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タケルと決着
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歩みを進めるにつれて銃撃が激しくなる。
「そろそろ、反撃するか」
マリアの頭を撫でる。
「もしかしたらタケルが回り込んでくるかもしれない。怖くても絶対に俺から離れるな」
「分かった」
マリアは力強く微笑む
「まずは兵士の数を減らすか」
石を拾い、ぶん投げる。ごちゃごちゃと物陰に隠れる兵士が倒れる。
「ストライク! 世界狙えるわ!」
マリアがキャッキャッと後ろで喜ぶ。
「もの投げは迷宮攻略の基礎だ」
少しだけ鼻が高くなるが、気持ちを抑える。
必ずタケルが何かしてくるはずだ。
「おうおう。1000メートル以上離れたところから投擲でフル装備の兵士の骨を粉砕するか。さすが地下9300階まで来ることはある。魔法を使わなくても、一個師団じゃ敵わないな」
タケルは指令室の窓で様子を見ながら舌なめずりする。
「そしてリリーたちも化け物。一人一人が一個師団を打ち倒せる実力がある」
タケルは目を閉じて気配からリリーたちの様子を眺める。
「ふんふん。毒虫が体を這っていても微動だにしない。気配の消し方も一級品。並みの兵士じゃ見つけることもできない。映画のプレデターかよ」
煙草を取り出して胸いっぱいに煙を吹かす。
「俺が出向いてリリーたちを一人ずつ始末するか? それは興ざめだ。四人がかりで初めて楽しめる。なら兵士を送るか? どうせ役に立たないし、俺が気づいていると感づいて逃げる。それも面白くない。となると、やはりこうなるな」
拡声器を片手にニヤニヤと笑う。
「総員、マリアたちに突撃しろ! 殺せ!」
拡声器の指示で兵士たちがレイたちに集中する。
「それにしても、マリアを連れて来るか。邪魔なだけだろうに」
再度煙草に口を付けると、火が根元に来るまで一気に煙を吸い込む。
「リリーたちが動いたか。さて、俺を見つけることができるかな?」
目論見通り兵士たちが向かってきた! 後はリリーたちがタケルをぶっ飛ばすだけだ!
「あいつら、レイが怖くないの?」
マリアが横で兵士たちに不審な目を向ける。
「何か気になることが?」
「だって、レイの実力を見れば敵わないって分かるでしょ? なのに突っ込むなんて狂気の沙汰よ」
「兵士だから倒しに来るのは当然じゃないか?」
「そう言われるとそうなんだけど……リリーたちが居ないことを気にしてないのも変だし」
マリアの不安に当てられたのか、背筋に虫が這いまわるような嫌な予感に震える。
だが計算通りに事は進んでいる。ならば引き返すのは可笑しい。
「心配するな! あいつらは強いし、俺だって強い! 必ずお前を守る!」
不安を紛らわせるためにマリアをギュッと抱き寄せる。温かい感触で気持ちが落ち着く。
「分かった」
マリアは顔のしわを解して微笑む。
「良し。じゃ、俺はあいつらを片づける! 何かあったらすぐに叫べ!」
地面を蹴って兵士に突っ込む!
兵士たちの一斉射撃を円を描くように走って避ける。そしてじりじりと間合いを詰める。
兵士たちが弾を込めるために止まる! 今だ!
「行くぜ!」
一気に間合いを詰めて兵士たちの腕や足をへし折り、戦闘不能にさせる!
兵士たちは突然の接近に対処できず、ナイフを振り回す。
「遅い! 欠伸が出るぜ!」
レイが兵士たちに大立ち回りをやっている頃、リリーは拠点に残る兵士を切り伏せながらタケルを探す。
「どこに居るんだ?」
リリーは華麗なる剣技で兵士たちを暗殺する。兵士たちは声を上げる間もなく死んでいく。
「あそこか?」
リリーは指令室を見つけると迷いなく切り込む。
「リリー!」
別働隊のチュリップ、ローズと合流する。
「タケルはどこ?」
「お前たちも見つけていないのか」
リリーは脳や骨、肉片がこびりつく指令室を見渡す。
「兵士の一人を生かして尋問しましたが、タケルの居場所は知らないようです」
チュリップはメイスに付着する血濡れの髪の毛を拭う。
「そうか……他に何か分かることは無いか?」
「タケルが居たのは間違いないよ。ほら、煙草の吸殻がある」
ローズは机の上にある血が溜まる灰皿を指さす。
「しかし、逃げた可能性はあるか」
リリーは難しい顔で指令室の窓の外を見る。
「レイは順調だ。あの様子ならもう少しで合流できる」
「ならば後方から私たちも参戦しましょう。予定が狂っているからには、合流を急いだほうが良いです」
チュリップは血の付いたハンカチを床に投げ捨てる。
「確かに。タケルが居ないのなら、すぐに逃げたほうが良い」
リリーたちは指令室を飛び出ると、タケルに向かう兵士たちを後方から襲う。
「切り捨てる!」
「あっけないな」
レイは倒れ、呻く兵士たちの前で呟く。
「あんたたちが化け物なだけだと思うけど」
マリアは呆れるように兵士たちを見渡す。
「なぜタケルは軍隊と一緒に戦わなかった? これじゃ無駄死にだ」
「あんたに勝てないって悟ったから、逃げるための捨て駒でしょ」
「そんな腰抜けなら俺たちは苦労しないさ」
レイがため息を吐くと、顔面から血を流す兵士がよろよろと立ち上がる。
兵士は震える腕でナイフを抜くと、おぼつかない足取りでマリアに向かう。
「おい! もう動くな!」
レイはリリーたちに殺すなとサインを送って兵士に駆け寄る。
「もう動くな。死ぬぞ」
レイは兵士の腕を掴み、ナイフを奪う。
「油断するなよ」
兵士は薄く笑うとレイの腕をねじり上げる!
「なに!」
レイが腕を抑えてもがく間に、強烈な蹴りを脇腹に叩き込む!
バキンと鈍い音が鳴ると血が口から噴水のように飛び出る。
「タケル!」
リリーたちが一斉に武器を振り上げてタケルに突っ込む。
「お前さんたちの弱点は、レイに何かあると取り乱すことだ」
タケルは目にも止まらぬ動きでリリーたちと間合いを詰めると、リリーたちの喉と目を潰す。
リリーたちは顔面を抑えながら膝を付いた。
「俺の勝ちだ。あっけない物だ!」
タケルは顔にかぶった兵士の生皮を脱いで、倒れるレイたちを口が裂けるかと思われるほどあざ笑うと、マリアに顔を向ける。
「どうした? 逃げないのか?」
マリアはガタガタと腰を抜かしたまま動かない。蛇に睨まれた蛙だ。
「レイ! どうした! マリアが死ぬぜ! 守るんじゃなかったのか!」
レイは血を吐いた状態でタケルを睨む。
タケルは無表情になると、レイに唾を吐く。
「何だ……こんなものか? 詰まらねえ」
頭を何度か、死なない程度に踏みつける。屈辱に歪む顔を見て鼻で笑う。
「魔法抜きだとこんなものか。拍子抜けだが、仕方ない。活を入れてやるか」
レイから目を外すとマリアに狙いを定める。
「マリアを目の前でなぶり殺しにされれば、少しは気合が戻るだろ」
マリアが目を瞑った瞬間、タケルは風のようになだらかな動きでマリアの腕をねじり上げる。
「こ、殺さないで! お金なら上げるから!」
マリアは泣きながら腕をタケルに懇願する。
「あ、あなたはレイを殺せばいいんでしょ! 私はレイの仲間じゃない! そうよ! あなたの仲間よ!」
タケルの目が細くなる。マリアは続ける。
「わ、私! あなたって素敵だと思うの! 一目惚れ! 付き合いましょう! 私、とってもエッチだから! ほら! 良い体でしょ! あなたに上げるわ!」
「黙れ!」
バキンとマリアの肩がねじり切れる。
「ああああああああ!」
マリアは泡を吹いてのたうち回る。
「こ、ころさないで……おねがいします……」
「うるせえ女だ!」
タケルの靴底がマリアの指をへし折る。
「ああああああああ!」
マリアは喚き散らしながらタケルから逃げる。
タケルの口元に冷笑が浮かぶ。
「楽しくなってきた!」
タケルはマリアの髪を掴むと、何度も何度も腹を殴る。鈍い音とともにマリアが血を吐く。
「お、お、ね、がい……た、すけ、で」
「は! 誰が助けるか! お前はもうなぶり殺しだ!」
「調子に乗ってんじゃねえよ!」
レイの拳がタケルのこめかみにゴキリとぶつかる!
「が! は! な、なに!」
タケルはマリアの髪を手から零すと、こめかみを押さえながら後ずさる。
「き、きずがなっている? そうか……まほうをつかったか!」
「お前の負けだ!」
レイはタケルの顔面に鉄拳を叩き込む。タケルは地面に頭をめり込ませると、ぴくぴくと体を痙攣させて、動かなくなった。
「マリア! すぐに治す! だからしっかりしろ!」
レイはマリアの体を抱きしめる。するとマリアの顔に生気が戻る。
「上手くいったでしょ」
マリアはニコニコ微笑みながらVサインする。
「ああ! お前の作戦通りだ!」
渓谷の行き止まりへ突撃する前に、マリアはこんな作戦を提案した。
「タケルが現れたら、皆はやられたふりをして。そしたらタケルは私を虐めに来る。私はタケルが苛立つように命乞いするから、その間に倒して」
「そんな作戦上手くいくのか?」
「大丈夫大丈夫! あいつはサディストで、楽しいことには夢中になって周りが見えなくなるタイプ! 絶対に上手く行く!」
マリアの作戦は不安だった。だから俺たちは全力で挑んだ。しかし、返り討ちとなった。
タケルは想像以上に強かった。
マリアの体を張った誘導作戦が無ければ死んでいた。
「魔法、一瞬だけ使えるようにしたんだ」
マリアは気絶するタケルを見下ろす。
「ああ。タケルがお前に夢中になった隙に、魔法が使えるようにして傷を治した。そしてまた魔法を封じた」
「やるー!」
マリアがギュッと抱き着いてきたので、抱きしめ返す。
「レイ、タケルはどうする」
リリーが鋭い目で問いかける。
「下り階段はタケルしか作れないから、殺すわけにはいかない。両腕を切断するだけにしよう」
「両腕の切断? 良いのか」
「こいつは素手なら俺たちよりはるかに強いし、何よりマリアを虐めた!」
「分かった」
リリーがタケルの両腕を切り落とし、マリアが止血する。
「これで、目の前の脅威は去った」
これで一息つけるが、まだまだやることはある。
「まずはタケルを説得するか」
迷宮を進むためにはこの馬鹿野郎の案内が必要だ。
こいつの性格からして、脅しは効かない。ならば説得し、仲間にする必要がある。
「よく考えると、何で俺の周りには癖の強い奴しか居ないんだ?」
ぐりぐりと抱き着いて離れないマリアに殺意の目を向けるローズたち。
タケルの脅威が去ったらこれか!
「そろそろ、反撃するか」
マリアの頭を撫でる。
「もしかしたらタケルが回り込んでくるかもしれない。怖くても絶対に俺から離れるな」
「分かった」
マリアは力強く微笑む
「まずは兵士の数を減らすか」
石を拾い、ぶん投げる。ごちゃごちゃと物陰に隠れる兵士が倒れる。
「ストライク! 世界狙えるわ!」
マリアがキャッキャッと後ろで喜ぶ。
「もの投げは迷宮攻略の基礎だ」
少しだけ鼻が高くなるが、気持ちを抑える。
必ずタケルが何かしてくるはずだ。
「おうおう。1000メートル以上離れたところから投擲でフル装備の兵士の骨を粉砕するか。さすが地下9300階まで来ることはある。魔法を使わなくても、一個師団じゃ敵わないな」
タケルは指令室の窓で様子を見ながら舌なめずりする。
「そしてリリーたちも化け物。一人一人が一個師団を打ち倒せる実力がある」
タケルは目を閉じて気配からリリーたちの様子を眺める。
「ふんふん。毒虫が体を這っていても微動だにしない。気配の消し方も一級品。並みの兵士じゃ見つけることもできない。映画のプレデターかよ」
煙草を取り出して胸いっぱいに煙を吹かす。
「俺が出向いてリリーたちを一人ずつ始末するか? それは興ざめだ。四人がかりで初めて楽しめる。なら兵士を送るか? どうせ役に立たないし、俺が気づいていると感づいて逃げる。それも面白くない。となると、やはりこうなるな」
拡声器を片手にニヤニヤと笑う。
「総員、マリアたちに突撃しろ! 殺せ!」
拡声器の指示で兵士たちがレイたちに集中する。
「それにしても、マリアを連れて来るか。邪魔なだけだろうに」
再度煙草に口を付けると、火が根元に来るまで一気に煙を吸い込む。
「リリーたちが動いたか。さて、俺を見つけることができるかな?」
目論見通り兵士たちが向かってきた! 後はリリーたちがタケルをぶっ飛ばすだけだ!
「あいつら、レイが怖くないの?」
マリアが横で兵士たちに不審な目を向ける。
「何か気になることが?」
「だって、レイの実力を見れば敵わないって分かるでしょ? なのに突っ込むなんて狂気の沙汰よ」
「兵士だから倒しに来るのは当然じゃないか?」
「そう言われるとそうなんだけど……リリーたちが居ないことを気にしてないのも変だし」
マリアの不安に当てられたのか、背筋に虫が這いまわるような嫌な予感に震える。
だが計算通りに事は進んでいる。ならば引き返すのは可笑しい。
「心配するな! あいつらは強いし、俺だって強い! 必ずお前を守る!」
不安を紛らわせるためにマリアをギュッと抱き寄せる。温かい感触で気持ちが落ち着く。
「分かった」
マリアは顔のしわを解して微笑む。
「良し。じゃ、俺はあいつらを片づける! 何かあったらすぐに叫べ!」
地面を蹴って兵士に突っ込む!
兵士たちの一斉射撃を円を描くように走って避ける。そしてじりじりと間合いを詰める。
兵士たちが弾を込めるために止まる! 今だ!
「行くぜ!」
一気に間合いを詰めて兵士たちの腕や足をへし折り、戦闘不能にさせる!
兵士たちは突然の接近に対処できず、ナイフを振り回す。
「遅い! 欠伸が出るぜ!」
レイが兵士たちに大立ち回りをやっている頃、リリーは拠点に残る兵士を切り伏せながらタケルを探す。
「どこに居るんだ?」
リリーは華麗なる剣技で兵士たちを暗殺する。兵士たちは声を上げる間もなく死んでいく。
「あそこか?」
リリーは指令室を見つけると迷いなく切り込む。
「リリー!」
別働隊のチュリップ、ローズと合流する。
「タケルはどこ?」
「お前たちも見つけていないのか」
リリーは脳や骨、肉片がこびりつく指令室を見渡す。
「兵士の一人を生かして尋問しましたが、タケルの居場所は知らないようです」
チュリップはメイスに付着する血濡れの髪の毛を拭う。
「そうか……他に何か分かることは無いか?」
「タケルが居たのは間違いないよ。ほら、煙草の吸殻がある」
ローズは机の上にある血が溜まる灰皿を指さす。
「しかし、逃げた可能性はあるか」
リリーは難しい顔で指令室の窓の外を見る。
「レイは順調だ。あの様子ならもう少しで合流できる」
「ならば後方から私たちも参戦しましょう。予定が狂っているからには、合流を急いだほうが良いです」
チュリップは血の付いたハンカチを床に投げ捨てる。
「確かに。タケルが居ないのなら、すぐに逃げたほうが良い」
リリーたちは指令室を飛び出ると、タケルに向かう兵士たちを後方から襲う。
「切り捨てる!」
「あっけないな」
レイは倒れ、呻く兵士たちの前で呟く。
「あんたたちが化け物なだけだと思うけど」
マリアは呆れるように兵士たちを見渡す。
「なぜタケルは軍隊と一緒に戦わなかった? これじゃ無駄死にだ」
「あんたに勝てないって悟ったから、逃げるための捨て駒でしょ」
「そんな腰抜けなら俺たちは苦労しないさ」
レイがため息を吐くと、顔面から血を流す兵士がよろよろと立ち上がる。
兵士は震える腕でナイフを抜くと、おぼつかない足取りでマリアに向かう。
「おい! もう動くな!」
レイはリリーたちに殺すなとサインを送って兵士に駆け寄る。
「もう動くな。死ぬぞ」
レイは兵士の腕を掴み、ナイフを奪う。
「油断するなよ」
兵士は薄く笑うとレイの腕をねじり上げる!
「なに!」
レイが腕を抑えてもがく間に、強烈な蹴りを脇腹に叩き込む!
バキンと鈍い音が鳴ると血が口から噴水のように飛び出る。
「タケル!」
リリーたちが一斉に武器を振り上げてタケルに突っ込む。
「お前さんたちの弱点は、レイに何かあると取り乱すことだ」
タケルは目にも止まらぬ動きでリリーたちと間合いを詰めると、リリーたちの喉と目を潰す。
リリーたちは顔面を抑えながら膝を付いた。
「俺の勝ちだ。あっけない物だ!」
タケルは顔にかぶった兵士の生皮を脱いで、倒れるレイたちを口が裂けるかと思われるほどあざ笑うと、マリアに顔を向ける。
「どうした? 逃げないのか?」
マリアはガタガタと腰を抜かしたまま動かない。蛇に睨まれた蛙だ。
「レイ! どうした! マリアが死ぬぜ! 守るんじゃなかったのか!」
レイは血を吐いた状態でタケルを睨む。
タケルは無表情になると、レイに唾を吐く。
「何だ……こんなものか? 詰まらねえ」
頭を何度か、死なない程度に踏みつける。屈辱に歪む顔を見て鼻で笑う。
「魔法抜きだとこんなものか。拍子抜けだが、仕方ない。活を入れてやるか」
レイから目を外すとマリアに狙いを定める。
「マリアを目の前でなぶり殺しにされれば、少しは気合が戻るだろ」
マリアが目を瞑った瞬間、タケルは風のようになだらかな動きでマリアの腕をねじり上げる。
「こ、殺さないで! お金なら上げるから!」
マリアは泣きながら腕をタケルに懇願する。
「あ、あなたはレイを殺せばいいんでしょ! 私はレイの仲間じゃない! そうよ! あなたの仲間よ!」
タケルの目が細くなる。マリアは続ける。
「わ、私! あなたって素敵だと思うの! 一目惚れ! 付き合いましょう! 私、とってもエッチだから! ほら! 良い体でしょ! あなたに上げるわ!」
「黙れ!」
バキンとマリアの肩がねじり切れる。
「ああああああああ!」
マリアは泡を吹いてのたうち回る。
「こ、ころさないで……おねがいします……」
「うるせえ女だ!」
タケルの靴底がマリアの指をへし折る。
「ああああああああ!」
マリアは喚き散らしながらタケルから逃げる。
タケルの口元に冷笑が浮かぶ。
「楽しくなってきた!」
タケルはマリアの髪を掴むと、何度も何度も腹を殴る。鈍い音とともにマリアが血を吐く。
「お、お、ね、がい……た、すけ、で」
「は! 誰が助けるか! お前はもうなぶり殺しだ!」
「調子に乗ってんじゃねえよ!」
レイの拳がタケルのこめかみにゴキリとぶつかる!
「が! は! な、なに!」
タケルはマリアの髪を手から零すと、こめかみを押さえながら後ずさる。
「き、きずがなっている? そうか……まほうをつかったか!」
「お前の負けだ!」
レイはタケルの顔面に鉄拳を叩き込む。タケルは地面に頭をめり込ませると、ぴくぴくと体を痙攣させて、動かなくなった。
「マリア! すぐに治す! だからしっかりしろ!」
レイはマリアの体を抱きしめる。するとマリアの顔に生気が戻る。
「上手くいったでしょ」
マリアはニコニコ微笑みながらVサインする。
「ああ! お前の作戦通りだ!」
渓谷の行き止まりへ突撃する前に、マリアはこんな作戦を提案した。
「タケルが現れたら、皆はやられたふりをして。そしたらタケルは私を虐めに来る。私はタケルが苛立つように命乞いするから、その間に倒して」
「そんな作戦上手くいくのか?」
「大丈夫大丈夫! あいつはサディストで、楽しいことには夢中になって周りが見えなくなるタイプ! 絶対に上手く行く!」
マリアの作戦は不安だった。だから俺たちは全力で挑んだ。しかし、返り討ちとなった。
タケルは想像以上に強かった。
マリアの体を張った誘導作戦が無ければ死んでいた。
「魔法、一瞬だけ使えるようにしたんだ」
マリアは気絶するタケルを見下ろす。
「ああ。タケルがお前に夢中になった隙に、魔法が使えるようにして傷を治した。そしてまた魔法を封じた」
「やるー!」
マリアがギュッと抱き着いてきたので、抱きしめ返す。
「レイ、タケルはどうする」
リリーが鋭い目で問いかける。
「下り階段はタケルしか作れないから、殺すわけにはいかない。両腕を切断するだけにしよう」
「両腕の切断? 良いのか」
「こいつは素手なら俺たちよりはるかに強いし、何よりマリアを虐めた!」
「分かった」
リリーがタケルの両腕を切り落とし、マリアが止血する。
「これで、目の前の脅威は去った」
これで一息つけるが、まだまだやることはある。
「まずはタケルを説得するか」
迷宮を進むためにはこの馬鹿野郎の案内が必要だ。
こいつの性格からして、脅しは効かない。ならば説得し、仲間にする必要がある。
「よく考えると、何で俺の周りには癖の強い奴しか居ないんだ?」
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