75 / 78
地上へ
しおりを挟む
「そこのお前? 名前なんだ?」
小さいフロアマスターの一人に詰め寄る。
「ま、マイコです! その、すいません!」
突然ブルブル震えて頭を下げる。
「謝る必要はねえよ。それより、さっきなんて言った?」
「そ、その、サタンの分身はどうやって外に出たんだろって」
マイコの言う通りだ。俺の先祖はサタンの分身だ。どうやって外に出た?
「力を迷宮に置いてきたんだろ」
フロアマスターの一人が退屈そうに欠伸をする。
「お前の名前はなんて言う?」
「マリクだ」
「なぜ力を迷宮に置いてきたと?」
「身代わりと同じ理屈だ。外に出るのに邪魔なら置いて来ればいい。本体に呪いを渡せば済む話だ」
「それはあり得ない」
マリクの言葉にルシーは首を振る。
「呪いを置くとは力の大部分を迷宮に捨てることに他ならない。サタンがなぜ回りくどくレイを呼び込んだか? 力を持って地上へ出るためだ。そうしないと神に勝てないからだ。そして先ほどのサタンを見るように、レイを身代わりにしても弱体化した。あれで精いっぱいの譲歩だ」
「だからこそ、サタンの分身、サータは人間として暮らせた」
チュリップが呟く。
「サータは神と戦うことを諦めた。だから外へ出れた。呪いとともに力を置き去りにすることで」
「あり得ないことではないな。狂った俺がそう言うんだから間違いない」
タケルはチュリップの言葉に苦笑する。
「分かった。その可能性を認めよう。しかしだからどうした? 言っておくが、僕やローズたち、フロアマスターたちがサタンに立ち向かうのは無しだ」
「何で?」
ローズがルシーを見る。
「レベルが違う。確かにフロアマスターたち含めて、僕たちはサタンのおかげで強く成れた。しかし地上へ出るとなると話は違う。神の呪いを置くとはサタンの力を放棄することに他ならない。それがどういう意味か分かるだろ?」
「人間がサタンに立ち向かうか。無理な話だ。それにたとえ俺たち全員で立ち向かってもサタンには勝てない。レイでなくてはならない。腹が立つが、俺たちはレイとサタンから見ればシロアリに過ぎない」
タケルの言葉に場が意気消沈する。
しかし俺の直感は訴える。
これが外へ出る方法だ!
「俺がサタンの力を放棄する。そして地上へ出て、人間となったサタンと戦う」
ルシーが顔を曇らす。タケルは煙草を吸う。
「それが現実的だ。だがそうなると、どうやって放棄するかだ。俺たちは誰一人として、レイの足元にも及ばない」
「皆ならどうだ?」
タケルたちの表情が変わる。
「サタンは個人主義だ。選ばれた一人しか己に並び立つものは居ないと考えている。だけど複数人、それこそ迷宮の化け物をひっくるめて全員ならどうだ! サタンに届くかもしれない!」
「ふざけるな! そんな博打に付き合っていられるか!」
フロアマスターの一人が叫ぶ。
「お前の名は?」
「ジュンだ! それにしても、何勝手に話を進めている! あいつは化け物だ! 悪魔だからな! そして俺たちが地下9995階で何をされたか分かるか! 弄ばれた! 紙くずみたいだ! それどころかここに来てすべてがサタンの茶番だった! 俺たちは屑のままだった! そんな奴に勝てる訳無いだろ!」
「そうね……サタンには勝てないわ」
フロアマスターたちが次々と諦めの言葉を口ずさむ。
「その、もう戦いは良いんじゃないかな? それに、サタンとは違って良い人が全王になった! なら、もう良いよ」
マイコが力なく笑いながら座り込む。
「ここで新たな人生を歩むべきだ。お前ならできる」
タケルすら力なく笑う。
「俺は外へ出たい。ここに居ても幸せになれないから」
「それはお前の勝手だ。俺は乗らない」
フロアマスターたちは頑なに協力を拒否する。
サタンから受けた恐怖を考えれば無理はない。
「なるほど。ならば私たちだけでも足掻こう」
リリーがローズとチュリップを見ると、二人は肩を竦める。
「ここまで来て諦めようなんて、それこそ私たちの意見を無視してるからね」
「元々この旅は私たちだけの物語。他人が入ってこなくて清々します」
ローズ、チュリップ、リリーが俺の前に立つ。
「待て! 止めろ! もしも三人に力を渡したらどうなるか! 三人が死ぬだけならまだいい! 余波で僕たちやレイも死ぬかもしれない!」
「あんたってサタンの手下?」
マリアがルシーを押しのけて、皆の前に立つ。
「さっきから聞いてれば、皆自分勝手じゃない? レイたちの気持ちを無視して、無理だ無理だって!」
「勝てる訳無いから言ってんだよ!」
ジュンが叫ぶ。
「そりゃ私たちは勝てないわ! でもレイなら勝てるでしょ! 今まで勝ってきたんだもの!」
「そうかい! なら勝手にやれ! 俺たちを巻き込むな!」
ジュンはイライラとそっぽを向く。他の者もマリアの言葉に従わない。
サタンの恐ろしさに心が折れている。君子危うきに近寄らずか。
「なるほど、皆の気持ちは分かった。ならば言う。サタンは戻ってくるぞ。俺たちを殺しに」
皆の表情が固まる。
「サタンの目的は神殺しだ。もしも神を殺したら次の目的は? 世界を破滅させること、弱い者を踏みにじることだ。それはお前たちも身に染みているはずだ」
「そ、そうかもしれないけど、レイさんが居るから大丈夫じゃ?」
「俺は神に封じられている。つまり神に勝てない。そんな奴が神を殺したサタンに勝てるはずが無いだろ?」
皆は押し黙る。サタンの恐ろしさを実感しているからこその反応だ。
「今なら勝てる。勝って見せる。だから協力してくれ」
ざっくりと作戦を説明する。
「上手く行くのか?」
フロアマスターたちはソワソワと体を揺すりながら眉を寄せる。
「やるしかない。頼む」
頭を下げる。この作戦はフロアマスターたちの協力が必要だ。
「もしも勝てたら、お前の世界の女を紹介しろ」
マリクが覚悟を決めた表情になる。
「分かった! 大丈夫! 俺は戻ったら英雄だ! 王様にお願いする!」
「金は貰えるよな?」
「待遇は良いよな?」
続々とフロアマスターたちの表情が変わる。
「大丈夫だ! 王様にお願いする!」
「と、友達はできますか? レイさんの世界で?」
マイコが恐る恐る聞いてきたので、膝を折って同じ目線に立つ。
「できるさ! だって、もう俺たちは友達だろ!」
マイコの目を見て言うと、マイコは照れたように視線を逸らす。
「やるしかないか」
タケルが煙草の火を消す。
「ありがとう」
「礼を言うな。よく考えれば、俺らしくなかった」
タケルに笑いかけると、タケルも笑い返す。
「ルシー、ベル、アス、協力してくれ」
「それはこの迷宮の主としての命令かい?」
ルシーたちは無表情で答える。
「友達としてだ」
「友達ね。ずるい言葉だ」
ルシーは笑うと、膝を付く。
「我が主レイよ。最初で最後の命令をください。私たちは命をかけて尽くします」
ルシーたちが首を垂れるとタケルも首を垂れる。
「よく考えると、俺たちはレイに命を握られている。逆らうだけ無駄だったな」
フロアマスターたちも首を垂れる。
「最初で最後の命令だ。俺はサタンを倒すために地上へ行く。そのために呪いを受けろ」
「承知しました。我が主よ」
ルシーたちが頷くと一気に場が動く!
「俺は迷宮の出口へ向かう。ローズたちも着いてきてくれ」
「分かった!」
ローズたちとともに迷宮の出口へ瞬間移動する。
「日の光ですね」
「ああ。そしてムカつくことに、サタンの背中も見える」
時間操作しているため、未だにサタンの姿が見える。しかし手を伸ばすことは敵わない。
「あいつを倒すんだね」
「必ずな」
ローズたちを抱きしめる。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ローズたちの言葉で震える体が止まった。
「じゃ! 準備してくるね!」
「帰ったらエッチしましょうね!」
「必ずお前の期待に応える!」
ローズたちの姿が消えた。
「さてと。いよいよだ」
深呼吸してサタンの背中を見る。
「上手く行くか失敗するか。自信はある。だけど、怖くもある」
心臓がドキドキする。
「お前はどうして人を殺して笑える? 不幸な人間を笑える? そんなことしたって、神様に勝てるはずないのに?」
サタンの背中を睨みながら拳を握りしめて時を待つ。
そしてズズッと迷宮が振動し、壁や天井、床に魔方陣が刻まれる!
「準備が済んだ!」
床に手を当てる。
「時間操作解除!」
外に居るサタンが動き出す! 急がないと!
「行くぜ!」
グッと力を込めて迷宮全体に神の呪いを流し込む!
「何て量だ!」
サタンの背中が遠ざかっているのに未だに流しきれない! とてつもない力だ!
「早く! 早く!」
遠ざかるサタンの姿に歯ぎしりしながら、呪いが出て行くのを待つ!
レイが神の呪いに悪戦苦闘している頃、サタンはアルカトラズ国の城下に足を踏み入れる。
「これが人間の世界か。荒れているな」
城下は地震によって数々の家が倒壊し、けが人で溢れていた。
「ちょっとあんた! 突っ立ってないで助けなさいよ!」
瓦礫に埋まる人々を助ける女の一人がサタンに怒鳴る。
「そうだな。哀れなるお前らを助けてやらねばな」
サタンは怒鳴りかけてきた女の頭を掴む。
女は跡形もなく消滅した。
「光栄に思うがいい。お前たちは神を殺すための糧となるのだ」
サタンは次々と人々を消滅させる。
悲鳴が新たに上がった。
「止まれ!」
異変に気付いた騎士たちがサタンを取り囲む。
「やはりシロアリだ。まるで食い足りない」
騎士たちは抵抗もできずに消滅する。
「おい! 俺の国で何をやっている!」
アルカトラズ十五世とその側近がサタンを取り囲む。
「お前たちを食ってやっているのだ。誇りに思うだろ?」
アルカトラズ十五世はサタンの目を見た瞬間飛びのく。
「ふむ。シロアリにしては知能がある。力の差を理解するとは」
サタンは獲物をいたぶるように笑いながらゆっくりと近づく。
「くく! お前は特別に、我が偉大なる力を味合わせてやろう!」
サタンはアルカトラズ十五世の首をゆっくりと締め上げる。
「どうだ? 単純な握力だけでも偉大だと分かるだろ?」
「何言ってんだお前は!」
サタンの背中に男性の蹴りが叩き込まれる! サタンが指を解いた!
「何だと?」
サタンはゆっくりと男性の顔を見る。レイの父親だった。
「なるほど、レイの父親か。生意気にも私と同じ力を感じる!」
張り手を振り下ろして、レイの父親を叩き伏せる!
「屑が。万死に値する!」
サタンは屈辱を与えるように父親の顔を踏みつける。
「サタン!」
レイの声が響くと、サタンの表情が変わる!
ようやく迷宮から出られた! 嬉しいが喜んでいる暇はない! 急いでサタンを探す!
すぐに城下から悲鳴が聞こえた!
それを辿ると、ついにサタンの姿が見えた!
サタンは親父の顔を踏みつけていやがった!
「レイ? どうやって神の呪いを?」
サタンは足を退けない! 動くと踏みつぶされるかも!
「まあ、どうでもいい。それよりも丁度いいと喜ぼう」
サタンは親父から足を退ける! しかし近くに居るから動けない!
その間にもサタンは天に手を向ける!
「まずはこいつらを食いつくし、次にお前を食うとしよう!」
「サタン! 止めろ!」
光がサタンに集まり闇が訪れる!
「レイ……」
親父と目が合った。
「頑張れ! お前は俺の息子だ!」
そう言ってくれた気がした。
暗黒の中、サタンとレイだけが、暗黒の大地に立つ。
森も、星も、建物も、人も、すべてサタンが吸収した!
「しかし、どんな手を使ったか分からないが、ご苦労であった! お前を食えば別の異世界へ飛び立てる!」
「お、お前! この世界だけじゃなく、他の世界も!」
「当然だ! 俺は神を侮っていない。この世界を食らった程度では届かない。だからこそ、無限に存在する異世界へ飛び立つ! すべての異世界を食らいつくす! そうすることで俺は神に届く!」
「クソ野郎が! てめえの好きにはさせねえ!」
「クックック! 来るか! 良いだろう! お前の物語を締めくくる最後の戦いだ!」
レイが暗黒の大地を蹴ると、最後の戦いが始まった。
小さいフロアマスターの一人に詰め寄る。
「ま、マイコです! その、すいません!」
突然ブルブル震えて頭を下げる。
「謝る必要はねえよ。それより、さっきなんて言った?」
「そ、その、サタンの分身はどうやって外に出たんだろって」
マイコの言う通りだ。俺の先祖はサタンの分身だ。どうやって外に出た?
「力を迷宮に置いてきたんだろ」
フロアマスターの一人が退屈そうに欠伸をする。
「お前の名前はなんて言う?」
「マリクだ」
「なぜ力を迷宮に置いてきたと?」
「身代わりと同じ理屈だ。外に出るのに邪魔なら置いて来ればいい。本体に呪いを渡せば済む話だ」
「それはあり得ない」
マリクの言葉にルシーは首を振る。
「呪いを置くとは力の大部分を迷宮に捨てることに他ならない。サタンがなぜ回りくどくレイを呼び込んだか? 力を持って地上へ出るためだ。そうしないと神に勝てないからだ。そして先ほどのサタンを見るように、レイを身代わりにしても弱体化した。あれで精いっぱいの譲歩だ」
「だからこそ、サタンの分身、サータは人間として暮らせた」
チュリップが呟く。
「サータは神と戦うことを諦めた。だから外へ出れた。呪いとともに力を置き去りにすることで」
「あり得ないことではないな。狂った俺がそう言うんだから間違いない」
タケルはチュリップの言葉に苦笑する。
「分かった。その可能性を認めよう。しかしだからどうした? 言っておくが、僕やローズたち、フロアマスターたちがサタンに立ち向かうのは無しだ」
「何で?」
ローズがルシーを見る。
「レベルが違う。確かにフロアマスターたち含めて、僕たちはサタンのおかげで強く成れた。しかし地上へ出るとなると話は違う。神の呪いを置くとはサタンの力を放棄することに他ならない。それがどういう意味か分かるだろ?」
「人間がサタンに立ち向かうか。無理な話だ。それにたとえ俺たち全員で立ち向かってもサタンには勝てない。レイでなくてはならない。腹が立つが、俺たちはレイとサタンから見ればシロアリに過ぎない」
タケルの言葉に場が意気消沈する。
しかし俺の直感は訴える。
これが外へ出る方法だ!
「俺がサタンの力を放棄する。そして地上へ出て、人間となったサタンと戦う」
ルシーが顔を曇らす。タケルは煙草を吸う。
「それが現実的だ。だがそうなると、どうやって放棄するかだ。俺たちは誰一人として、レイの足元にも及ばない」
「皆ならどうだ?」
タケルたちの表情が変わる。
「サタンは個人主義だ。選ばれた一人しか己に並び立つものは居ないと考えている。だけど複数人、それこそ迷宮の化け物をひっくるめて全員ならどうだ! サタンに届くかもしれない!」
「ふざけるな! そんな博打に付き合っていられるか!」
フロアマスターの一人が叫ぶ。
「お前の名は?」
「ジュンだ! それにしても、何勝手に話を進めている! あいつは化け物だ! 悪魔だからな! そして俺たちが地下9995階で何をされたか分かるか! 弄ばれた! 紙くずみたいだ! それどころかここに来てすべてがサタンの茶番だった! 俺たちは屑のままだった! そんな奴に勝てる訳無いだろ!」
「そうね……サタンには勝てないわ」
フロアマスターたちが次々と諦めの言葉を口ずさむ。
「その、もう戦いは良いんじゃないかな? それに、サタンとは違って良い人が全王になった! なら、もう良いよ」
マイコが力なく笑いながら座り込む。
「ここで新たな人生を歩むべきだ。お前ならできる」
タケルすら力なく笑う。
「俺は外へ出たい。ここに居ても幸せになれないから」
「それはお前の勝手だ。俺は乗らない」
フロアマスターたちは頑なに協力を拒否する。
サタンから受けた恐怖を考えれば無理はない。
「なるほど。ならば私たちだけでも足掻こう」
リリーがローズとチュリップを見ると、二人は肩を竦める。
「ここまで来て諦めようなんて、それこそ私たちの意見を無視してるからね」
「元々この旅は私たちだけの物語。他人が入ってこなくて清々します」
ローズ、チュリップ、リリーが俺の前に立つ。
「待て! 止めろ! もしも三人に力を渡したらどうなるか! 三人が死ぬだけならまだいい! 余波で僕たちやレイも死ぬかもしれない!」
「あんたってサタンの手下?」
マリアがルシーを押しのけて、皆の前に立つ。
「さっきから聞いてれば、皆自分勝手じゃない? レイたちの気持ちを無視して、無理だ無理だって!」
「勝てる訳無いから言ってんだよ!」
ジュンが叫ぶ。
「そりゃ私たちは勝てないわ! でもレイなら勝てるでしょ! 今まで勝ってきたんだもの!」
「そうかい! なら勝手にやれ! 俺たちを巻き込むな!」
ジュンはイライラとそっぽを向く。他の者もマリアの言葉に従わない。
サタンの恐ろしさに心が折れている。君子危うきに近寄らずか。
「なるほど、皆の気持ちは分かった。ならば言う。サタンは戻ってくるぞ。俺たちを殺しに」
皆の表情が固まる。
「サタンの目的は神殺しだ。もしも神を殺したら次の目的は? 世界を破滅させること、弱い者を踏みにじることだ。それはお前たちも身に染みているはずだ」
「そ、そうかもしれないけど、レイさんが居るから大丈夫じゃ?」
「俺は神に封じられている。つまり神に勝てない。そんな奴が神を殺したサタンに勝てるはずが無いだろ?」
皆は押し黙る。サタンの恐ろしさを実感しているからこその反応だ。
「今なら勝てる。勝って見せる。だから協力してくれ」
ざっくりと作戦を説明する。
「上手く行くのか?」
フロアマスターたちはソワソワと体を揺すりながら眉を寄せる。
「やるしかない。頼む」
頭を下げる。この作戦はフロアマスターたちの協力が必要だ。
「もしも勝てたら、お前の世界の女を紹介しろ」
マリクが覚悟を決めた表情になる。
「分かった! 大丈夫! 俺は戻ったら英雄だ! 王様にお願いする!」
「金は貰えるよな?」
「待遇は良いよな?」
続々とフロアマスターたちの表情が変わる。
「大丈夫だ! 王様にお願いする!」
「と、友達はできますか? レイさんの世界で?」
マイコが恐る恐る聞いてきたので、膝を折って同じ目線に立つ。
「できるさ! だって、もう俺たちは友達だろ!」
マイコの目を見て言うと、マイコは照れたように視線を逸らす。
「やるしかないか」
タケルが煙草の火を消す。
「ありがとう」
「礼を言うな。よく考えれば、俺らしくなかった」
タケルに笑いかけると、タケルも笑い返す。
「ルシー、ベル、アス、協力してくれ」
「それはこの迷宮の主としての命令かい?」
ルシーたちは無表情で答える。
「友達としてだ」
「友達ね。ずるい言葉だ」
ルシーは笑うと、膝を付く。
「我が主レイよ。最初で最後の命令をください。私たちは命をかけて尽くします」
ルシーたちが首を垂れるとタケルも首を垂れる。
「よく考えると、俺たちはレイに命を握られている。逆らうだけ無駄だったな」
フロアマスターたちも首を垂れる。
「最初で最後の命令だ。俺はサタンを倒すために地上へ行く。そのために呪いを受けろ」
「承知しました。我が主よ」
ルシーたちが頷くと一気に場が動く!
「俺は迷宮の出口へ向かう。ローズたちも着いてきてくれ」
「分かった!」
ローズたちとともに迷宮の出口へ瞬間移動する。
「日の光ですね」
「ああ。そしてムカつくことに、サタンの背中も見える」
時間操作しているため、未だにサタンの姿が見える。しかし手を伸ばすことは敵わない。
「あいつを倒すんだね」
「必ずな」
ローズたちを抱きしめる。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ローズたちの言葉で震える体が止まった。
「じゃ! 準備してくるね!」
「帰ったらエッチしましょうね!」
「必ずお前の期待に応える!」
ローズたちの姿が消えた。
「さてと。いよいよだ」
深呼吸してサタンの背中を見る。
「上手く行くか失敗するか。自信はある。だけど、怖くもある」
心臓がドキドキする。
「お前はどうして人を殺して笑える? 不幸な人間を笑える? そんなことしたって、神様に勝てるはずないのに?」
サタンの背中を睨みながら拳を握りしめて時を待つ。
そしてズズッと迷宮が振動し、壁や天井、床に魔方陣が刻まれる!
「準備が済んだ!」
床に手を当てる。
「時間操作解除!」
外に居るサタンが動き出す! 急がないと!
「行くぜ!」
グッと力を込めて迷宮全体に神の呪いを流し込む!
「何て量だ!」
サタンの背中が遠ざかっているのに未だに流しきれない! とてつもない力だ!
「早く! 早く!」
遠ざかるサタンの姿に歯ぎしりしながら、呪いが出て行くのを待つ!
レイが神の呪いに悪戦苦闘している頃、サタンはアルカトラズ国の城下に足を踏み入れる。
「これが人間の世界か。荒れているな」
城下は地震によって数々の家が倒壊し、けが人で溢れていた。
「ちょっとあんた! 突っ立ってないで助けなさいよ!」
瓦礫に埋まる人々を助ける女の一人がサタンに怒鳴る。
「そうだな。哀れなるお前らを助けてやらねばな」
サタンは怒鳴りかけてきた女の頭を掴む。
女は跡形もなく消滅した。
「光栄に思うがいい。お前たちは神を殺すための糧となるのだ」
サタンは次々と人々を消滅させる。
悲鳴が新たに上がった。
「止まれ!」
異変に気付いた騎士たちがサタンを取り囲む。
「やはりシロアリだ。まるで食い足りない」
騎士たちは抵抗もできずに消滅する。
「おい! 俺の国で何をやっている!」
アルカトラズ十五世とその側近がサタンを取り囲む。
「お前たちを食ってやっているのだ。誇りに思うだろ?」
アルカトラズ十五世はサタンの目を見た瞬間飛びのく。
「ふむ。シロアリにしては知能がある。力の差を理解するとは」
サタンは獲物をいたぶるように笑いながらゆっくりと近づく。
「くく! お前は特別に、我が偉大なる力を味合わせてやろう!」
サタンはアルカトラズ十五世の首をゆっくりと締め上げる。
「どうだ? 単純な握力だけでも偉大だと分かるだろ?」
「何言ってんだお前は!」
サタンの背中に男性の蹴りが叩き込まれる! サタンが指を解いた!
「何だと?」
サタンはゆっくりと男性の顔を見る。レイの父親だった。
「なるほど、レイの父親か。生意気にも私と同じ力を感じる!」
張り手を振り下ろして、レイの父親を叩き伏せる!
「屑が。万死に値する!」
サタンは屈辱を与えるように父親の顔を踏みつける。
「サタン!」
レイの声が響くと、サタンの表情が変わる!
ようやく迷宮から出られた! 嬉しいが喜んでいる暇はない! 急いでサタンを探す!
すぐに城下から悲鳴が聞こえた!
それを辿ると、ついにサタンの姿が見えた!
サタンは親父の顔を踏みつけていやがった!
「レイ? どうやって神の呪いを?」
サタンは足を退けない! 動くと踏みつぶされるかも!
「まあ、どうでもいい。それよりも丁度いいと喜ぼう」
サタンは親父から足を退ける! しかし近くに居るから動けない!
その間にもサタンは天に手を向ける!
「まずはこいつらを食いつくし、次にお前を食うとしよう!」
「サタン! 止めろ!」
光がサタンに集まり闇が訪れる!
「レイ……」
親父と目が合った。
「頑張れ! お前は俺の息子だ!」
そう言ってくれた気がした。
暗黒の中、サタンとレイだけが、暗黒の大地に立つ。
森も、星も、建物も、人も、すべてサタンが吸収した!
「しかし、どんな手を使ったか分からないが、ご苦労であった! お前を食えば別の異世界へ飛び立てる!」
「お、お前! この世界だけじゃなく、他の世界も!」
「当然だ! 俺は神を侮っていない。この世界を食らった程度では届かない。だからこそ、無限に存在する異世界へ飛び立つ! すべての異世界を食らいつくす! そうすることで俺は神に届く!」
「クソ野郎が! てめえの好きにはさせねえ!」
「クックック! 来るか! 良いだろう! お前の物語を締めくくる最後の戦いだ!」
レイが暗黒の大地を蹴ると、最後の戦いが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
レンタル従魔始めました!
よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」
僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。
そのまま【テイマー】と言うジョブに。
最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。
それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。
そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか?
そのうち分かりますよ、そのうち・・・・
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる