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地下5000階、仲よくしたいです
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ようやくマッピングと追跡で脱出するルートが絞れた。
「中央の通路が怪しいな」
階段を下りると三つ又のように通路が分かれる。このうちの中央に下り階段がある。
「巡回法則も分かりましたし、一気に行きますか?」
チュリップの言葉に頷く。
「もう食料が無いし、幸い隠れる小道は沢山ある」
「しかし罠の存在が心配だ」
「意地悪になってきたからね。下り階段だと思ったら偽物だったことも沢山あったし」
リリーとローズは乗り気ではない様子だ。
「気持ちは分かる。だが物資が無くなった以上、急いだほうが良い」
最後の物資である爆竹を取り出す。
「前々から思ってたんだけど、チュリップって何でも作れるな」
火をつけると爆発する魔法の道具を摘まむ。
彼女たちは様々な道具を駆使して地下3000階までたどり着いた。
実力を補って余りある知識と技術だ。
「それを作ったのはローズですよ」
「マジで?」
「うん。乾燥させたマンドラゴラと化け物の油を混ぜると簡単にできるよ」
「知らなかった」
「ここで手に入れた本とかで勉強したから」
「時間があったら一から勉強を教えてくれ」
「分かった」
紐を壁にこすり付けて火をつけると、階段から右方向に投げる。
数瞬後にバチバチと音が鳴ると巡回していた化け物が一気に右方向に流れ込んだ。
「行くぞ!」
一気に中央の通路をかける。
「あった!」
下り階段は素直に見つかった。今回の階層は凄く優しかった。
次が地獄だからかもしれない。
「次は地下5000階だね」
ローズの手を繋いで慎重に階段を下る。
「ああ。ルシーたちが居ればいいんだが」
「多分居るのでは? 1000階ごとに待っているようですから」
「そうなるとまた戦う訳か」
全員がため息を吐く。
「次はどんな敵だろ?」
「地下4000階だと、幽霊騎士に召喚王と巨大ムカデだったな」
「幽霊は攻撃が当たらないし、召喚王は次々と敵を生み出すし、ムカデは頑丈で毒持ち。敵は全部速いし攻撃は痛いしで、戦いたくない相手です」
「次はおそらく、能面侍と影軍団に毒王だろう。地下4000階からここまでで一番厄介な奴らだった」
「嫌だー! 本当に死んじゃうー!」
考えるだけで泣きたくなる。
「こうなったら土下座して、休み時間を貰おう! それしかねえ!」
「お風呂に入りたいですね」
「お菓子食べたい!」
「特訓する時間が欲しい」
全員ヘトヘトだ。
そうやって愚痴っていると地下5000階の出口が見えた。
「この臭い! 森だ! 地下十二階みたいに森があるぞ!」
「うそ!」
急いで階段を下りる!
「太陽だ! 木だ! 土だ! 山だ! 風だ!」
辛気臭い迷宮が一変して楽園に変わった!
「あ、来た」
「お久しぶりです」
「あいつがレイか。確かに強いな」
地下5000階に着くとテーブルでのんびりと日光浴しているルシーたちが居た!
見慣れない男が居るが、そんなの関係ない!
「ルシー! 仲直りしよう!」
ルシーの前まで走ると頭を下げる!
「は?」
訳が分からないと目を細めるルシーに頭を下げ続ける!
「ほらね、俺たちは長い付き合いだ。もう友達と言ってもいい! だからそろそろ、今までのことは水に流して、ゆっくりと友情を語り合うべきだ!」
「命乞いしてる訳ね」
ルシーがため息を吐く。
「あのね、君は好きだけど、ここでは敵同士なの。分かるでしょ?」
「だから仲直りしようって言ってんだよ!」
「何で逆切れされないといけないの?」
「分かった! 確かにお前に理がある! だけどこの風景を見てみろ。気持ちの良い風に美味い空気、燦燦と宝石よりも眩しい太陽! ここで戦うってのは罪だろ! だからここで戦うのは止めよう! 次の階層で戦おう! な!」
ルシーはじっとこちらを見る。
「何でそんなに苦戦しているの? レイの実力なら楽勝だろ?」
「いやいや、楽勝な訳無いだろ。不死者やら凶悪な罠がてんこ盛りなのに」
ルシーがアスと男に目を向ける。
「これって……不味いね」
「そうですね……レイの実力でしたら、本来ならすでに地下9999階に到達しても可笑しく無いはずなのですが」
「あの子たちを守っているせいだろうな」
男が地面に倒れてイビキをかくローズたちを見る。
「まあ、良いよ。ここでは戦わない」
「本当か!」
思わずぐっとガッツポーズする!
「予定と全然違ってるからね」
「どうしますか?」
「戦わないなら退散したほうが良いだろう」
男が立ち上がる。凄まじく身長が高く、俺ですら顔を見上げるほどだ。
「さっきから気になっていたが、お前さんは誰?」
「自己紹介がまだだったな。私はベル。この迷宮の化け物たちを管理する者だ」
「おう! よろしく!」
ガッツリと握手をする。敵でも礼儀は守る必要がある。
「じゃあ、帰ろうか」
ルシーが暗黒の扉を作ったので慌てて手を掴んで引き留める!
「少しぐらい俺たちと一緒に居ようぜ!」
「君たちと?」
「長い付き合いだし、一緒に飯でも食おうぜ! もちろん! アスとベルも一緒だ!」
「私もですか!」
「聞いた通り、中々面白い男だな」
アスがビックリした顔になって、ベルはニヤニヤと笑う。
「うーん……少しくらいなら」
「よーし! 話は決まった! じゃあ……少し寝るから、起きたら遊ぼうぜ」
緊張の糸が切れると意識が遠くなった。
「面白い男だ。私たちを全く恐れない」
ベルは椅子に座ると、レイに微笑みかける。
「こういう男だからこそ、ここまで来れたんだろうね。今までの奴らは、最終的には絶望して自殺するか、仲間割れで殺しあうか、不満が爆発して足を引っ張りあって自滅するかだった」
ルシーはパチンと指を鳴らすと、四つベッドを作り出し、レイとローズ、チュリップ、リリーをその上に寝かせる。
「しかし、楽しみです」
アスがそわそわとレイたちを見る。
「何が楽しみなんだ?」
ベルがアスに目を向ける。
「いえ! その……彼らはとても楽しそうに食事をしていました。ですから……一緒に食べたらどんな気持ちになるのか、興味がありまして」
「楽しいさ」
ルシーが笑う。
「退屈してたし、たまには遊ぶか!」
ルシーは高らかに声を出した。
「中央の通路が怪しいな」
階段を下りると三つ又のように通路が分かれる。このうちの中央に下り階段がある。
「巡回法則も分かりましたし、一気に行きますか?」
チュリップの言葉に頷く。
「もう食料が無いし、幸い隠れる小道は沢山ある」
「しかし罠の存在が心配だ」
「意地悪になってきたからね。下り階段だと思ったら偽物だったことも沢山あったし」
リリーとローズは乗り気ではない様子だ。
「気持ちは分かる。だが物資が無くなった以上、急いだほうが良い」
最後の物資である爆竹を取り出す。
「前々から思ってたんだけど、チュリップって何でも作れるな」
火をつけると爆発する魔法の道具を摘まむ。
彼女たちは様々な道具を駆使して地下3000階までたどり着いた。
実力を補って余りある知識と技術だ。
「それを作ったのはローズですよ」
「マジで?」
「うん。乾燥させたマンドラゴラと化け物の油を混ぜると簡単にできるよ」
「知らなかった」
「ここで手に入れた本とかで勉強したから」
「時間があったら一から勉強を教えてくれ」
「分かった」
紐を壁にこすり付けて火をつけると、階段から右方向に投げる。
数瞬後にバチバチと音が鳴ると巡回していた化け物が一気に右方向に流れ込んだ。
「行くぞ!」
一気に中央の通路をかける。
「あった!」
下り階段は素直に見つかった。今回の階層は凄く優しかった。
次が地獄だからかもしれない。
「次は地下5000階だね」
ローズの手を繋いで慎重に階段を下る。
「ああ。ルシーたちが居ればいいんだが」
「多分居るのでは? 1000階ごとに待っているようですから」
「そうなるとまた戦う訳か」
全員がため息を吐く。
「次はどんな敵だろ?」
「地下4000階だと、幽霊騎士に召喚王と巨大ムカデだったな」
「幽霊は攻撃が当たらないし、召喚王は次々と敵を生み出すし、ムカデは頑丈で毒持ち。敵は全部速いし攻撃は痛いしで、戦いたくない相手です」
「次はおそらく、能面侍と影軍団に毒王だろう。地下4000階からここまでで一番厄介な奴らだった」
「嫌だー! 本当に死んじゃうー!」
考えるだけで泣きたくなる。
「こうなったら土下座して、休み時間を貰おう! それしかねえ!」
「お風呂に入りたいですね」
「お菓子食べたい!」
「特訓する時間が欲しい」
全員ヘトヘトだ。
そうやって愚痴っていると地下5000階の出口が見えた。
「この臭い! 森だ! 地下十二階みたいに森があるぞ!」
「うそ!」
急いで階段を下りる!
「太陽だ! 木だ! 土だ! 山だ! 風だ!」
辛気臭い迷宮が一変して楽園に変わった!
「あ、来た」
「お久しぶりです」
「あいつがレイか。確かに強いな」
地下5000階に着くとテーブルでのんびりと日光浴しているルシーたちが居た!
見慣れない男が居るが、そんなの関係ない!
「ルシー! 仲直りしよう!」
ルシーの前まで走ると頭を下げる!
「は?」
訳が分からないと目を細めるルシーに頭を下げ続ける!
「ほらね、俺たちは長い付き合いだ。もう友達と言ってもいい! だからそろそろ、今までのことは水に流して、ゆっくりと友情を語り合うべきだ!」
「命乞いしてる訳ね」
ルシーがため息を吐く。
「あのね、君は好きだけど、ここでは敵同士なの。分かるでしょ?」
「だから仲直りしようって言ってんだよ!」
「何で逆切れされないといけないの?」
「分かった! 確かにお前に理がある! だけどこの風景を見てみろ。気持ちの良い風に美味い空気、燦燦と宝石よりも眩しい太陽! ここで戦うってのは罪だろ! だからここで戦うのは止めよう! 次の階層で戦おう! な!」
ルシーはじっとこちらを見る。
「何でそんなに苦戦しているの? レイの実力なら楽勝だろ?」
「いやいや、楽勝な訳無いだろ。不死者やら凶悪な罠がてんこ盛りなのに」
ルシーがアスと男に目を向ける。
「これって……不味いね」
「そうですね……レイの実力でしたら、本来ならすでに地下9999階に到達しても可笑しく無いはずなのですが」
「あの子たちを守っているせいだろうな」
男が地面に倒れてイビキをかくローズたちを見る。
「まあ、良いよ。ここでは戦わない」
「本当か!」
思わずぐっとガッツポーズする!
「予定と全然違ってるからね」
「どうしますか?」
「戦わないなら退散したほうが良いだろう」
男が立ち上がる。凄まじく身長が高く、俺ですら顔を見上げるほどだ。
「さっきから気になっていたが、お前さんは誰?」
「自己紹介がまだだったな。私はベル。この迷宮の化け物たちを管理する者だ」
「おう! よろしく!」
ガッツリと握手をする。敵でも礼儀は守る必要がある。
「じゃあ、帰ろうか」
ルシーが暗黒の扉を作ったので慌てて手を掴んで引き留める!
「少しぐらい俺たちと一緒に居ようぜ!」
「君たちと?」
「長い付き合いだし、一緒に飯でも食おうぜ! もちろん! アスとベルも一緒だ!」
「私もですか!」
「聞いた通り、中々面白い男だな」
アスがビックリした顔になって、ベルはニヤニヤと笑う。
「うーん……少しくらいなら」
「よーし! 話は決まった! じゃあ……少し寝るから、起きたら遊ぼうぜ」
緊張の糸が切れると意識が遠くなった。
「面白い男だ。私たちを全く恐れない」
ベルは椅子に座ると、レイに微笑みかける。
「こういう男だからこそ、ここまで来れたんだろうね。今までの奴らは、最終的には絶望して自殺するか、仲間割れで殺しあうか、不満が爆発して足を引っ張りあって自滅するかだった」
ルシーはパチンと指を鳴らすと、四つベッドを作り出し、レイとローズ、チュリップ、リリーをその上に寝かせる。
「しかし、楽しみです」
アスがそわそわとレイたちを見る。
「何が楽しみなんだ?」
ベルがアスに目を向ける。
「いえ! その……彼らはとても楽しそうに食事をしていました。ですから……一緒に食べたらどんな気持ちになるのか、興味がありまして」
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