迷宮サバイバル! 地下9999階まで生き残れ!

ねこねこ大好き

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外の様子は? (リリーの場合)

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 ルシーが用意したテレビでローズの学校の様子を見た。嫌な光景だったが、ローズは気丈にもそれをばねにして、脱出を今一度決意した。
 次はリリーの番だ。

「私のお父様とお母様の様子を見せてくれ」
 リリーがボタンを押すと、リリーの命に従い、テレビが筋骨隆々な男と体格の良い女を映す。それぞれ白髪一つなく、肌にも張りがあって若々しい。だが表情に覇気がなく、体格に似合わず弱弱しい雰囲気だった。

「墓標に私の名前が書かれているな。予想していたことだが、少し、寂しい」
 場面は葬儀の様子だった。リリーは体育座りで死者となった己とそれを取り囲む人々を見つめる。

『ユリウス様、わざわざ足を運んでくださり、ありがとうございます』
 葬儀が終わるとリリーの両親はユリウスという青年に赴く。
『葬儀の場で礼を言わないでください』
 ユリウスは鋭い目でリリーの両親を諫めると、墓の前に膝を付く。
『君なら大丈夫だと考えている。必ず帰ってきてくれ』
 ユリウスは手を組むと祈りを捧げる。

『申し訳ないが、今日はこれで失礼させていただく』
 ユリウスは祈りをやめるとリリーの両親に頭を下げる。
『お忙しい中、本当にありがとうございました』
 リリーの両親も頭を下げる。
『礼は、やめてください』
 ユリウスは一睨みすると、葬儀を後にした。

「ユリウスも言ってるけど、何でお前さんの両親は謝ってんだ? 別に両親に落ち度は無いだろ?」
「ユリウス様のほうが立場が上だ。来てくれたことに礼を言うのが筋だ」
 リリーはテレビを寂しい目で笑った。

『しかし、多額の保険が下りた。それだけは、あの子に感謝しよう』
 葬儀が終わり、古ぼけた屋敷に帰ると、リリーの親父が気に障ることを呟く。
『そうですね。しばらくは食べるのに心配はありません』
 リリーの母親は涙をほつれたハンカチで拭く。
『次こそ、男の子を生もう。まだ時間はある』
 二人は肩を抱き寄せて震えた。

「何で俺はムカついてんだ?」
「さて? ただ、女の私が生まれて、お父様もお母様も随分と悲しんだ」
 リリーは自虐的な笑みを浮かべる。
「お父様もお母様も屈強な武人であったが、やはり金には勝てない。そして女は金を稼げない」
 リリーの弱弱しい言葉が虚空に響く。

「次は、アルカトラズ騎士学校を少しだけ見よう」
 リリーがボタンを押すと、アルカトラズ騎士学校に場面が移る。
「結構ボロボロだな」
 アルカトラズ騎士学校はアルカトラズ魔術学校に比べて外装が荒れていた。また掃除をしていないのか汚れが目立つ。
「寂れた砦をそのまま使っているからな。その分、ここで暮らせばいざ戦争になっても戸惑うことは無い」
「砦か……それにしては禍々しい。まるで監獄だ」
「この砦は捕虜収容所も兼ねていた。おかげできつい練習も逃げ出させない」
 リリーは懐かしいものを見るように笑う。

 騎士学校は森と城門で囲われていた。広場には血交じりの土や血の付いた木刀が散らばる。
「血が出るほど特訓するのか?」
「当然だ。騎士学校の授業は、座学よりも実践を重んじる。必然、出血も多くなる。最も、金がある奴は違ったが」
 リリーは事も無げに言う。
 リリーの見習い騎士という肩書の裏には、生臭い犠牲があった。
 彼女はその肩書を得るために、何を犠牲にしてきたのか。考えただけでも腹が冷えた。

『それにしても、いい女が死んじまった』
 リリーがポチポチとリモコンで遊んでいると、騎士学校の食堂を映す。そこには血なまぐささとは無縁の、傷一つない、小奇麗な制服を着たガキたちが笑っていた。

「こいつら、随分と痩せてるな?」
「貴族の金持ちの息子たちだ。彼らは座学のみだから、実践練習を経験しない。だから痩せている」
「実践練習をしなくて良いのか?」
「彼らは将官クラスになることが決定している。一定の寄付金を騎士学校に納入すれば、必ず将官クラスとなれる制度があるんだ。将官クラスは、騎士たちに命令を下す立場。実践よりも座学で頭を良くしたほうが良い」
「その割には俺のほうが頭よさそうに見えるんだけど気のせい?」
「文字が読めないお前と比べるのは酷だ」
「ブーメランになっちまった。頭に突き刺さっていてぇ」
 くくっとリリーは笑う。

「だが、こいつらと一緒にここに来ていたら、私はすでに死んでいた。お前で無ければだめだった!」
 リリーが初めて憎しみに満ちた目でテレビを睨んだ。

『何回もあいつを誘ったんだ。でもあいつ貧乏なくせに首を縦に振らない』

『馬鹿な奴だ。貧乏人は貧乏人らしく股を開けばいいのに、かっこつけやがって。だから死ぬんだ』

『大方、どこかで貧乏人の成り上がり物語でも見たんだろ。頑張れば報われる。金持ちになれる。哀れだね』

『そういう輩のおかげで、俺たちは潤うんだけどな。夢を見続けるために泥を啜る。その上を俺たちが歩く』

『そういうのは、抱く価値もない底辺の連中が見るべきだ。あいつは違う。俺たちに抱かれる価値があった。だから現実を見せてやったのに』

『襲ってやったのに抵抗しやがって』

『抵抗するから、父親が首になって無職になるんだ』

「ううああ!」
 リリーがテレビをぶった切った!

「こいつらと迷宮に遭難していたら、私は犯されていた!」
 リリーは何度もテレビを踏みつけて、粉々にしていく。
「最も、襲われはしたが、返り討ちにしてやった! ふん! お前らのような弱者に屈するような私だと思うな!」
 リリーは肩で息をしながら、血走った目で笑う。
「生きて帰れば私の評価は変わる! お父様もお母様もあの屑たちも私にひれ伏す! 私の装備は国を買えるほどの価値がある! それで必ず見返す! そのために必ず生きて帰る!」

 リリーは息を整えると、サッパリした顔で、皆に手を差し出す。
「私は生きて帰り、奴らを見返したい。そのために、手を貸してくれ。礼はする」
「礼なんていらねえよ。俺たちは皆で生きて帰る。それだけだ」
 握手をして、笑う。他の皆も握手をして笑う。

「皆、ありがとう」
 リリーはぐっと剣を握りしめる。
「この先、どんな困難があっても、必ず生き残る!」

 リリーは怨嗟の声を地上に届けることを誓った。

「次はチュリップの番だな」
 リリーがリモコンをチュリップに渡す。
「正直、見せて気持ちの良いものではないのですが。皆さんが恥部を見せたのですし、涙を飲んで私も見せましょう」
 チュリップは減らず口を叩きながらリモコンを操作する。
 何事もなかったかのように復活していたテレビが教会を映した。
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