最低のピカレスク-死刑囚は神を殺す

ねこねこ大好き

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プリズム掌握

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「プリズムの王は、私の夫で、この子たちの父親です。名前は、大木戸勉といいます」
 洗脳を解いた翌朝、七瀬がプリズムの管理者の正体を告げる。
「私たち三人は、気づいたらこの世界に居ました。そして途方に暮れていると、どこからともなくあの人が現れたんです。彼は、私の目を見ろと言いました。そしたら、意識が遠くなりました。そこから先は、何があったのか、覚えていません」
 七瀬が口を閉ざすと、レストランが静まり返る。
「お手上げだね」
 舞が残念そうに首を振る。
「そう残念がることは無い。次に行くところが定まった」
「どこだ!」
 サテラが声を強張らせる。
「洗脳するには相手の目を見る必要がある。そしてここでは誰もが顔と顔を合わせる場所がある」
「検問所だ!」
 舞がハッと大声を出して答える。
「そうだ。ただ一つ気になることがある。検問所に日本人は居なかった」
「そういえばそうだったわね」
 静流が頷く。
「だからこそ、これは推測になるが、奴の能力は、洗脳。しかも洗脳された奴の目を見ると洗脳されてしまう感染型の洗脳能力だ」
「それは、私たちも洗脳されている可能性があるのか!」
 サテラが悲鳴を上げる。
「それはない。俺たちは意識を保っている」
「じゃあ、なぜ私たちだけ無事なんだ?」
「それは分からない。奴の能力の制限かもしれん」
 煙草に火をつける。
「いずれにしろ、お前たちは外出禁止だ。ここからは俺一人で行動する」
「大丈夫なのか?」
「心配するな」
 銃をホルスターにしまう。
 その時、ウェイターが電話を持ってきた。
「狂太郎様、お電話です」
 サテラたちと顔を見合わせる。誰だ?
「もしもし」
「こんにちわ、狂太郎君。プリズムの管理者、大木戸だ」

「まさか管理者から電話があると思わなかった」
 声色に殺気が無いので落ち着いて話す。
「私も君に降伏を告げるとは思わなかった」
「降伏だと?」
「君はすでに、私の能力が感染型の洗脳だと気づいた。違うかね?」
「その通りだ。なぜか俺には利かなかったが」
「一度は洗脳した。だがすぐに解除させてもらった」
「何だと!」
「私は洗脳した奴の五感、思考、記憶、あらゆるものを読み取ることができる。またそれを組み替えることができる。遠隔でね。そうやってプリズムを経営してきた」
「俺の五感や思考、記憶はどうだった?」
「気が狂いそうになった。私では君の感覚についていけない。だから解除した」
「意外と不便な能力だな」
「全くだ。そしてまずいことに君は私の能力をコピーしてしまった」
「俺の能力は戦った相手、または犯した相手の能力をコピーする。お前に洗脳された過程が、戦いとみなされたってところか」
「そうだ。現に私の洗脳は君の洗脳で上書きされている。もうプリズムに私に従う者は居ない」
 無意識のうちに発動していたようだ。そう言えば、時折他者の思考や記憶が流れ込むような感覚があった。気のせいだと無視していたが。
「だから降伏って訳か」
「そうだ。私の負けだ」
「それで、なぜ電話をしてきた?」
「君と直接話がしたい」
「嫌だと言ったら?」
「逃げるだけだ。君にとって有益な情報を持ったままね」
 ため息が出る。
「参ったな。俺の気性だと、出会った瞬間殺してしまう」
「君の殺人欲求は凄まじい。まるで食欲だ」
「だから、答えはNOだ。最も、潔さは認める。有難い情報を持ってとっとと逃げろ。今回は見逃してやる」
「そういうと思った。だから、君の恋人であるサテラと同行してもらいたい。彼女が傍に居れば、君は冷静になれるだろう」
 良く調べている。そして情報は欲しい。
「提案に乗ってやる。ただし、サテラを傷つけてみろ? 俺と会ったことを後悔することになる」
「はは、すでに後悔している。前世からね」
「ん?」
「独り言だ。気にしないでくれ」
「OK、ならさっさと場所と時間を言え」
「今夜の零時にそちらの伺う。待っていてくれ」
 ブツリと電話が切れる。
「何の話をしたんだ?」
 サテラが温かい手で手を握る。
「直接会いたいと言ってきた。お前と一緒に」
「なぜだ?」
「詳しいことは後で話す。それより、お前らに嬉しい知らせだ」
 全員に笑いかける。
「奴は負けを認めた。この街は俺たちの物だ」
 理由を説明すると、舞が苦笑する。
「あっけない決着だね」
「たまにはこういうこともある。さてと!」
 立ち上がって背筋を伸ばす!
「街中の女を犯しに行くか!」
 勝ったことに変わりはない! 今日は宴だ!
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