モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
19 / 284
第1章 悪役令嬢は目立ちたくない

18

しおりを挟む
次に私が目が覚めたのは、寮の自室のベッドルームだった。まだ涼しい頃に湖に落ちたせいだろう、風邪をひいてしまったのだ。

私は、1週間学校を休んだ。

眠っていて会えなかったのだが、熱があった間、ミリア達や、リリー、クリフやノエルもお見舞いに来てくれたらしい。兄のクラークは、私にそのような友達が出来ていたことに驚き、感動し、そして喜んでくれた。

4日目の日曜日の朝には熱は下がり、月曜日に学校に行こうとしたのだが、過保護な兄や使用人達に反対され、寮のリビングで自習する事になった。

勉強しながら、なんとなくピクニックの時の事を思い返していた。

(「ドキドキハプニングピクニック」のイベント・・・ヒロインの為のものなのに、なんで、私が湖に落ちるのよ・・・。)

ピクニックで湖に落ちた時、どうやら私は婚約者のディーンに助けられたらしい。私とリリーが、あのいけ好かない女生徒達と言い争っていた時、どうやらディーンとパーシヴァルもボートに乗って、私達を(というかリリーを)追いかけてきていたらしいのだ。

(なんてしつこい!そんなに、リリーが心配なのかしら?やっぱり私がまだ意地悪すると思っているのね・・・こわっ。)

不覚にも気を失った私を、ディーンが岸についてからも運んでくれたらしい。これはリリーが兄に伝えてくれたことだ。

「あ~あ、もう!ディーンには絶対近づきたくなかったのに・・・。」

そしてそれだけではない。

(私は目立った。絶対目立ってしまった。)

「勉強以外では目立たないって、決めてたのに・・・。」

私が小声でぶつぶつ言っていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

「誰かしら?」

そういえば、もう学校の授業が終わっている時間だ。

「アリアナ様、ご友人がお見舞いにいらっしゃいましたが、いかがいたしますか?」

メイドのマリアがそう聞いてきたので

「ありがとう、こちらにお通しして頂戴。」

そう言って、私は勉強道具を机の上から片付け始めた。

「アリアナ様、お加減はいかがですか?」

「もう、起きられても大丈夫なのですか?」

そう言いながら、ミリア、ジョージア、レティシア、そしてリリーが入ってきた。

「皆様、ありがとう!もうすっかり熱は下がりました。お兄様が心配して学校に行かせてもらえないだけなのです。」

「あまり、無理はなさらない方が良いですわ。もうすぐ中間テストが始まりますし、ちゃんと養生なされた方が良いですわ。」

ミリアの声に、皆うんうんとうなづいている。

「でも、学校に行けないと授業に遅れてしまいそうで・・・、わたくしは只でさえ、1カ月遅れで入学していますもの。これ以上、休みたくはないのです。」

「あら、アリアナ様なら絶対大丈夫ですわ!」

ジョージアが勢いよくそう言うと、

「そうそう、授業中の先生の質問に、答えられなかったことが無いじゃないですか。」

レティシアも、優雅に笑いながらそう言う。

この二人ってタイプが全く違ってて対照的だけど、気が合うみたいで仲がいい。そして、二人を上手くまとめているのがミリアだ。

(ミリアは社会人になったら、良い上司になりそうなタイプだよな~。)

そんな事を考えてたら、

「アリアナ様は、頭も良いんですね。」

と、リリーが感心したように言うので、慌ててしまった。

「頭が良いわけではないですよ。ガリ勉しているだけなのです。それに・・・『頭も』って言い方はおかしいですよ。他に取り柄が無いですもの。」

「「「「何を仰るんですか!?」」」」

4人の声が勢い良く、きっちり揃ったので、思わずのけ反ってしまう。

「アリアナ様はお可愛らしいです!」

「そう!、それにお優しいですし!」

「しかも努力家で!」

「公爵令嬢様なのに、まったく偉ぶったところなくて!」

ミリア、ジョージア、レティシア、リリーが身を乗り出して、食い気味でそう言うので、ますますのけ反ってしまった。

「あ、ありがとう・・・皆様」

皆の目ががぎらぎらしてて、ちょっと怖い・・・。話を変えよう。

「そ、そうそう、先ほど仰ってた、中間テスト!」

この学校は2学期制で、4回のテストの結果と実技の成績で2年のクラスが決まる。

「もう、あと10日後ですよね。どんな問題が出るのでしょう?」

そう言った私にミリアが、

「ほとんどの先生は、例年とさほど変わらない問題らしいですよ。アリアナ様はクラーク様がいらっしゃるから、去年の過去問はお持ちですよね?」

(過去問!?)

「い、いいえ!持っていないです。お兄様に聞いてみないと。」

「きっと、クラーク様なら、アリアナ様の為に保存していると思いますよ。でも・・・、もし宜しければ、アリアナ様、私達とご一緒に勉強しませんか?私は兄弟が多いので、兄や姉から過去問をたくさん貰ってるので。」

おお!友達と一緒に勉強!憧れの学園ライフだわ。

「良いのですか!?助かります!ありがとうございます。」

「いえいえ、アリアナ様と一緒に勉強できれば、私達も色々教えて頂けますし嬉しいですわ。・・・それから、その・・・。」

ミリアはちょっとためらいながら、

「その・・・宜しければ、リリーさんも一緒に勉強しませんか?」

「えっ!?私も?」

「ええ、お嫌かしら・・・?」

「い、いいえ!嬉しいです!宜しくお願いします。」

リリーも、ミリアも頬をうっすら紅潮させている。

ふふっ、良かった。なんだか、皆友達になれたみたいで。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...