モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第1章 悪役令嬢は目立ちたくない

第17話 湖でパニック

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 (な、何、こいつ?!腹立つ~~~!!そりゃね、アリアナは背も低くて、幼児体形で、出るとこ出てなくて幼く見えるわよ!)

 ・・・なんだか自分で言ってて悲しくなってきた。でもここまであからさまに人からイジられたのは初めてで、

 「あ、貴女ねぇ!いくらなんでも言い過ぎではないですか?」

 「あら、本当の事を言い過ぎたかしら?ごめんあそばせ」

 「・・・・!!!」

 私が歯噛みしていると女生徒はさらに続けた。

 「おお、怖い。この方私達を睨んでますわよ?」

 「ほんと、さすがお育ちの悪い方のお友達ですわね」

 「この方も庶民なのかしら?」

 「そうかもしれませんわね。おほほほほ・・・」

 (こいつら~~~~!)

 なんて嫌みな奴らだと思い、言い返そうとした時だった。

 「アリアナ様に失礼な事を言わないでくださいっ!」

 嘲笑する女生徒達を遮って、リリーが叫ぶように言った。

 「私の事を悪く言うのはかまいません。でもアリアナ様を傷つけるのは許せません!」

 リリーの言葉に女生徒達が気色ばむ。

 「な、なにを生意気に・・・」

 「そうよ、平民のくせに!」

 けれどリリーはひるまなかった。

 「貴族なら人を傷つけるような事を言っても良いのですか?人に対し、失礼な態度をとっても許されるのが貴族なのですか?だとしたら、私はそんなものになりたくありません。貴族とは他の人より重い責任を担っていて、人を守る立場であるはずです。だからこそ平民より良い暮らしが出来るのではないのですか?私にはあなた達がそうだとはとても思えません!」

 真っすぐに女生徒達に向かって言い放った。

 (ふぉ~!か、か、かっこいい~~~!リリー素敵!最高!)

 私は横でリリーの雄姿に見とれていた。

 (これぞヒロイン!さすが聖女候補!)

 だけど言われた方はそうではなかった様で、女生徒達は怒りのあまりに顔を真っ赤にさせると、

 「よ、よ、よくも平民の分際で・・・この・・・この無礼者っ!」

 「えっ?」

 女生徒の一人はボートのオールを持ち上げると、あろう事かこちらに向かって投げつけてきたのだ。
 
 「うそっ!」

 それをなんとか避けようとした私は、ボートの上で思い切りバランスを崩してしまった。

 (ヤバいっ!)

 「アリアナ様っ!」

 スローモーションのように手を伸ばすリリーを見ながら、

  バシャンッ!

 私・・・湖に落ちてしまった。

 「う・・・ごぼっ!」

 思いっきり水を飲んでしまう。

 そういえば私って泳げないんだっけ・・・。

 (あ・・・これは詰んだ)

 半分パニック、半分諦めの気持ちで手足をバタバタさせていると、どう言うわけか突然、私は一気に水面に引き上げられた。

 「う、ゲホッ、ゴホッ、ゴホッ・・・・」

 ボートの上に引っ張り上げられ、思いっきり咳込んでしまう。目から涙があふれてくるし、・・・やだ鼻水が・・・

 「大丈夫かっ!?」

 「あ、ありが・・・ゴホッ、ゴホッ・・・」

 「無理して喋らなくていい。落ち着いてゆっくり息を吸うんだ」

 そう言って背中をさすってくれる。そのゆっくりしたリズムに少しずつ落ち着き、呼吸も楽になってきた。

 ハンカチを渡されたのでそれで顔を拭き、ついでに鼻もかんだ。うん・・・、洗って返さなきゃね。

 「アリアナ様!大丈夫ですかっ?アリアナ様っ!」

 少し離れた場所でリリーの声がする。顔を上げると私達が乗っていたボートに一人しゃがみ込んでいる、青い顔をしたリリーがいた。そしてその右の方には、焦った顔をした女生徒達のボートもある。

 (・・・あれ?じゃ、私が乗っているのは誰のボート・・・?)

 不思議な気持ちで振り返ってみると、私の背をさすっているずぶ濡れのディーンと目が合った。

 「ディ・・・!ひっ、ゲホッ、ゴホゴホッ」

 折角落ち着いてきたのに、別の理由で咳込んでしまった。

 横目で様子を伺うと、ディーンの横には第二皇子のパーシヴァルまで居るではないか!

 (こ、これって一体、どういう状況?!?)

 逃げねばと思いつつも身体は動かず、それに加えて目の前がぐるぐると回りだして・・・

 「う、う~ん・・・」

 湖に落ちたショックのせいか、はたまた状況による緊張のせいか、私はアリアナになってから二度目の気絶をしてしまった。



 ガタガタというリズミカルな音。そして温かい毛布の感触。

 気が付いたら馬車の中だった。

 「アリアナ様!気が付かれましたか?」

 向かい側の席からミリア、ジョージア、レティシアが心配そうにこちらを見ている。

 クリフとノエルは居なくて、代わりに担任のエライシャ先生が私の隣に座っていた。私は毛布で体をくるまれて、エライシャ先生に膝枕をしてもらっていたのだ。

 「・・・エライシャ先生・・・」

 私の口から出た声が思いのほか弱々しかったので、自分でも驚いてしまった。

 身体が凄く重いし、なんだか頭も痛い気がする・・・。

 「喋らなくて良いですよ。湖に落ちて濡れたせいか、熱がありますからね。寮に着くまでこのままゆっくり寝ていなさい。」

 「・・・はい・・・」

 普段は厳しめのエライシャ先生の声がとても優しかった。私はその声になんだか安心し、そのまま眠ってしまった。
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