み荒らされていない森の中だ! 今までの階とまるで違う!」
「迷宮です。そう考えると可笑しくないのでは?」
 チュリップが涼し気に言う。
「レイ? この樹液、舐められるかな?」
 ローズに急かされたので、樹液を指で掬い、臭いを嗅ぐ。砂糖よりも甘い臭いだった。
「樹液は熊も舐めるくらい美味いからな……試しに、舐めてみるか」
「大丈夫なのか? 前の時のように腹を下すかもしれない」
 リリーに止められるが、首を振る。
「あれぐらいの失敗で臆していたら、飢え死にする。たとえ病気になろうとも、まずは試してみるしかない」
 ベロリと指に付いた樹液を舐める。体が火照るほど凄まじく甘かった。
「こいつは美味い! 栄養もありそうだ!」
「じゃあ! 私も舐める!」
 ローズが樹液に手を伸ばすが、それを押さえる。
「俺が良しと言うまで舐めるな」
 腹を摩る。
「しばらく様子を見よう」
「いや!」
 ローズが樹液に吸い付く。カブトムシか?
「おいおい! 俺の言うことを聞けって!」
「大丈夫! それにこれ! 水あめよりも美味しい!」
 ぐしぐしと行儀悪く袖で口を拭う。なぜこれが可愛いと思えるか不思議だ。
「食料が無い以上、これが食べられなければどの道死にます」
 チュリップも躊躇いなく舐める。
「うん! 甘くて美味しいです!」
「私もいただこう!」
 リリーが樹液を舌先で突く。
「香りだけでも高級品だ! 紅茶に入れてみたい!」
 そしてぺろりと舐めとる。
「はあ……これで体調を崩したら、神様に見放されたと考えるか」
「神様の目は迷宮に届かないと思いますよ」
 チュリップが僧侶とは思えない言葉を吐く。
「チュリップ? まだあのことを怒っているのか?」
「さあ? それより、これからどうします? 階段付近は安全そうです。いったん戻りますか?」
 いったん地下十一階へ戻るか考える。答えは決まっていた。
「戻ろう。もう地下十一階に用は無い」
 皆とともに地下十一階へ戻る。そこはやはり、暗黒の城の回廊のようであった。このすぐ下に、青空で満ちる世界が広がっているとは考えられなかった。
 しかし驚いてばかり居ても仕方がない。現実を受け止める。今必要なのは、驚くべきことではない。
 前に進むことだ。

 十二階へ必要な荷物を持って戻る。宝はすべて置いてきた。必要なのは武器と防具、そして生活用具だけだ。
 ただ、三人がどうしても本を持っていきたいと言ったので特別に許した。文字が読めない俺と違って、何か気づいたことがあるのだろう。とは言っても、一人三冊までにした。

「マッピングはどうする?」
 リリーが眉を顰める。
「俺が描く。山育ちだから、大丈夫だろう」
 こうして地下十二階に広がる森の探索が始まった。
 発見したい物は拠点にできる場所だ。拠点は洞穴か拓けている場所が良い。拓けている場所なら小屋が作れる。拠点さえ作ってしまえば、当面の生活は何とかなる。
 そう油断していた。森は迷宮の一部であることを忘れていた。

 森を歩き始めてすぐに、異変を感じる。
「木が動いている?」
 後方を確認すると皆が続く。
「動いてないと思うけど」
 ローズが不思議そうに木々を見つめる。
「いや、俺たちは階段を下りて真っすぐ進んだ。そしてまだ数百歩程度しか前進していない。だから、振り返ったら階段が見えるはずだ。なのに、今は見えない」
 注意すると木々がまるで取り囲むように密集していた。これでは森でなく樹海だ!
「足跡が消えていくぞ!」
 リリーの言葉に従い、足元を注視する。リリーの言う通り、足跡は雪が積もるように綺麗に消えていった。
「迷いの森ですね」
 チュリップが舌打ちする。
「これはマッピングどころの話じゃない! すぐに後退して階段へ戻るぞ!」
 全員手をつなぎ合わせる。はぐれたら命とりだ。
「絶対に手を離すな!」
 速足で後退する。だが無駄であった! なだらかな道だったのに、戻るとアップダウンが激しくなる! 風向きがころころ変わる! 木々が移動しているどころの話ではない! 地形が変わっている!
「迷った!」
 夕焼けになったころ、俺たちは足を止めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

レンタル従魔始めました!

よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」 僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。 そのまま【テイマー】と言うジョブに。 最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。 それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。 そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか? そのうち分かりますよ、そのうち・・・・

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

処理中です...