モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
29 / 284
第2章 悪役令嬢は巻き込まれたくない

4

しおりを挟む
まず、ヒロインは同じクラスで出会ったクリフが、無口でクラスの誰とも関わろうとしない事が気になる。

(だからクリフを攻略する場合は、こっちから積極的に話かけるのがスタートなのよね。)

最初は全く相手にしてくれなかったクリフだが、ヒロインの明るさ、優しさに段々と心惹かれていくのだ。

(でも、クリフは自分が前皇帝の隠し子である事と、そして母親が無残に捨てられ悲しみのあまり亡くなってしまった事を聞いてから、今の皇族を酷く憎むことになる。だから、彼らに復讐しようと思っているのよ。)

そんなクリフを利用しようとしているのが、彼の叔父であるダグラス・アバネシー子爵とその息子。そいつはクリフとは従兄弟になるわけだが、

(裏庭で話していたウザ声がきっとその従兄弟ね。確か4年生ぐらいだったはず。さっきの話の内容からすると、クリフに情報を与えたのはあいつだ。)

ダグラス達のたくらみは恐ろしいものだ。彼らは裏の組織とも結託し、今の皇太子の暗殺を計画している。

第二皇子のパーシヴァルがいるが、彼の母は平民で身分が低い・・・。そうなると、後ろだて次第では、今の皇帝の異母弟にあたるクリフが皇太子になる可能性も出てくるわけだ。

クリフを皇太子に据えた上で、ダグラスは自分の息子をウォーレン侯爵の後継ぎにしようとしているのだろう。そして運良くクリフが皇帝になったあかつきには、公爵位を得る事など夢見ているのかもしれない。

(かー!、悪党の考える事って、ほんっとロクでもないわぁ!。殺される皇太子の身になってみなさいよ!それにこんな悪事に加担させられるクリフが不憫すぎるって。)

クリフは自分の出生の秘密を知ってしまった。このまま放っておくと、クリフの復讐劇が始まってしまう。

(ゲームの2部で見たような暗い瞳の少年になってしまうのだろうか?ピクニックであんなに楽しそうに笑っていたのに・・・。)

そう思うと、心がずんっと重くなった。

「どうやったら、止められる?」

(・・・いやいや、ヒロインでも無い、ただの悪役令嬢(しかもモブ)の私に、何が出来るってのよ?)

ヒロインは彼の心に寄り添う事で、彼の心の中に渦巻いている復讐心を解いていく。ハッピーエンドではクリフが皇族の皇子達と協力して、叔父達のたくらみを阻止するんだったっけ?

(今から、クリフ×リリーを目指してみる?でもリリーを危険に晒すのは・・・。)

選択肢を間違えるとリリーは殺されてしまう。しかも私は・・・、

「ああああ、クリフの攻略は成功したことが無いのよぉ~~~!」

もう、これぞ八方ふさがり!私はテーブルに突っ伏すしかなかった・・・。



「く、暗っ・・・。」

次の日、学校で見たクリフの様子は明らかに沈んでいた。

彼の周りだけ、どんよりした黒いオーラが漂っているようだ。

(どうしよ?完全に2部のクリフに近づいている。)

恐らく、このまま何もしなければクリフはアバネシー子爵の策略で皇太子の暗殺に加担する。そして成功しても失敗しても、結局その罪で処刑される運命なのだ。

(クリフがどうなったとしても、アリアナの運命には関係ない。リリーも関わらなければ、皇太子の暗殺も、クリフの処刑も単に皇国の事件として過ぎていく・・・でも。)

「寝覚めが悪いっ!悪すぎるっ!」

「どうなさいました?アリアナ様。」

「あっ、ミリー。う、ううん、なんでも無いのです。おはようございます。」

「おはようございます。アリアナ様。」

ミリーの後ろで弟のノエルも顔を出し、いつもの優しい顔で笑う。

「おはよう、アリアナ嬢。おっ、クリフ、今日は早いな。おはよう!」

「ああ・・・。」

クリフの返事には力が無く、顔も上げない。

「どうした、クリフ?体調でも悪いのか?」

「いや・・・。」

クリフはノエルに色々話しかけられても、ずっと生返事を続けている。

授業中もずっとそんな様子で、先生に当てられても「分かりません・・・。」とボソッと返すだけだった。成績の良いクリフには珍しい事で、ノエルやミリア達も心配そうに見ていた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...