迷宮サバイバル! 地下9999階まで生き残れ!

ねこねこ大好き

文字の大きさ
72 / 78

地下9999階

しおりを挟む
 レイたちはついに目的地である地下9999階にたどり着いた。

 そこは炎はおろか魂さえも凍らせる永久凍結の世界だった!

 足を動かすことすら一苦労するほどの寒さ。骨や肉が凍り付き、目を瞑れば永久の眠りへ迷い込むほどの辛さ。
 
 数多の困難を乗り越えたレイたちですらも震える世界で一人、全王は笑う。

「どうした? 威勢が良いと思ったが気のせいか?」
 氷すらも凍り付く白い肌に付いたあざを撫でる。あざは触れると一瞬にして消え去る。

「うるせえ!」
 ガチガチと歯を鳴らしながら殴りかかる。
 重心をずらして避けたところで、レイの後ろに居たリリーの斬撃が全王の喉に当たる。

「く!」
 リリーの魔法剣は全王の肌で止まっていた。
 しかしチュリップのメイスが全王の後頭部に直撃する。

「欠伸をしても良いかね?」
 全王はよろめきもせず、血の一滴も流さないでチュリップに振り返る。

「空間魔法! ギガブラックホール!」
 ローズの魔法で全王は暗黒に包まれる。

「ルシーの技が俺に通用すると思ったのか?」
 全王は何事もなく暗黒から歩み出る。

「この野郎!」
 レイの打撃が全王の顎を捉える。その時、全王の足が揺れる。
 しかし追撃をしようと拳を固めなおした瞬間、全王と目が合うと脱兎のごとく距離を取る。

「レイの攻撃は効いてしまうな。嬉しいことだ」
 全王は不敵な笑みをレイに向ける。

「化け物が!」
 レイは凍り付く肌を震わせる。

 全王は一度も攻撃していない。
 それなのに四人は疲労困憊であった。

「そろそろ、攻撃させてもらおう」
 レイは胸に迫る全王の拳を受け止める。鈍い音が響き渡り吐血するが、全王の拳は胸を貫かなかった。

「お、お前ら……」
 しかしローズ、チュリップ、リリーは違った。
 三人は胸に大穴を開けて倒れた。

「良くぞ俺の攻撃を受け止めた。褒めてやろう」
 全王が鼻で笑いながら腕を引くとレイは倒れる。
 レイは歯を食いしばりながら体を引きずって、ローズたちの様子を見る。

「……ローズ? チュリップ? リリー?」
 ローズたちの体を揺するが、ローズたちはピクリともしない。

「あっけないものだ」
 全王はあざ笑う。

「しかしこの結果は当然。元々三人は俺と戦えるレベルではなかった。シロアリはいくら強くなってもシロアリなのだ」
「殺してやる!」
 レイは一瞬で傷を治すと全王の顔面に蹴りを叩き込む!
 全王が膝を付いた!

「見事だ!」
 全王は立ち上がると恐るべき連撃を放つ。
 レイはそれを瞬きせず捌く!
 そして刹那の隙を見逃さずにカウンターを叩き込む!

「強いな!」
 全王は初めて飛びのく! レイはそれを追って反撃の拳を放ち続ける!

「本気を出そう!」
 全王が足を止めると殴り合いが始まる!



 どれくらい殴ったのか分からない。どれくらい殴られたのか分からない。
 ただ必死だった。
 目の前の憎き全王を殺すことで頭はいっぱいだった。

「ぐ!」
 全王の横っ面に拳を叩き込むと疲労で膝が崩れる。
 全王も膝を付く。

「見事だ。ついにこの絶対凍結空間を克服するとは」
 全王は息を整えながら立ち上がる。

「絶対凍結空間?」
「封印術の一種だ。この空間で動けるのは、俺の力を受けた存在か、俺に匹敵する力を持つ存在だけだ」
 チラリと手先を見る。あれほど纏わりついていた霜が無い。

「全く、ついに俺も絶体絶命のピンチという奴だ」
 全王は言葉とは裏腹に笑みを浮かべている。

「こうなると、助っ人を呼び出すしかあるまい」
 ギリギリとローズたちの体が動く! あいつらは死んだはずなのに!

「て、てめえ! この野郎! クソ野郎! やりやがったな!」
 全王の奴! ローズたちを生き返らせた! 先ほどローズたちが蘇生できなかった理由は全王が魂を奪ったためだ!

「何という恐ろしい顔だ。こうなるとローズたちでは足りないな」
 全王の影から人影が無数に現れる!

 まさか!

「レイ? ……そんな!」
 ローズの泣き顔が! チュリップの苦悶に満ちた表情が! リリーの屈辱に満ちた表情が!

「……どこまでも僕たちは、全王のおもちゃだ!」
 歯を食いしばるルシーが! 全王に憎しみの目を向けるベルが! 拳を震わせるアスが!

「趣味が悪い!」
 血が出るほど唇を噛むタケルが! 絶望に顔を染めるマリアが!

「な、何でまた?」
 体を震わせるフロアマスターたちが!

 俺の敵となって蘇った!

「さ、レイと戦え。そして死ね!」
「くそったれ!」
 ローズの魔法を! リリーの剣を! チュリップのメイスを避ける!

「止めろ! 一対一で戦え!」
「何を言う? 複数で襲い掛かるのは戦術の基本だ。シロアリでも大軍になれば足止めくらいできる」
 全王は笑う! その間にも皆が襲ってくる!

「ローズ! チュリップ! リリー! 止めろ!」

「ごめんなさい!」
「殺してください! 早く!」
「殺せ! レイを傷つけたくない!」
 ローズたちは涙を流すが攻撃を止めない!

 全王に支配されてしまった!

「畜生! 畜生!」
 攻撃なんてできない! ローズたちはもちろん、ルシーやタケルも!

 だって! 俺よりも明らかに弱い!
 攻撃なんて痛くもかゆくもない!

 ただ邪魔なだけだ! 戦力の一つにもならない!

「全王! ルシーたちを蘇らせるならフルパワーにしろ!」
 全員の攻撃を体で受け止めて叫ぶ!
 全王はふざけた笑みを崩さない!

「フルパワーで蘇らせた。お前が傷つかないのは単純に、そいつらがシロアリなだけだ。おめでとう。お前は確かに強くなった!」
「ふざけやがって!」
 ローズたちの間をすり抜けて全王に迫る!

「危ない危ない」
 全王の姿が消える! 振り返るとローズたちの背後に居た!

「て、てめえ! ふざけているのか! 何の意味がある!」
 襲い掛かるローズたちの攻撃を受け止めて全王を睨む!

「お前を足止めできているじゃないか」
 全王はペロリと舌で唇を舐める。

「殺してやる!」
 全速力で再度全王に殴りかかる!

「迂闊だな」
 突然視界が揺れる! カウンターを食らった! そしてローズたちに抑え込まれる!

「よしよし。では、最後のテストだ」
 全王が手を上げると、周囲の冷気が全王に集まる!

「光栄に思うがいい! この光! この熱さ! これは神々と天使を生み出した創世記の力である!」
 目もくらむような光が放たれる!

「神魔法! 光あれ!」
 迷宮が震えた。



 地下9999階が恐るべき光で包まれる。

 その光は地下9999階の空間をぶち壊し、地下9998階を焼き尽くす。

 光は止まらない。迷宮を震わせながら、あらゆるものを破壊しながら突き進む。

 地下9995階の召喚の間を跡形もなく消滅させる。

 無を突き抜けて地下9000階を突破する。

 星々を内包する空間系の化け物を焼き尽くして地下8000階を突き進む。

 圧倒的なエネルギーで地下5000階の森を破壊する。

 誰にも止められぬ力で地下1000階も吹き飛ばす。

 そして圧倒的な破壊で地下100階に到達する。

「地震だ!」

 地下100階を突破したところで、レイたちの故郷にも異変が起きる。

 地上は大地が裂けるかのように揺れ、建物に亀裂が入る。

 その間にも光は進む。

「何だ!」

 地下30階に居た一流冒険者は瞬く間に消し炭となった。

「何だこの揺れは!」

 地下20階の冒険者たちは瓦礫の上から焼死した。

 そして地下12階、シロちゃんが居る迷いの森に到達する。

 シロちゃんは突然の揺れに目を覚ますと、寝床から出て草原に出る。

 そこは灼熱の炎が支配する火炎地獄となっていた。

 破滅の揺れは止まらない。ますます強くなる。

 シロちゃんの悲しい遠吠えは、地面から漏れる光に飲み込まれて消える。

 そして光は地下1階に到達する。

「逃げろ!」

 避難する冒険者をねじ伏せながら光は進む。

 身を隠すことなど無意味であった。その上から光に押しつぶされる。

「出口だ!」

 冒険者たちは振り返らずに進む。その間にも死体は増える。

 そして迷宮の出口に到達すると、日の光に遮られるように消えた。

「と、止まった」

 玉座に座るアルカトラズ十五世は立ち上がる。飾りも何もかもなぎ倒され、壁には亀裂が入り倒壊寸前だ。

 それでもようやく、破壊は終わった。



 一方地下9999階は未だに光に包まれていた。圧倒的な質量、概念すらも消し飛ばす圧倒的な力が渦巻いていた。

 そのような神々すらも死に絶えるような場所で、全王とレイは向き合っていた。

「て、てめえ!」

 レイは傷だらけだが生きていた。圧倒的な暴力を耐えきった。
 それどころかローズたちも守り抜いた!

「あの力を吸収するとは。さすがだ」

 全王は光を吸収し続けるレイに笑いかける。

 レイは膨大なエネルギーを自身に取り込んだ。そうすることでローズたちが巻き添えになることを防いだ。

 それでも吸収しきれない力は地下9999階から漏れ出てしまった。

「殺してやる!」

 レイは光が収まりかけたところで全王に掴みかかる!

「お前の力! すべて奪いつくしてやる!」

 全王に掴みかかる指から血が噴き出る。目から血の涙が零れる。鼻や口からも血が噴き出る。

「ふふ。凄いな。どんどん力が吸われていく」
 全王はそれを笑う。そしてレイの頭を掴む。

「レイ! 地下9999階にたどり着いた褒美をやろう!」
 レイの肌が全王と同じく白く染まる!

「我が力! 神の呪いとともに受け取るがいい!」
 光とともに、全王の真っ白な肌が、健康的な肌色に変化する!

「ぜ、全王!」

「全王ではない! 我が名はサタン! 神が作りし最初の存在にして! 神が作りし最後の人間だ!」

 全王の高笑いとともに、光が収まった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

レンタル従魔始めました!

よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」 僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。 そのまま【テイマー】と言うジョブに。 最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。 それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。 そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか? そのうち分かりますよ、そのうち・・・・

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

処理中です...