クラス転移したら追い出されたので神の声でモンスターと仲良くします

ねこねこ大好き

文字の大きさ
14 / 73
商人と仲良く成ろう!

森の秘薬

しおりを挟む
「薬草と樹液か」
 バードさんは指で樹液を掬い口に含む。

「凄い甘さだ!」
 次に刻んだ薬草を咥える。

「舌が痺れないし腫れない。毒ではないが、どんな薬効があるか?」
 難しい顔で唸る。

「ダメですか?」
「いや! よくやってくれた。ただ改めて考えると、取ってきただけだと金にならないなぁと」
「今更そんなこと言わないでくださいよぉ!」
「待て待て! とりあえずどうやって売るか考える」
 コツコツと貧乏ゆすりをする。

「ポーションに樹液を混ぜたらとりあえず売れそうな気がする」
「ポーション? 薬に樹液を混ぜるんですか?」

「飲み薬は苦くて不味い。しかも苦みが強くて普通の甘味じゃ打ち消せない。この樹液ならそれが解決しそうだが」
「試したらどうです?」

「スライムが取れなくなったから、ポーションそのものが無い」
 コツコツと指で机を叩く。

「樹液と薬草を混ぜてみよう」
 すり鉢で薬草と樹液をゴリゴリと混ぜ合わせる。

「香りは良いですね」
「味はどうかな?」
 ペロリと舐めてみると、眠気が吹っ飛ぶほどの爽快な甘さがする。

「何だか凄い味ですね」
「ああ……売れそうな気がする」
 バードさんは薬草と樹液を全て混ぜ合わせ、ガラス瓶に収める。

「森の秘薬って名前で売り込んでみる。数日後にまた来てくれ」
 ドサドサと本、調味料、野菜、そしてボードゲームを受け取る。

「ありがとうございます!」
「どういたしまして」



 バードは森の秘薬を持って町の飲食店に入る。
「おっさん、突然だけどこれを使ってみる気は無いか?」
 バードは厨房にずかずか踏み込むと店主に森の秘薬を渡す。

「何だこれ?」
「俺が作った調味料だ。とりあえず美味いと思う」
「お前が作った?」
 店主は瓶の蓋を開けて臭いを嗅ぐ。

「とりあえず臭いは合格だ」
 スプーンで一匙掬い、舐める。

「変な味だ!」
「そうか?」
「癖が強すぎる。スープにも何にもあわねえ」
「そう言うなって。一つ置いておくから、使ってみてくれ」
「金は払わねえぞ」
「気に入らなかったら返してくれ」

 次に教会に立ち寄る。
「婆さん、これを使ってみる気は無いか?」
「突然なんだい?」
 瓶の蓋を開けて臭いを嗅ぐ。

「甘い臭いだね。贅沢品だから高いんだろ?」
 白髪でしわの刻んだ顔を歪ませる。
「特別タダだ。試しに使ってくれ。甘い物は子供も病人も好きだろ」
「くれるって言うなら貰うけど」

 こうして地道に営業を続ける。
 目標の数まで捌くと、最後に娼館へ立ち寄る。

「バード? 久しぶりだね」
「アマンダ! そのケガはどうした?」
 店に入るなり、頬の腫れた女性に駆け寄る。

「勇者のガキに殴られたのさ」
「勇者!」

「皆も傷物になっちまった。おかげでここは廃業だよ」
 よく見ると体中に痛々しい青あざがある。

「そうか……俺に食わせる金があれば良かったんだが」
「そこまで期待してないよ」
 アマンダはそろりとバードのズボンを撫でる。

「萎えてるね」
「さすがに立たない」

「だろうね」
 割れた歯が笑みから零れる。

「これをやる。甘いから少しは気分が晴れるはずだ」
「何だいこれ?」

「俺が作った森の秘薬って商品だ。試しに使ってくれ」
「こんなの渡されても使い方なんて分からないよ」
「とにかく使ってくれ。そうしないと価値が分からない」
「全く、強引な奴だね」
 バードはアマンダとキスをして帰宅する。



「後は結果待ち。もしも売れるなら、次は向こうから話を持ち出してくる」
 酒と森の秘薬を混ぜて飲んでみる。

「うん! 美味い! 次はこれで売ってみるか!」
 しげしげと森の秘薬を見つめる。

「絶対に売れる。問題は気に行ってもらえるかどうか」
 にじみ出る汗を拭う。

「それにしても暑い……それに腹が減った」
 上半身裸になってパンとスープを貪る。

「パンに付けると微妙か」
 粗方食べるとトイレに向かう。

「体の調子がいいなぁ……森の秘薬のおかげか?」
 体内の毒物をすべて排せつすると体がどんどん熱くなる。

「それにしても、勇者の野郎。アマンダを傷つけるか……俺が力を持ってたら、ぶっ飛ばせるのに」
 悔し気に机を叩いてベッドに横になる。

「勇者は今は居ない。だけど戻ってきたらどうなる? 地獄か? ゼロに相談してみるか」
 らんらんとした目を閉じる。

「しかし……眠くない……夜は飲まないようにしよう」
 盛り上がるズボンを忌々しく睨むと、強引に目を閉じる。

 数秒後にはイビキが上がる。
 睡眠促進の効果もあるようだ。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...