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買い物

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翌日カインとミラは買い物に出掛けていた。
ワイアット邸から馬車で出掛けた。
始めは馬車を使うことを遠慮していたミラも、荷物が増えるからと言ったら納得してくれた。

「カインさんは乗り合い馬車や鉄道は乗ったことがありますか」

街を見ながらミラが尋ねた。
「そうですね。学園には鉄道で通っていました。」

「学園!良いですねえ。楽しかったですか?」

そんな風に期待を込めて聞かれても、淡々と過ごしたような気がする。

「お友達と帰りに街で遊んだり買い物したり、スイーツを食べたりしました?」

「いや、そういう人たちもいましたが。私はあまり。女子生徒はしていたようですね。話を聞いたことはあります。」

言いながら、ミラの顔が少し曇ったの理由がわかった。
この子には、そういった可能性が今まで無かったんだ。ギリム様が言っていたじゃないか。恋愛小説を読んでいたと。
普通の若い子が経験するようなことを、知らないままなんだ。
「あの、男女交際は……」
「もし良かったら、私とそういうことをしてみますか。練習だと思って」


ん?

お互いに、聞いた内容が意外だったので止まった。

「えっと、その」

「見事に被りましたね。先にミラさんからどうぞ」

「いえ、良いです。言い直すほどのことでは。カインさんから」

「私とそういうことをしてみるのはどうかと言いました。」

「えっ!」

ミラが赤くなった。

「いえ、それは申し訳ないです」

「構いませんよ、師匠も居なくて暇はあるので」

「暇だからといってその、男女のそれは」

カインはミラが勘違いをしていることに気づいた。けれど、そのままにした。

「男女交際に興味があるんですか」

「……はい。学園を舞台にした小説を読んでいました」
頬を両手で押さえてミラが観念したように言う。

……可愛い……なんだこの生き物。
学園にいた女子生徒はいつでも対等で、気が強く、ワイアットを紹介しろとうるさかった。

「私は経験ありませんが、同級生の中には早いうちからそういう仲の人もいました。男女数人で遊びに出掛けていて、卒業後に恋人になった人もいますね」

ミラがキラキラとした瞳で聞いている。

「買い物をしたり、甘いものを食べに行ったり
まずは王都を楽しんでください。
恋愛は人によって違いますから」

「はい。あの、学園の話をもっと教えてください」

馬車の中でミラのよく変わる表情をみていたら、
次々と教えてやりたい気持ちになって普段よりも饒舌だった。

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