ものすごく不本意そうな顔をしながら兄弟子が溺愛してくる話

仙桜可律

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ミラの買い物

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「ちょっと待ってミラちゃん」

カイン達と別れてやってきたのは下着屋。エミリーが連れてきた。
予算もあるだろうし、まずは下着から。他の服はリーズナブルな店もあるし、古着屋も教えてあげる。でも下着だけは今日買っちゃいましょう。

そう言って連れてきた。
店内にある可愛いデザインの下着を珍しそうに見る様子を見て、少し不安になった。

「もしかして下着を買うのは初めて……?」

「はい、田舎でしたので」

「ミラちゃん、これはダメだわ」

色気もなにもない白のシャツ。
布で胸を巻いている。
布を外すとはち切れそうな胸が飛び出した。

「走ると邪魔なので巻くように近所のおばさんに教えてもらいました。」

「一緒に住んでた師匠って男性だったっけ」

「そうです。」

これは店員さんに採寸してもらわなければ。試着室に呼んで、お願いした。

「こんなに素晴らしい胸を若いうちから押し潰すなんて、下着屋として許せません!」
店員さんも色々と持ってきてくれた。
少しだけ傷のある下着を
セールで売るために置いてあるらしい。
そこから何点か持ってきてくれた。
 
「可愛い……エミリーさん、可愛いものを身に付けるとそれだけで可愛くなれる気がします」

「ミラちゃん、可愛いいい!
で、カインのことはどう思ってるの?」

「どうって、親切だな、って思ってます」

「まだそこか……!」

そのあとは洋服屋にいって試着した。ブラウスを二枚、ワンピースを一枚。古着屋でスカートを二枚。
「エミリーさん、私こんなに楽しい買い物初めてです」 
「私もよ!少しベンチで休もうか」

噴水の周りにベンチがある。
エミリーはそこで待っててとミラに言って、屋台に行った。
ジュースとドーナツを持って戻ってきた。

「はい、ケーキもいいけど、このドーナツも美味しいのよ」

「ありがとうございます。お金……」

「いいのいいの。あと
、ちょっと髪の毛編んであげる。さっき似合いそうなリボンがあったから」

そう言って慣れた様子で髪を編み始める。

「私ね、妹が欲しかったの」

白いリボンを編み込んで、耳のしたで長く垂らした先が揺れる。

「ミラちゃん、可愛い!まだしばらくこっちに居るんでしょう?また遊びに行こう」

「エミリーさん、何から何までありがとうございます。」

そこからカイン達を探した。
エミリーの、言ったようにケレスのよく行く店は、テラスのある酒場だった。

「いつも買い物を待たされるから、ここに居ることが多いんだよ」

ピザとナッツとビール。

ケレスとカインは少しお酒を飲んだようだ。

興味深そうにみるミラに、
「酒はダメですよ。」
とカインがグラスを避ける。
「僻地で果実酒と乳酒は飲んでました」

「それは寒さ対策だから許されてたんだね」

ケレスも僻地に行った騎士から聞いたことがあるらしい。

「王都には楽しそうなものがあるので、早く大人になりたいです」

ミラが頬を膨らませた。
手を伸ばして頭を撫でてやる。
「あら」
エミリーがニヤニヤしている。
しまった、という顔をしたけれど、カインを見て更にケレスもニヤニヤしている。

「ミラ、馬車に乗ってください。俺は荷物を乗せるから」

ミラを乗せてから、二人に向き直る。

「あのな、一応念のために言っておくけど。別に変な意味はないからな。さっきのはつい、手が」

「はいはい」

エミリーがニコニコしている。
「わかってないだろ、ミラは客人で、」

「五回よ」

「何が」

「ミラちゃんと買い物してて男性に声をかけられた回数」

「!」

「可愛いうえに、キョロキョロしてるし慣れてないし田舎から出てきました!ってわかるから、親切心と下心のある男が見とれてたわよ。
カイン、頑張りなさいね」

ふっふっふ、とエミリーは笑って馬車に乗った。



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