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商人と仲良く成ろう!
大人気
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「またあの人間のところへ行くのか?」
「ここで遊ぼう」
外へ行こうとすると二人が駄々をこねる。
「約束しましたし、すぐに戻るから我慢してください」
「むー。人間なんぞどうでもいいのに」
「ゼロ、抱っこ」
不貞腐れる二人を宥めて、バードさんのところへ向かう。
二人はボードゲームなどの遊びを通じて随分と打ち解けた。以前のように警戒したり下等生物と言ったりすることも無くなった。
「もう少しすると人間に対する嫌悪感も無くなるかな?」
文句を言っているが、ボードゲームなどのおもちゃはバードさんを通じて手に入れるしかない。それに衣服なども考えると、人間を避けることはできない。
まだまだ時間はある。ゆっくりと二人には人間に慣れてもらいたい。
きな子の頭に乗ってバードさんの自宅近くまで行くと、異変に気付く。
「人だかり?」
バードさんの家が老若男女に囲まれている。
目を凝らすとバードさんが玄関で困った顔で皆に頭を下げている。
「何があったんだろう?」
乱闘というような刺々しい雰囲気ではない。しばらく様子を見ることにする。
一時間ほどすると人だかりは残念そうにバードさんの家から離れる。
その隙にバードさんの戸を叩く。
「ゼロ! 待っていた! 良かった!」
バードさんはまるで神様にあったかのような喜んだ。
「森の秘薬は大人気ですか! 良かった!」
「こっちも嬉しい限りだ。味はもちろん、どうやら薬としても最高の代物。ポーションが無いから冒険者からも売ってくれって来たぜ!」
「さっきの人たちはそれですか」
「見てたのか! あれが全員じゃない。それこそ町中が森の秘薬を求めてる!」
ドサリと山盛りの金貨がテーブルに積まれる!
「頼む! 材料と時間が無い! 今日の夜までに、樹液、薬草を樽で五十ばかり用意してくれ! 金はここにある!」
「ご、五十ですか! 大丈夫だと思いますけど」
「そうか! ならさっそく取りに行ってくれ! 急かして悪いな! 馬車は外にあるのを使ってくれ! 樽もそこに入ってる!」
大慌てのバードさんが気の毒だったので急いで馬車に乗り込む。
「でも僕、馬車の運転できないんだよな」
スラ子をポケットから出す。
「樽を飲み込んでくれる?」
「分かった」
ごくりと五十ほどの樽を一飲み。それだけの量を飲み込んだのにポケットに収まる大きさになるのだから不思議だ。
「早く行くぞ。用事はさっさと済ませる」
「帰って遊ぼう」
「分かりました」
不機嫌な二人のために走ってきな子の元へ行く。
「万年樹の森へ」
「分かった」
森が揺れるほどの速さできな子は走り出した。
万年樹の森へ行くと、樽いっぱいに樹液と薬草を詰める。薬草は赤子さんに捌いてもらい、小さくしてから樽に入れる。それらをスラ子に飲み込んで貰えば、後はバードさんに届けるだけだ。
「ほう、万年樹の森の樹液と薬草は人間に大人気か」
帰り道に膝の上のスラ子にお手玉を見せながらきな子と雑談する。
「美味しくて、ポーションよりも高い薬の効果があるらしいです」
「万年樹の森は魔人すら恐れる虫人を育てる森だ。薬も栄養価も他では考えられないほど高い。しかし、人間が樹液を美味しく感じるとは意外だ」
きな子はとても嬉しそうだった。
「嬉しいの?」
「好物を不味いと呼ばれるよりずっと良い」
「なるほど」
後ろから赤子さんが抱き着いてきたので手の甲を撫でる。スラ子も負けじと頭を寄せてきたので頭を撫でる。
「しかし、この様子だとスラ子や赤子に負担をかけてしまうのではないか?」
きな子がドキッとすることを言う。
「やっぱりそう思いますか」
僕一人ではバードさんに樹液や薬草を届けることはできない。スラ子の収納力と赤子さんの力が必要だ。それに移動だってきな子の力を借りている。
この行為は三人に負担をかけている。それが後ろめたい。
「私はお前と居るのが楽しいから、負担とは思っていないぞ」
きな子は僕の心を読んだのか、穏やかな口調で言う。
「そう言ってくれると嬉しいです」
スラ子の目を見て微笑む。
「スラ子は何か欲しいのある?」
「ゼロと遊ぶ」
何のためらいもなく答える。嬉しいけど、時にはおねだりしてほしい。
「赤子さんは何か欲しいのありますか?」
「ゼロと一緒に遊ぶ時間が欲しい。あんな奴らに構うな」
拗ねた声だ。宝石でも欲しいと言ってくれれば、バードさんに対価として要求でき、赤子さんを喜ばせることができるが、それはダメそうだ。
二人とも、強すぎるのだろう。たった一人で生きていけるほど強いのだろう。だからこそ欲が無い。
「今日は早めに帰って、オセロをやりましょう!」
「オセロ! 良いな!」
グリグリと顔が後頭部に当たる。
「オセロより、本読んで」
「分かった! オセロをしながら一緒に読もう」
「やった!」
グリグリと胸に頭が当たる。
ほのぼのしていて楽しい。
「おお! 用意してくれたか!」
「ええ! 間に合いましたね」
夕暮れ時にバードさんの元へ帰る。
「ありがとう! うん! 大丈夫そうだ! それにしても馬車を置いて行くとは思わなかったぞ」
「馬車は森の中を走れませんから。樽だけ持っていきました」
「気づかなかった! すまない」
「気にしなくていいです。じゃ、四日後くらいにまた来ますね」
「四日後か……まあ、これだけあれば大丈夫だろう」
金貨の報酬とは別に、野菜を貰ってバードさんの元を離れる。
「ゼロ、ゼロ」
「はいはい。帰るだけだから、落ち着いて」
「今日はもう放さないぞ!」
「分かってます。しばらく、ダンジョンでゆっくりしましょう」
「……大変だな」
二人に笑いかけていると、きな子が苦笑いをする。
「大変じゃないよ。僕はとても嬉しくて、楽しいです」
今日の夕食は肉と野菜のスープだ。スラ子は美味しいと喜んでくれるだろう。
赤子さんは血しか飲めないから、朝までオセロをして遊ぼう。
明日はどんなことをして遊ぼう?
二人が居れば、考えるだけでも楽しい明日がある!
「ここで遊ぼう」
外へ行こうとすると二人が駄々をこねる。
「約束しましたし、すぐに戻るから我慢してください」
「むー。人間なんぞどうでもいいのに」
「ゼロ、抱っこ」
不貞腐れる二人を宥めて、バードさんのところへ向かう。
二人はボードゲームなどの遊びを通じて随分と打ち解けた。以前のように警戒したり下等生物と言ったりすることも無くなった。
「もう少しすると人間に対する嫌悪感も無くなるかな?」
文句を言っているが、ボードゲームなどのおもちゃはバードさんを通じて手に入れるしかない。それに衣服なども考えると、人間を避けることはできない。
まだまだ時間はある。ゆっくりと二人には人間に慣れてもらいたい。
きな子の頭に乗ってバードさんの自宅近くまで行くと、異変に気付く。
「人だかり?」
バードさんの家が老若男女に囲まれている。
目を凝らすとバードさんが玄関で困った顔で皆に頭を下げている。
「何があったんだろう?」
乱闘というような刺々しい雰囲気ではない。しばらく様子を見ることにする。
一時間ほどすると人だかりは残念そうにバードさんの家から離れる。
その隙にバードさんの戸を叩く。
「ゼロ! 待っていた! 良かった!」
バードさんはまるで神様にあったかのような喜んだ。
「森の秘薬は大人気ですか! 良かった!」
「こっちも嬉しい限りだ。味はもちろん、どうやら薬としても最高の代物。ポーションが無いから冒険者からも売ってくれって来たぜ!」
「さっきの人たちはそれですか」
「見てたのか! あれが全員じゃない。それこそ町中が森の秘薬を求めてる!」
ドサリと山盛りの金貨がテーブルに積まれる!
「頼む! 材料と時間が無い! 今日の夜までに、樹液、薬草を樽で五十ばかり用意してくれ! 金はここにある!」
「ご、五十ですか! 大丈夫だと思いますけど」
「そうか! ならさっそく取りに行ってくれ! 急かして悪いな! 馬車は外にあるのを使ってくれ! 樽もそこに入ってる!」
大慌てのバードさんが気の毒だったので急いで馬車に乗り込む。
「でも僕、馬車の運転できないんだよな」
スラ子をポケットから出す。
「樽を飲み込んでくれる?」
「分かった」
ごくりと五十ほどの樽を一飲み。それだけの量を飲み込んだのにポケットに収まる大きさになるのだから不思議だ。
「早く行くぞ。用事はさっさと済ませる」
「帰って遊ぼう」
「分かりました」
不機嫌な二人のために走ってきな子の元へ行く。
「万年樹の森へ」
「分かった」
森が揺れるほどの速さできな子は走り出した。
万年樹の森へ行くと、樽いっぱいに樹液と薬草を詰める。薬草は赤子さんに捌いてもらい、小さくしてから樽に入れる。それらをスラ子に飲み込んで貰えば、後はバードさんに届けるだけだ。
「ほう、万年樹の森の樹液と薬草は人間に大人気か」
帰り道に膝の上のスラ子にお手玉を見せながらきな子と雑談する。
「美味しくて、ポーションよりも高い薬の効果があるらしいです」
「万年樹の森は魔人すら恐れる虫人を育てる森だ。薬も栄養価も他では考えられないほど高い。しかし、人間が樹液を美味しく感じるとは意外だ」
きな子はとても嬉しそうだった。
「嬉しいの?」
「好物を不味いと呼ばれるよりずっと良い」
「なるほど」
後ろから赤子さんが抱き着いてきたので手の甲を撫でる。スラ子も負けじと頭を寄せてきたので頭を撫でる。
「しかし、この様子だとスラ子や赤子に負担をかけてしまうのではないか?」
きな子がドキッとすることを言う。
「やっぱりそう思いますか」
僕一人ではバードさんに樹液や薬草を届けることはできない。スラ子の収納力と赤子さんの力が必要だ。それに移動だってきな子の力を借りている。
この行為は三人に負担をかけている。それが後ろめたい。
「私はお前と居るのが楽しいから、負担とは思っていないぞ」
きな子は僕の心を読んだのか、穏やかな口調で言う。
「そう言ってくれると嬉しいです」
スラ子の目を見て微笑む。
「スラ子は何か欲しいのある?」
「ゼロと遊ぶ」
何のためらいもなく答える。嬉しいけど、時にはおねだりしてほしい。
「赤子さんは何か欲しいのありますか?」
「ゼロと一緒に遊ぶ時間が欲しい。あんな奴らに構うな」
拗ねた声だ。宝石でも欲しいと言ってくれれば、バードさんに対価として要求でき、赤子さんを喜ばせることができるが、それはダメそうだ。
二人とも、強すぎるのだろう。たった一人で生きていけるほど強いのだろう。だからこそ欲が無い。
「今日は早めに帰って、オセロをやりましょう!」
「オセロ! 良いな!」
グリグリと顔が後頭部に当たる。
「オセロより、本読んで」
「分かった! オセロをしながら一緒に読もう」
「やった!」
グリグリと胸に頭が当たる。
ほのぼのしていて楽しい。
「おお! 用意してくれたか!」
「ええ! 間に合いましたね」
夕暮れ時にバードさんの元へ帰る。
「ありがとう! うん! 大丈夫そうだ! それにしても馬車を置いて行くとは思わなかったぞ」
「馬車は森の中を走れませんから。樽だけ持っていきました」
「気づかなかった! すまない」
「気にしなくていいです。じゃ、四日後くらいにまた来ますね」
「四日後か……まあ、これだけあれば大丈夫だろう」
金貨の報酬とは別に、野菜を貰ってバードさんの元を離れる。
「ゼロ、ゼロ」
「はいはい。帰るだけだから、落ち着いて」
「今日はもう放さないぞ!」
「分かってます。しばらく、ダンジョンでゆっくりしましょう」
「……大変だな」
二人に笑いかけていると、きな子が苦笑いをする。
「大変じゃないよ。僕はとても嬉しくて、楽しいです」
今日の夕食は肉と野菜のスープだ。スラ子は美味しいと喜んでくれるだろう。
赤子さんは血しか飲めないから、朝までオセロをして遊ぼう。
明日はどんなことをして遊ぼう?
二人が居れば、考えるだけでも楽しい明日がある!
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