クラス転移したら追い出されたので神の声でモンスターと仲良くします

ねこねこ大好き

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商人と仲良く成ろう!

商人バードとの出会い

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 のっしのっしときな子の背中に乗って、オオカミの森を散歩する。
「のろのろ」
 膝の上でスラ子が微睡む。
「日差しも時には心地よい」
 背中で赤子さんが欠伸をする。
「平和だ」
 温かい日差しの下だと欠伸が止まらない。



「野菜が食べたい。調味料が欲しい」
 お昼に焼いた肉をかじっていると声が出る。

「不味いのか?」
 きな子が不安げに尋ねる。

「美味しいよ。ただ、ちょっと食べ飽きたなって」
「そうか……」
 残念そうなきな子の体を撫でる。

「味か。私は血しか飲まないから何もできないな」
「味、分からない」
 赤子さんとスラ子がダラリと体を乗せて来る。

「大丈夫ですよ。自分で何とかしますから」
 言いながらもどうしようか悩む。

「町に行ってみるしかないか」
 生活を向上させるなら、人間の助けが居る。
 クラスメイトを嫌って城下に近づこうとしなかったけど、そんなことを言っていたら始まらない。

「皆には助けてもらってばかりで恩返しもしたいし、勇気を出そう」
 きな子、赤子さん、スラ子にはお世話になってばかりだ。
 ここでかっこつけたい。



 お昼を食べて再びオオカミの森を散歩する。
「喧しい声が聞こえるな」
 赤子さんの気配が刺々しくなる。

「どうしました?」
「人間が泣いている」
 きな子は立ち止まると耳をパタパタ動かす。

「行ってもいいか?」
「どうぞ」



「くそ……いてえ……」
 森を抜けると草原が広がる。そして転倒した荷車と下敷きになった男の人が見える。

「大変だ! 助けよう!」
「私が行くと怖がられる」
 耳がしなしなと倒れる。

「僕が話しますから! 早く行きましょう!」
 きな子を急かして荷車まで行く。

「大丈夫ですか!」
「た、たすけてくれ」
 きな子の目を見て、頷きあう。

 きな子が荷車を咥え、僕が男の人の肩を持つ。そして一気に引き上げる。
「胸が……」
 無事男の人を助けることができた。



「大丈夫ですか」
 木陰に男の人を座らせる。
「命は大丈夫だが、肋骨にヒビが入ったようだ」
 男の人は青い顔で荷車を見る。

「荷車も壊れた。これじゃあ荷物が運べねえ」
「僕が運ぶのを手伝います」

「本当かい! 助かったぜ!」
 安請け合いしたら満面の笑みになった。良いけど調子のよい人だ。

「俺はバード。お前は?」
「僕はゼロと言います」

「ゼロ! 良い名だ! 今日から俺たちは親友だ!」
 本当に調子の良い人だ。笑顔が似合うだけに質が悪い。

「ところで、お前さん一人か? なんかデカい化け物が居た気がする?」
「ええと、僕一人です」
 きな子は騒ぎを大きくしたくないと森へ帰った。赤子さんは下等生物と接したくないと僕の影に隠れた。スラ子は男の人を警戒してか、液状になって僕のポケットに収まっている。

「ちっこい体で良く助けられたな」
「こう見えてもちょっとは力があります」
「そいつは心強い。肩を貸してくれ」
 肩を貸して荷車のところへ行く。

「車軸が腐ってる。買い替えときゃ良かった」
 盛大なため息を吐く。

「まあ、幸い荷物は無事だ。悪いが拾ってくれ」
「分かりました」
 大きな樽を掴む。

「赤子さん、手伝ってください」
「いつもより血を飲ませろ」
「分かってます」
 影の中に隠れる赤子さんの力を借りて樽を持ち上げる。

「凄い力だ!」
「言ったでしょ」
 笑って誤魔化し、さらに一つ持ち上げる。

「ありがとよ! ついて来てくれ!」
 よろよろとふらつく足取りを追う。

「肩貸しましょうか?」
「さすがにそこまでは言わねえよ。お前は荷物の心配をしてくれ。俺の生活がかかっているからな」
 バードさんは気丈に笑って進む。

「強いな」
 その姿がとても頼もしく見えた。



「ここだ!」
 夜になっても歩き、行きついたのは大きな屋敷だった。

「ちょっと待っててくれ」
 ガツンガツンと戸を叩く。

「どちら様ですか?」
「バードだ。約束の品を届けに来た」
「バード様ですか」
 戸が開き、真っ白な髪と髭を蓄えた執事が現れる。

「このような夜分にわざわざ?」
「一刻も早く届けたくてね!」
 バードさんの笑みを受けて、執事は苦笑する。

「次からは朝に来てください」
「分かった!」

「……ふう。旦那様をお呼びします。上がってください」



「ほう……無理難題を言って突き放したが、本当に持ってくるとは思わなかった」
 旦那さんは玄関で樽を開けると微笑む。

「俺は旦那の一番の親友ですからね! 無理難題なんて朝飯前です!」
「ならば今日は朝飯を食えなかっただろ」
 バードさんと旦那さんは笑いあう。

「石や砂で誤魔化していないな」
 樽の底まで手を突っ込んで確かめる。臭いからして胡椒か?

「よく見つけてきたな」
「手間かかりました。頭なんて地面と友達に成るくらいくっつけました」
「ふん。どこまで本当か」
 旦那さんが手を叩くと、執事が拳大の袋を持ってくる。

「とにかく、良く届けた。色を付けて渡してやる」
「ありがとうございます! じゃあ夜も遅いんでこれで失礼します!」
「二度と来るな」
 バードさんは旦那さんと軽口を叩きながら外へ出た。



「仲が良いんですね」
「仲良くなるために頑張ったからな。商人は友達作りが上手くないとできねえよ」
 辛そうだったので肩を貸しながら、夜道をのんびり歩く。

「俺の家に寄って行かねえか?」
「良いんですか?」

「良いに決まってる! 友達だろ!」
 騒がしい友人ができた。

 とても嬉しかった。
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