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管理者
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アルカトラズの城で定例会議が開催される。
「それでは第百回の定例会議を開始します」
進行役が言うといつも通りの報告会が始まる。
一通りの報告が終わると、アルカトラズの王であるヘクタールが口を開く。
「順調だな」
ヘクタールが言うと老齢の議員が頷く。
「人口はもちろん、治安もかなり良くなっています。教育も進んでいます。いずれ皆真人間となり、神に許されるでしょう」
老齢の議員は慇懃に祈る。隣の若い女性議員も祈る。
「あの方は罪を犯した私たちにやり直しのチャンスを下さった。ただただ、感謝しかありません」
議員たちはいつの間にか全員黙とうする。ヘクタールはそれを退屈気に見守る。
「他に何か無いか? 無ければ解散するぞ」
議員たちは涙を拭いてヘクタールに向き直る。一人の議員が苦々しく手を上げる。
「実は、ここ数日、狂太郎と呼ばれる男が、町の風紀を乱しています」
「風紀を乱すとは?」
「街中で堂々と女とセックスするのです」
ヘクタールはそれを聞いて笑う。
「とんでもない変態だ。それで、相手は嫌がっているのか?」
「口では嫌がっていますが、被害届等は出されていません」
「合意の上か。ならば放っておけ」
「しかし、これでは町の風紀が!」
「たまには余興も必要だろう。あまりにも度を過ぎるなら注意しろ」
「追い出したほうが良いと思いますが? 人前でセックスをするなど破廉恥です!」
女性議員が怒鳴るが、ヘクタールは首を横に振る。
「被害届が出ていないなら追い出すこともできない。分かるな」
議員たちは苦々しく押し黙る。
「そろそろ管理者会議が始まる。他に何もなければ解散するぞ」
議員たちは何も言わなかったのでヘクタールは会議の場を出た。
そして自室に戻り、葉巻を一本吸う。
「公開セックスか。退屈しのぎに見てみるか?」
くすくす笑っていると、突然自室の中央に白い扉が現れる。
「全く、退屈だ」
ヘクタールは白い扉を開ける。そこは椅子がぽつんと置いてあるだけの真っ白な空間だった。
ヘクタールは椅子に座り、しばらく待つと、続々と扉が出現し、そこから一人、また一人と着席する。
百近い椅子すべてが埋まると、光が出現し、それは中年の男性、神の代行者の姿となる。
「こんにちは、この世界の管理者たち」
皆神の代行者に頭を下げる。ヘクタールも下げる。
「いつも通り、君たちの国の状況を教えてくれないか」
すると一人一人が書類を読み上げる。
ヘクタールも事務的に読み上げる。
報告が終わると神の代行者は満足げに笑う。
「本来君たちは輪廻転生も許されない罪びとだ。だが、心から神を敬えば、私の計らいで次の世界へ旅立つことができる。君たちの能力もそのままに。だから日々、精進したまえ」
神の代行者が言うと、皆頭を下げる。
「茶番だ」
ヘクタールは呟く。
「結局お前のご機嫌取りを永遠に続けろってことだろ」
ヘクタールは拳を震わせる。
「ヘクタール!」
突然神の代行者に名前を呼ばれたので、ヘクタールは体をびくつかせる。
「何でしょうか」
できる限り平静を保ちながら聞き返す。
「お前の都市国家に狂太郎と呼ばれる男が居る。そいつを殺せ」
神の代行者はぎりぎりと歯を食いしばる。
ヘクタールは眉をしかめる。
「お言葉ですが、執行者を動かせばよろしいのでは?」
「私に意見するのか?」
神の代行者が睨むと、ヘクタールは心で舌打ちする。
「分かりました。この世界の管理者として、そいつを始末します」
「分かればよろしい」
神の代行者は姿を消す。すると白い扉が人数分現れる。
「あんなに不機嫌な代行者、初めて見た」
女がヘクタールの傍でつぶやく。
「おそらく、狂太郎とかいう奴は執行者を返り討ちにした」
ヘクタールは顎を撫でながら言う。
「あいつらを! 私たちですら手こずる奴らよ!」
「俺をけしかける理由を考えると、そうとしか思えん」
ヘクタールはニヤリと笑う。
「まあ、ストレスが溜まっていたところだ。うっぷん晴らしに殺してやろう」
ヘクタールは意気揚々と白い扉を潜り、自室へ戻る。
「待てよ? 狂太郎? 公開セックスする変態のことか?」
ヘクタールは自室から街を見渡す。
そしてクスリとまた笑う。
「どんな奴か、試してみるか」
「トーナメント? 優勝賞金1億!」
ホテルの一室でサテラが叫ぶ。
「そうそう! 明日突然やるらしいの! きょうちゃんに出てもらおう!」
静流がウキウキしながら言う。
サテラはうなる。
「あいつが出ると会場が血の海になりそう」
「出てみないと分からないじゃん! それに、暴れられなくてきょうちゃんイライラしてるでしょ。トーナメントならいっぱい暴れられるよ!」
サテラはうなずく。
「言うだけ言ってみよう」
「気が乗らねえな」
夕食の時間にサテラからトーナメントのことを聞くと、狂太郎は苦々しく言う。
「どうして? 狂兄最近人を殺してないから不機嫌じゃん」
舞が首をかしげる。
「俺は殺人狂でもあるが、殺す相手くらい選びたい」
狂太郎はチラシを見るとため息を吐く。
「対戦相手を殺しても問題なし。それはいい。だが弱い相手だとストレスが溜まる」
「良いじゃない。出てみなさいよ」
ハーレムで一番お金が好きなアリスが進める。
「まあ、金がもらえるなら出てやるか」
狂太郎はアリスにいやらしい目を向ける。
「ただし、今日は思いっきり犯すからな!」
アリスは肩をすくめる。
「お金がもらえるなら良いわよ」
「決まりだ!」
狂太郎はガツガツと肉を食べる。
「明日はでっかく、皆殺し! 全員殺してやるぜ!」
「何で私こんな奴好きになったんだろう」
喜ぶ狂太郎の横で、サテラは頭を抱えた。
「それでは第百回の定例会議を開始します」
進行役が言うといつも通りの報告会が始まる。
一通りの報告が終わると、アルカトラズの王であるヘクタールが口を開く。
「順調だな」
ヘクタールが言うと老齢の議員が頷く。
「人口はもちろん、治安もかなり良くなっています。教育も進んでいます。いずれ皆真人間となり、神に許されるでしょう」
老齢の議員は慇懃に祈る。隣の若い女性議員も祈る。
「あの方は罪を犯した私たちにやり直しのチャンスを下さった。ただただ、感謝しかありません」
議員たちはいつの間にか全員黙とうする。ヘクタールはそれを退屈気に見守る。
「他に何か無いか? 無ければ解散するぞ」
議員たちは涙を拭いてヘクタールに向き直る。一人の議員が苦々しく手を上げる。
「実は、ここ数日、狂太郎と呼ばれる男が、町の風紀を乱しています」
「風紀を乱すとは?」
「街中で堂々と女とセックスするのです」
ヘクタールはそれを聞いて笑う。
「とんでもない変態だ。それで、相手は嫌がっているのか?」
「口では嫌がっていますが、被害届等は出されていません」
「合意の上か。ならば放っておけ」
「しかし、これでは町の風紀が!」
「たまには余興も必要だろう。あまりにも度を過ぎるなら注意しろ」
「追い出したほうが良いと思いますが? 人前でセックスをするなど破廉恥です!」
女性議員が怒鳴るが、ヘクタールは首を横に振る。
「被害届が出ていないなら追い出すこともできない。分かるな」
議員たちは苦々しく押し黙る。
「そろそろ管理者会議が始まる。他に何もなければ解散するぞ」
議員たちは何も言わなかったのでヘクタールは会議の場を出た。
そして自室に戻り、葉巻を一本吸う。
「公開セックスか。退屈しのぎに見てみるか?」
くすくす笑っていると、突然自室の中央に白い扉が現れる。
「全く、退屈だ」
ヘクタールは白い扉を開ける。そこは椅子がぽつんと置いてあるだけの真っ白な空間だった。
ヘクタールは椅子に座り、しばらく待つと、続々と扉が出現し、そこから一人、また一人と着席する。
百近い椅子すべてが埋まると、光が出現し、それは中年の男性、神の代行者の姿となる。
「こんにちは、この世界の管理者たち」
皆神の代行者に頭を下げる。ヘクタールも下げる。
「いつも通り、君たちの国の状況を教えてくれないか」
すると一人一人が書類を読み上げる。
ヘクタールも事務的に読み上げる。
報告が終わると神の代行者は満足げに笑う。
「本来君たちは輪廻転生も許されない罪びとだ。だが、心から神を敬えば、私の計らいで次の世界へ旅立つことができる。君たちの能力もそのままに。だから日々、精進したまえ」
神の代行者が言うと、皆頭を下げる。
「茶番だ」
ヘクタールは呟く。
「結局お前のご機嫌取りを永遠に続けろってことだろ」
ヘクタールは拳を震わせる。
「ヘクタール!」
突然神の代行者に名前を呼ばれたので、ヘクタールは体をびくつかせる。
「何でしょうか」
できる限り平静を保ちながら聞き返す。
「お前の都市国家に狂太郎と呼ばれる男が居る。そいつを殺せ」
神の代行者はぎりぎりと歯を食いしばる。
ヘクタールは眉をしかめる。
「お言葉ですが、執行者を動かせばよろしいのでは?」
「私に意見するのか?」
神の代行者が睨むと、ヘクタールは心で舌打ちする。
「分かりました。この世界の管理者として、そいつを始末します」
「分かればよろしい」
神の代行者は姿を消す。すると白い扉が人数分現れる。
「あんなに不機嫌な代行者、初めて見た」
女がヘクタールの傍でつぶやく。
「おそらく、狂太郎とかいう奴は執行者を返り討ちにした」
ヘクタールは顎を撫でながら言う。
「あいつらを! 私たちですら手こずる奴らよ!」
「俺をけしかける理由を考えると、そうとしか思えん」
ヘクタールはニヤリと笑う。
「まあ、ストレスが溜まっていたところだ。うっぷん晴らしに殺してやろう」
ヘクタールは意気揚々と白い扉を潜り、自室へ戻る。
「待てよ? 狂太郎? 公開セックスする変態のことか?」
ヘクタールは自室から街を見渡す。
そしてクスリとまた笑う。
「どんな奴か、試してみるか」
「トーナメント? 優勝賞金1億!」
ホテルの一室でサテラが叫ぶ。
「そうそう! 明日突然やるらしいの! きょうちゃんに出てもらおう!」
静流がウキウキしながら言う。
サテラはうなる。
「あいつが出ると会場が血の海になりそう」
「出てみないと分からないじゃん! それに、暴れられなくてきょうちゃんイライラしてるでしょ。トーナメントならいっぱい暴れられるよ!」
サテラはうなずく。
「言うだけ言ってみよう」
「気が乗らねえな」
夕食の時間にサテラからトーナメントのことを聞くと、狂太郎は苦々しく言う。
「どうして? 狂兄最近人を殺してないから不機嫌じゃん」
舞が首をかしげる。
「俺は殺人狂でもあるが、殺す相手くらい選びたい」
狂太郎はチラシを見るとため息を吐く。
「対戦相手を殺しても問題なし。それはいい。だが弱い相手だとストレスが溜まる」
「良いじゃない。出てみなさいよ」
ハーレムで一番お金が好きなアリスが進める。
「まあ、金がもらえるなら出てやるか」
狂太郎はアリスにいやらしい目を向ける。
「ただし、今日は思いっきり犯すからな!」
アリスは肩をすくめる。
「お金がもらえるなら良いわよ」
「決まりだ!」
狂太郎はガツガツと肉を食べる。
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