【完結】『神童』に求婚される話~妬まれて出世コースから外れてたんじゃないんですか?

仙冬可律

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結婚ってむずかしい

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さっきの姉の言葉は多分外まで聞こえていただろう。

義兄も謝りながらやって来た。
姉が怒ってライラのところへ来て、義兄が迎えに来るのはいつもの事だ。いつもより迎えが早い。
「アメリー、帰ろう。ライラちゃんもすまなかったね。」

「どうして今日はこんなに帰りが早いの?いつも本当は早く帰れたの?」

「違うよ。今日王宮で仕事をしていたんだけど」
義兄は紙やインクを王宮に納めている商会に勤めている。
王宮勤めの友達も多いので、文房具の開発の相談を受けたりしている。

「えーっと、王宮勤めの友達から聞いたから守秘義務があって、個人名は伏せるけど。とても仕事のできる有名な天才のある方がいて。僕の憧れでもあるんだけど。その天才が、求婚するために仕事を早く切り上げて帰ったそうなんだよ。」

「それって」

「え?その人は今から求婚しますって言いふらしてたの?」
姉も気づいているようです。

「婚姻届を取りに行って、それから仕事して、人生で最も重要任務なので帰りますって。かっこいいよね、エド……その人」

義兄さん

「それで、アメリーに結婚を申し込んだ時のことを思い出して。あんな、天才でも求婚は緊張するんだから僕はもっと良い夫になるために努力しなきゃ、結婚できたことで安心してしまってたと反省して。ごめんね。」

「その人、緊張してたんですか?」
ライラが聞くと、義兄は嬉しそうに笑った。

「うん、部署に戻ってきた時は葉っぱがついてたし壁にぶつかったり、書類の向きを逆にして読んだりしていたらしいよ。」

ライラの顔が赤くなる。

「あれ?僕何か変なこと言った?」

姉が義兄の肩をポンポン叩く。

「あなた、憧れの人の手助けをしたかもしれないわよ」

「どういうこと?」

「エドガー様が求婚したのはライラよ」

「えええええええ!?」

ライラより赤くなる義兄。

そのあと大声を出したことをご近所に謝って、お茶を入れて座った。

「そんなことがあるんだね」

「私もビックリしたところよ」

すっかりケンカのことは忘れたらしい姉夫婦。
自分自身も求婚されたことは信じられないくらいなので納得できる。

「神童エドガー様は、今まで女性の影がなかったから皆おどろいてるけどね。多分浮気もしないし誠実な方だと思うよ。」

義兄はファンのようです。

「でも、そんな方だと妬みがあるんじゃないかしら。お仕事も忙しいだろうし。ライラ、お返事はよく考えてお互いを知ってからでいいんじゃない?」

姉は少し心配なようです。

「エドガー様は優秀な方だから、忙しい部署にいらっしゃるのかしら。ご飯も食べられないくらいお給料の低いところで上司に妬まれているのかしら。体を壊さないか心配だわ」

ん?何いってんのこの娘

姉夫婦は顔を見合わせた。
エドガー様だよ?
王宮勤めだよ?
多分ものすごく給料もらってるはずだよ?
侯爵家嫡男だよ?

「ライラちゃん?お給料は心配しなくても……いたっ」

アメリーは旦那の足を踏んだ。テーブルに隠れて見えない。

「ライラが勘違いをしていたとしても、エドガー様が訂正せずそのままにしているということは、もしかしたら、家名や役職ではなくて自分自身を見て決めて欲しいということなのかもしれないわ」

「家名と役職なしでも、あの頭脳と顔だけでも俺が女に生まれていたら惚れるけどな。かっこいいじゃんか、エドガー様。」

「まあ、少し近づき難いけどね。ライラを見初めるとはなかなかいい趣味してるわね、エドガー様」


「お姉ちゃん、お義兄さん、心配してくれてありがとうございます。
私、お仕事で大変な思いをされているエドガー様を支えたいと思う気持ちはあります。
でも、好きかどうかはわからなくて。
お姉ちゃんたちは、結婚前にも出掛けたり家を行き来して、とても幸せそうだったわ。自分がそういう気持ちになってから結婚を考えたいと思うんだけど、待ってくださいというのは失礼かしら」

「正直にそのままライラの気持ちを伝えたらいいと思うわよ?」

アメリーはライラの手を握った。

「さ、帰りましょ」

姉はさっさと旦那の首根っこを捕まえて帰っていった。

馬車の中で、
「アメリー、前にライラちゃんにひどいことを言ってごめんね。平民と結婚するんじゃないかとか。援助しないとか。
別に、エドガー様が現れたからじゃないんだけど、今言っとかないと縁が整ってから言うのは、ズルいから」

ぼそぼそ、と窓の方をむいて話し出した。

「アメリーとライラちゃんは似ているよ。アメリーも僕なんかに優しくしてくれた。誰にでも優しいけど、一回でも優しくされた方はすごく好きになってしまうんだよ。
アメリーも情にほだされて、僕を断れなかったし。もっと高位貴族の子息からも誘われていたのに。ライラちゃんも強く押されたら流されそうって思ったんだ。」

正面から、しっかりと目を見て謝った。
「ごめんね」

アメリーは、旦那のお腹にグーパンチを入れた。

甘めに。

「バカね。私は流されたんじゃなくて、選んだの。
あなたが良かったのよ。
ほんっとバカなんだから。
ライラも、ちゃんと幸せになる道をわかってて選べる子よ。

多分。エドガー様のことをなんで下っぱの文官と誤解できるのか不思議だけど、人間の本質はちゃんとわかる子よ。」


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