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哀れなるフロアマスターたち(ステータスウィンドウの文字化けとレベルドレイン)
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薄っすらとした夕焼けが沈むころ、地下9002階のフロアマスターは今日も上機嫌に酒を飲んでいた。
「やっぱお前は凄いよ!」
冒険者ギルドの酒場で仲間たちから盛大な拍手を受ける。
両腕には町一番の娼婦が笑顔を振りまいている。
「どうってことは無いさ! 皆の力があればこそだ!」
弾む声は高らかに酒場に響く。
地下9002階のフロアマスターの名前はジュンと言う。
高校二年生の時、不運にもトラックに轢かれて死んでしまった。そこに全王が声をかけた。
「異世界転生だ!」
彼は全王に会うと思った。
そこから彼は転生先の異世界について説明を受けた。
「レベルって概念があるのか」
彼が手に入れたチート能力は成長チートである。
「レベルが上がりやすくなって、さらに誰のステータスも可視化できるスキルがあれば最強だ!」
さらに他者のステータスを盗み見るチートも得た。これにより情報戦では無敵となった。
後は楽であった。レベルが上がりやすくなるためあらゆるスキルが簡単に手に入る。
さらに敵のステータスが見られるため、対策も簡単に立てることができた。
今、彼は冒険者ギルドで最高ランクのSSSランクよりさらに上、SSS+ランクの地位に居る。また敵のステータスを売買する情報屋でもある。
レベル、情報、この二つを武器に、彼は国王と友人になれるほどの実力を得た。
「今日は幻想種の吸血ドラゴンを倒した。どれどれ、皆のレベルは上がったかな?」
彼は小声でほくそ笑むと、仲間のステータスを覗き見る。
「ジンはレベル50か! ここの世界の平均は30だから、十分最強だ! レイナはレベル55か! これなら教皇にもなれる。パトリックはレベル45? 上がってない! さてはサボったな」
仲間のステータスを確認するのは彼の日課だ。最初は好奇心であり、また自分のレベルと比較して優越感を得るためだった。
しかし時が流れると仲間たちの成長を見守る考えになった。
「仲間が強くなるのも嬉しいな」
成長するにつれて、仲間と一緒に居る楽しさを学んだのだ。
「ジュン! 本当にレベル500なの!」
娼婦の一人が興奮気味に話しかける。ジュンは気取った表情で笑う。
「違うよ、今のレベルは510さ!」
「本当? ちょっと見せて!」
ジュンは娼婦のおねだりに応えるため、ステータスを表示する。
「ほんとだ!」
娼婦の驚嘆とともに、ざわめきが酒場に広がる。
----------------------------------
名前:ジュン
レベル:510
HP:153405
MP:201900
スキル:神に選ばれし者,ete
----------------------------------
「見たことも無いスキルがいっぱい!」
ジュンは娼婦たちの声に内心天狗になる。
「前世だと努力しても報われなかった。だけどここは違う! 頑張ればそれだけ強くなれる!」
彼はこの世界が好きになっていた。
そんな順風満帆な彼の元にメッセージが届く。
「ジュン? ステータスウィンドウのメッセージコマンドに受信があるよ?」
「ほんと! ちょっと失礼」
ジュンはステータスを非表示状態にして、メッセージを確認する。
「レイが来た!」
ジュンは人の悪い笑みを浮かべると皆に言う。
「用事ができた。すぐに戻ってくるから」
そして彼は冒険者ギルドから出て、近くの賢者の森に入り、レイを待ち構える。
「さてさて、どれくらい強いのかな? 全王が命令するんだから、そこそこ強いと思うけど」
自分よりは弱い。その言葉は言わなかった。
「レイを倒したら新しいチートが手に入る! 次はどんなチートを手に入れよう!」
待ちきれない様子で独り言を呟きながら、剣を振り回す。彼は暇つぶしをしているだけだが、一般人には猛烈な特訓をしていると思うだろう。一つ振り回すたびに風が舞い上がり、森がざわめく。
そうこうしているうちに、ついにジュンの前にレイたちが現れた。
「お前がレイ?」
「そうだ。お前はフロアマスターで間違いないな?」
「その通りさ」
ジュンは喋りながらひっそりとレイたちのステータスを確認する。
情報は戦闘において一番重要な戦力だと理解しているから。
だが彼は知らない。情報は時に、人の心を砕く最悪の毒であることを!
----------------------------------
名前:''23=-1qd
レベル:n#x46a9;
HP:&kx5h9a;
MP:##y56"";
スキル:""03!bGil;
----------------------------------
「文字化けしてる? 五人とも!」
ジュンは思わず後ずさる。
「何なんだこいつら!」
ステータス画面は絶対だ。誤魔化すことはできない。
ましてや、文字化けなどあり得ない!
「暗殺スキル! 死曲演舞曲」
死曲演舞曲は、魔王さえも瞬殺する音速の暗殺術である。素早い足さばきで幻影を作り出し、背後から心臓を貫く必殺技である。剣は世界三大遺産のエールソード。神の祝福を受けたと言われる剣はすべての物を両断する。
彼は絶対の自信を持って、レイたちの背後を取る。
「何でわざわざ後ろに回り込むんだ?」
だが……何と残酷なことであろう。レイたちはクルリと容易く振り返って、ジュンに首をかしげる。
虚を突かれたのはジュンのほうだった。彼は刺突の構えのまま、呆然とレイたちを見つめる。
「大丈夫か? 顔色が真っ青だぞ?」
レイは困惑した表情で労わるように手を伸ばす。
「来るな!」
ジュンは全身が発する悪寒と破裂寸前の心臓から身を守るために、わき目も振らず背を向けて逃げ出す。
「俺は強い! 俺は強い! 成長チートを貰ったんだ! 誰よりも強くなった!」
ジュンは走りながら気持ちを落ち着けるためにステータスウィンドウを開く。
心が折れそうになった時、彼はいつもステータスウィンドウを開き、自分のレベルを確認する。
順調に上がるレベル、努力が実を結んでいる証拠。
どんなに敵わないと思っても、彼はレベルを確認することで言い聞かせる。
「頑張れば強くなれる! いつか倒せるようになる!」
それが彼の合言葉であり、彼が運営するギルドの合言葉であった。
しかし……ステータスウィンドウを開いた瞬間、彼は絶望とともに足を止める。
----------------------------------
名前:ジュン
レベル:495
HP:150000
MP:195000
スキル:神に選ばれし者,ete
----------------------------------
「……レベルが……下がってる?」
訳が分からない。レベルが下がることはあり得ない。見間違えだ!
そうやって何度もステータスウィンドウを注視するが、突きつけられるのは冷酷な現実であった。
彼は一夜にして、数か月分の努力を失った。
「どうした?」
ジュンはレイに声をかけられて飛び上がる。
さらに開いたままのステータスウィンドウを見て涙を流す。
----------------------------------
名前:ジュン
レベル:450
HP:140500
MP:172040
スキル:神に選ばれし者,ete
----------------------------------
「レベルドレイン……反則技だ……しかも近くに居るだけで発動するなんて……どんなチートだよ……」
ジュンは力なく膝を付く。その間にもレベルは下がり続ける。
ジュンは知らない。レイたちが死闘を演じた地下迷宮には、生命力を吸い取る化け物がゴロゴロ存在する。地下十二階の大陸クモが代表だ。
レイたちはそれに対抗するため、戦闘時は無意識の内に相手の生命力を吸い取るようになった。
生命力とは何か? ジュンが居る世界に例えるならレベルに相当する。
レイたちはゲームに例えるなら、常に相手のレベルを吸い取るスキルを展開しているようなものであった。
レベルという概念に支配された世界で、これほどのチートが存在するであろうか?
「大丈夫か?」
レイはジュンを気遣うように小さい声で話しかける。
「……くだりかいだんはまちのきょうかいにある……さがしてくれ」
ジュンは立ち上がれなかった。絶望と恐怖、無力感、何より、これまで築いた努力が水の泡と化した事実に打ちひしがれていた。
「わ、分かった。あの……元気出せよ?」
レイたちは何が何だか分からないという表情で立ち去った。
残ったのは、白髪になったジュンと、彼のステータスウィンドウだ。
----------------------------------
名前:ジュン
レベル:100
HP:9500
MP:12040
スキル:神に選ばれし者,ete
----------------------------------
まだまだジュンは強い。レベル100などこの世界に居ない。
「ばけものだ……ああああああ!」
だが、再度レベル500を目指すとなると話は違う。
彼は十年かけてレベル500となった。
だからもう一度十年間、レベリングする必要がある。
彼が築き上げた自信は、一夜にして蜃気楼のように消え去った。
「やっぱお前は凄いよ!」
冒険者ギルドの酒場で仲間たちから盛大な拍手を受ける。
両腕には町一番の娼婦が笑顔を振りまいている。
「どうってことは無いさ! 皆の力があればこそだ!」
弾む声は高らかに酒場に響く。
地下9002階のフロアマスターの名前はジュンと言う。
高校二年生の時、不運にもトラックに轢かれて死んでしまった。そこに全王が声をかけた。
「異世界転生だ!」
彼は全王に会うと思った。
そこから彼は転生先の異世界について説明を受けた。
「レベルって概念があるのか」
彼が手に入れたチート能力は成長チートである。
「レベルが上がりやすくなって、さらに誰のステータスも可視化できるスキルがあれば最強だ!」
さらに他者のステータスを盗み見るチートも得た。これにより情報戦では無敵となった。
後は楽であった。レベルが上がりやすくなるためあらゆるスキルが簡単に手に入る。
さらに敵のステータスが見られるため、対策も簡単に立てることができた。
今、彼は冒険者ギルドで最高ランクのSSSランクよりさらに上、SSS+ランクの地位に居る。また敵のステータスを売買する情報屋でもある。
レベル、情報、この二つを武器に、彼は国王と友人になれるほどの実力を得た。
「今日は幻想種の吸血ドラゴンを倒した。どれどれ、皆のレベルは上がったかな?」
彼は小声でほくそ笑むと、仲間のステータスを覗き見る。
「ジンはレベル50か! ここの世界の平均は30だから、十分最強だ! レイナはレベル55か! これなら教皇にもなれる。パトリックはレベル45? 上がってない! さてはサボったな」
仲間のステータスを確認するのは彼の日課だ。最初は好奇心であり、また自分のレベルと比較して優越感を得るためだった。
しかし時が流れると仲間たちの成長を見守る考えになった。
「仲間が強くなるのも嬉しいな」
成長するにつれて、仲間と一緒に居る楽しさを学んだのだ。
「ジュン! 本当にレベル500なの!」
娼婦の一人が興奮気味に話しかける。ジュンは気取った表情で笑う。
「違うよ、今のレベルは510さ!」
「本当? ちょっと見せて!」
ジュンは娼婦のおねだりに応えるため、ステータスを表示する。
「ほんとだ!」
娼婦の驚嘆とともに、ざわめきが酒場に広がる。
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名前:ジュン
レベル:510
HP:153405
MP:201900
スキル:神に選ばれし者,ete
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「見たことも無いスキルがいっぱい!」
ジュンは娼婦たちの声に内心天狗になる。
「前世だと努力しても報われなかった。だけどここは違う! 頑張ればそれだけ強くなれる!」
彼はこの世界が好きになっていた。
そんな順風満帆な彼の元にメッセージが届く。
「ジュン? ステータスウィンドウのメッセージコマンドに受信があるよ?」
「ほんと! ちょっと失礼」
ジュンはステータスを非表示状態にして、メッセージを確認する。
「レイが来た!」
ジュンは人の悪い笑みを浮かべると皆に言う。
「用事ができた。すぐに戻ってくるから」
そして彼は冒険者ギルドから出て、近くの賢者の森に入り、レイを待ち構える。
「さてさて、どれくらい強いのかな? 全王が命令するんだから、そこそこ強いと思うけど」
自分よりは弱い。その言葉は言わなかった。
「レイを倒したら新しいチートが手に入る! 次はどんなチートを手に入れよう!」
待ちきれない様子で独り言を呟きながら、剣を振り回す。彼は暇つぶしをしているだけだが、一般人には猛烈な特訓をしていると思うだろう。一つ振り回すたびに風が舞い上がり、森がざわめく。
そうこうしているうちに、ついにジュンの前にレイたちが現れた。
「お前がレイ?」
「そうだ。お前はフロアマスターで間違いないな?」
「その通りさ」
ジュンは喋りながらひっそりとレイたちのステータスを確認する。
情報は戦闘において一番重要な戦力だと理解しているから。
だが彼は知らない。情報は時に、人の心を砕く最悪の毒であることを!
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名前:''23=-1qd
レベル:n#x46a9;
HP:&kx5h9a;
MP:##y56"";
スキル:""03!bGil;
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「文字化けしてる? 五人とも!」
ジュンは思わず後ずさる。
「何なんだこいつら!」
ステータス画面は絶対だ。誤魔化すことはできない。
ましてや、文字化けなどあり得ない!
「暗殺スキル! 死曲演舞曲」
死曲演舞曲は、魔王さえも瞬殺する音速の暗殺術である。素早い足さばきで幻影を作り出し、背後から心臓を貫く必殺技である。剣は世界三大遺産のエールソード。神の祝福を受けたと言われる剣はすべての物を両断する。
彼は絶対の自信を持って、レイたちの背後を取る。
「何でわざわざ後ろに回り込むんだ?」
だが……何と残酷なことであろう。レイたちはクルリと容易く振り返って、ジュンに首をかしげる。
虚を突かれたのはジュンのほうだった。彼は刺突の構えのまま、呆然とレイたちを見つめる。
「大丈夫か? 顔色が真っ青だぞ?」
レイは困惑した表情で労わるように手を伸ばす。
「来るな!」
ジュンは全身が発する悪寒と破裂寸前の心臓から身を守るために、わき目も振らず背を向けて逃げ出す。
「俺は強い! 俺は強い! 成長チートを貰ったんだ! 誰よりも強くなった!」
ジュンは走りながら気持ちを落ち着けるためにステータスウィンドウを開く。
心が折れそうになった時、彼はいつもステータスウィンドウを開き、自分のレベルを確認する。
順調に上がるレベル、努力が実を結んでいる証拠。
どんなに敵わないと思っても、彼はレベルを確認することで言い聞かせる。
「頑張れば強くなれる! いつか倒せるようになる!」
それが彼の合言葉であり、彼が運営するギルドの合言葉であった。
しかし……ステータスウィンドウを開いた瞬間、彼は絶望とともに足を止める。
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名前:ジュン
レベル:495
HP:150000
MP:195000
スキル:神に選ばれし者,ete
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「……レベルが……下がってる?」
訳が分からない。レベルが下がることはあり得ない。見間違えだ!
そうやって何度もステータスウィンドウを注視するが、突きつけられるのは冷酷な現実であった。
彼は一夜にして、数か月分の努力を失った。
「どうした?」
ジュンはレイに声をかけられて飛び上がる。
さらに開いたままのステータスウィンドウを見て涙を流す。
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名前:ジュン
レベル:450
HP:140500
MP:172040
スキル:神に選ばれし者,ete
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「レベルドレイン……反則技だ……しかも近くに居るだけで発動するなんて……どんなチートだよ……」
ジュンは力なく膝を付く。その間にもレベルは下がり続ける。
ジュンは知らない。レイたちが死闘を演じた地下迷宮には、生命力を吸い取る化け物がゴロゴロ存在する。地下十二階の大陸クモが代表だ。
レイたちはそれに対抗するため、戦闘時は無意識の内に相手の生命力を吸い取るようになった。
生命力とは何か? ジュンが居る世界に例えるならレベルに相当する。
レイたちはゲームに例えるなら、常に相手のレベルを吸い取るスキルを展開しているようなものであった。
レベルという概念に支配された世界で、これほどのチートが存在するであろうか?
「大丈夫か?」
レイはジュンを気遣うように小さい声で話しかける。
「……くだりかいだんはまちのきょうかいにある……さがしてくれ」
ジュンは立ち上がれなかった。絶望と恐怖、無力感、何より、これまで築いた努力が水の泡と化した事実に打ちひしがれていた。
「わ、分かった。あの……元気出せよ?」
レイたちは何が何だか分からないという表情で立ち去った。
残ったのは、白髪になったジュンと、彼のステータスウィンドウだ。
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名前:ジュン
レベル:100
HP:9500
MP:12040
スキル:神に選ばれし者,ete
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まだまだジュンは強い。レベル100などこの世界に居ない。
「ばけものだ……ああああああ!」
だが、再度レベル500を目指すとなると話は違う。
彼は十年かけてレベル500となった。
だからもう一度十年間、レベリングする必要がある。
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