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馬車に揺られて
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アルフレッド様は眩しい。
赤茶みのある金髪で、夕焼けを浴びてキラキラとしている。ライラは母親の作る金柑の甘煮のようだと思った。瞳は空色で明るい。爽やか。
騎士というだけあってドアを開けてくれる仕草もスマートだし、なんというか。
王子様みたいだなあと思った。
さぞかし女性にモテるんだろうなあ、この人。
姉に自慢しよう。
姉は勉強ができたので高等学園に進学している。そこで出会った一つ年上の子爵令息と恋愛結婚をしている。
「あの、セグラー様、少しお尋ねしたいことがあるのですが」
そういうと、ギクリ、と体を強ばらせていた。
「あー、そうだよね、うん。あなたには知る権利があるよ。でも、悪いけど俺もあいつがどうしてああいう極端な手を使ったのかわからない。」
「エドガー様ってお幾つなんでしょうか」
「25歳だけど」
「落ち着いてらっしゃいますよねー。うちの兄なんて28歳なんですが、もっと落ち着きがなくて。あ、姉は26歳なのですがしっかり者で、」
「え、ライラさん他に気になることもっとあるんじゃないの。歳なの?」
「だって、年齢って気になりません?」
スーラさんが頷きながら笑う。
「ライラちゃんはこういう子なのよ。普通は年収とか家の爵位じゃないかしら」
「スーラさん、家の爵位はともかく、年収は失礼だと思います。若いうちはお仕事のしんどさに見合ったお給料が頂けるかどうかわからないじゃないですか。エドガー様、一生懸命働いてらっしゃるのなら収入なんていいじゃないですか」
アルフレッドは目を見開いた。
「えっと、ちょっと待って」
ライラさん、気づいてない?
あいつ、管理職だから
けっこうもらってるはず。
「セグラー様、わかってます。収入は大事です。安定も大事ですし、お仕事のやりがいの面でも収入を軽視してはいけないとは、私もわかっています。
でも、結婚するかどうかを考えたときに、それに引きずられ過ぎたくないって言うか」
「いや、ライラさん?」
「収入の不安は私も働けばなんとかなるかもしれないので、一旦置いといて考えてみようかなって」
(多分、一生心配はないと思うけど)
「たくましいね。
それに、エドガーのこと恐がらずにちゃんと考えてくれるんだ。」
「恐くないですよ。びっくりはしてますけど。
だって、とても……」
「とても?」
スーラもライラの表情が珍しいのか、身を乗り出している。
「かっこいいじゃないですか。艶のある黒髪、白い肌、それにあの深い湖のような瞳!見つめられたらぼうっとなって何でも答えてしまいそうになりました。知的でミステリアスで、何でも知ってそうな」
「そう!あの目で見つめられたら全て見透かされてるような気持ちになってしまうよね。黒髪も神秘的で、色が白いからどんな色でも似合うのに飾りがいらないんだよ。あと、悲しそうに伏し目がちになられると何でも言うことを聞いてあげたくなっちゃうし」
スーラさんとライラは手を握りあって、アルフレッドを見つめた。
「あれ?声に出てた?
「清々しいほどに。あの、もしかしてエドガー様のことを……?」
「違う!
えっと、言い忘れてましたが俺の最愛の奥さんはエドガーの妹です。もちろん可愛いし笑うし優しいし、エドガーとは正反対なんだけど。髪の色と瞳の感じは似てるんですよ」
よく喋る方だなあ。
エドガー様は無口なのに。でも仲が良さそうなのは性質が反対だから?
妹さんも静かな方なんだろうか。
「考えると言ったものの結婚って、考えたこともなかったんです。なので、どう考えていいかもよくわからないんですけどね。
明日、冗談でしたー、なんてことはないですよね」
「エドガーが冗談を言ったのを聞いたことがないよ。残念ながら。」
ライラが紙を広げる。
「それ、持って帰ってきたのかい」
「エドガー様が、『君が持っていてくれ。どうせ私は君としか結婚しないから。いつになってもいい』って。」
「すごいねえ。なんていうか、ライラちゃんは大変だろうけど」
えへへ、とライラは乾いた笑いで返した。
街の中心地のあたりで馬車を止めてもらった。
「ここから歩いてすぐなので」
スーラさんはもう少し先の通りまで。
夕焼けの満ちていく街でライラは、カバンの中の紙一枚の存在を忘れることが出来なかった。
ちっともお腹がすいてないけれど、パンとチーズで夕飯にしようと思った。
いつも通りにしようと思っても、ふわふわした気持ちが止まらなかった。
赤茶みのある金髪で、夕焼けを浴びてキラキラとしている。ライラは母親の作る金柑の甘煮のようだと思った。瞳は空色で明るい。爽やか。
騎士というだけあってドアを開けてくれる仕草もスマートだし、なんというか。
王子様みたいだなあと思った。
さぞかし女性にモテるんだろうなあ、この人。
姉に自慢しよう。
姉は勉強ができたので高等学園に進学している。そこで出会った一つ年上の子爵令息と恋愛結婚をしている。
「あの、セグラー様、少しお尋ねしたいことがあるのですが」
そういうと、ギクリ、と体を強ばらせていた。
「あー、そうだよね、うん。あなたには知る権利があるよ。でも、悪いけど俺もあいつがどうしてああいう極端な手を使ったのかわからない。」
「エドガー様ってお幾つなんでしょうか」
「25歳だけど」
「落ち着いてらっしゃいますよねー。うちの兄なんて28歳なんですが、もっと落ち着きがなくて。あ、姉は26歳なのですがしっかり者で、」
「え、ライラさん他に気になることもっとあるんじゃないの。歳なの?」
「だって、年齢って気になりません?」
スーラさんが頷きながら笑う。
「ライラちゃんはこういう子なのよ。普通は年収とか家の爵位じゃないかしら」
「スーラさん、家の爵位はともかく、年収は失礼だと思います。若いうちはお仕事のしんどさに見合ったお給料が頂けるかどうかわからないじゃないですか。エドガー様、一生懸命働いてらっしゃるのなら収入なんていいじゃないですか」
アルフレッドは目を見開いた。
「えっと、ちょっと待って」
ライラさん、気づいてない?
あいつ、管理職だから
けっこうもらってるはず。
「セグラー様、わかってます。収入は大事です。安定も大事ですし、お仕事のやりがいの面でも収入を軽視してはいけないとは、私もわかっています。
でも、結婚するかどうかを考えたときに、それに引きずられ過ぎたくないって言うか」
「いや、ライラさん?」
「収入の不安は私も働けばなんとかなるかもしれないので、一旦置いといて考えてみようかなって」
(多分、一生心配はないと思うけど)
「たくましいね。
それに、エドガーのこと恐がらずにちゃんと考えてくれるんだ。」
「恐くないですよ。びっくりはしてますけど。
だって、とても……」
「とても?」
スーラもライラの表情が珍しいのか、身を乗り出している。
「かっこいいじゃないですか。艶のある黒髪、白い肌、それにあの深い湖のような瞳!見つめられたらぼうっとなって何でも答えてしまいそうになりました。知的でミステリアスで、何でも知ってそうな」
「そう!あの目で見つめられたら全て見透かされてるような気持ちになってしまうよね。黒髪も神秘的で、色が白いからどんな色でも似合うのに飾りがいらないんだよ。あと、悲しそうに伏し目がちになられると何でも言うことを聞いてあげたくなっちゃうし」
スーラさんとライラは手を握りあって、アルフレッドを見つめた。
「あれ?声に出てた?
「清々しいほどに。あの、もしかしてエドガー様のことを……?」
「違う!
えっと、言い忘れてましたが俺の最愛の奥さんはエドガーの妹です。もちろん可愛いし笑うし優しいし、エドガーとは正反対なんだけど。髪の色と瞳の感じは似てるんですよ」
よく喋る方だなあ。
エドガー様は無口なのに。でも仲が良さそうなのは性質が反対だから?
妹さんも静かな方なんだろうか。
「考えると言ったものの結婚って、考えたこともなかったんです。なので、どう考えていいかもよくわからないんですけどね。
明日、冗談でしたー、なんてことはないですよね」
「エドガーが冗談を言ったのを聞いたことがないよ。残念ながら。」
ライラが紙を広げる。
「それ、持って帰ってきたのかい」
「エドガー様が、『君が持っていてくれ。どうせ私は君としか結婚しないから。いつになってもいい』って。」
「すごいねえ。なんていうか、ライラちゃんは大変だろうけど」
えへへ、とライラは乾いた笑いで返した。
街の中心地のあたりで馬車を止めてもらった。
「ここから歩いてすぐなので」
スーラさんはもう少し先の通りまで。
夕焼けの満ちていく街でライラは、カバンの中の紙一枚の存在を忘れることが出来なかった。
ちっともお腹がすいてないけれど、パンとチーズで夕飯にしようと思った。
いつも通りにしようと思っても、ふわふわした気持ちが止まらなかった。
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