59 / 284
第3章 悪役令嬢は関わりたくない
9
しおりを挟む
その夜、女子は全員、こっそり私の部屋に集まった。
そして、
「借りてきました。」
私は別荘に置いてあった、兄の昔の服を、メイドに運んでもらって持ってきた。
「ありがとうございます!アリアナ様。ノエル様の服だと少し小さくて・・・。」
「ノエルはチビだからね。」
ミリアは弟に辛辣である。
レティシアは喜んで、持ってきた服を受け取った。
「さぁ、ジョー、グローシア、着替えるのよ。」
「ほーい」
「ク、クラーク様の服・・・。」
何をするかと言えば、ジョーとグローシアに男装させるらしい。
(確かに二人とも、女子にしては背が高いし、すらっとしてる。顔立ちもきりっとしているから、似合うかも?)
二人は衝立の陰で兄の服に着替え、レティシアの指示で、髪も後ろで縛った。少し化粧もしているようだ。
「うん・・、思った通りだわ!二人とも似合ってますわよ!」
レティが満足そうに頷いた。そして両手の親指と人差し指で四角を作って片目で覗いた。
「いいわ、すごく絵になる。さっ、こちらに並んでみて!」
二人は、私達の前に並んだ。
(お、おおーっ!)
カッコいい男の子が、目の前に立っていた。赤毛で青灰色の明るい瞳の元気そうな少年と、細かくウェーヴしたグレーアッシュの髪に、はしばみ色の瞳の、少し神経質そうな少年。
「ええ!?、驚いたわ!。素敵じゃないの!」
ミリアが目を丸くして、少し頬を紅潮させた。
「本当です!。良くお似合いです。」
リリーも目を輝かせている。
「そう?」
ジョージアがそう言って、ちょっと格好つけてポーズを決める。
「キャー!」
私達は思わず声を上げた。
「ちょっと!。あんまり騒いだら、周りに聞こえてしまいますわよ。」
そう注意しながらも、ミリアも興奮気味に笑っている。
「凄いです。レティのセンスも素晴らしいわ。」
私は感心して二人を眺めた。何着か持ってきた服の中で、二人に似合う様に組み合わせたのはレティシアだ。男の子っぽく見せるお化粧も、なんだかこなれている。
「お褒めて頂いて嬉しいですわ。さっ、ではアリアナ様とリリーも一緒に並んでください。」
「えっ?」
「はい?」
リリーと私は訳が分からず、ぽかんとした。
「ジョーの横にはアリアナ様。グローシアの横にリリーですよ!並んでみてください。」
私達は戸惑いながらも、二人の横に立った。
「良いですわ!。では、ジョー!。アリアナ様を後ろから抱きしめて!。そうじゃなくて肩の上から手を降ろすように・・・、ちょっとそれじゃアリアナ様の首を絞めちゃってるわよ!。」
(・・・うん・・・ちょっと苦しかった・・・。)
ジョーはレティシアに手取り足取りして貰い、なんとかポーズが決まった。
「こっちは良いわ。リリーとグローシアは壁際に寄って頂戴!。そう!。で、リリーは壁を背に。グローシアは片手をリリーの頭の横について。・・・良いわ!イメージ通りよ。」
レティはまた、親指と人差し指で小窓を作り、こちらを覗いている。私は混乱しつつも、自分達がしているポーズに見当がついた。
(こ、これってバックハグと壁ドンじゃん!。なんで私達こんな格好を・・・?もしかしてレティって・・・)
レティシアは私達の困惑をほったらかし、おもむろにスケッチブックを取り出した。そして、真剣な表情で鉛筆を動かし始めたのだ。
「ちょっと!レティ、何してるのよっ!?」
ミリアがスケッチブックを覗きこむ。そして、眉をピクリと動かし、
「絵を描いてるの?・・・待って、これって・・・。」
(う・・・、やっぱり・・・。)
「レティ!、もしかして裏の肖像画って、あなたが描いてるんじゃないの!?」
ミリアが呆れた声を上げた。
「私だけじゃないわよ。」
レティシアはスケッチブックに顔を向けたまま、さらっと答えた。
「もう!・・・先生方にバレない様にしなさいよ。」
「大丈夫!先生にもお客がいるから。」
(おいおい、それって、違う意味で大丈夫じゃないよ・・・。)
由緒正しきアンファエルン学園。それで良いのか?と心配になる。
「あ、あの・・・、私達、いつまでこの恰好でいたら・・・?」
リリーが恐る恐るそう尋ねた。
「大丈夫!デッサン取ったら、後はイメージで描けるから!」
「わ、わたくしは、どちらかと言えば、アリアナ様とポーズを取りたいのですが・・・。」
「グローシア、動かないで!。身長的にはこの組み合わせがピッタリなの!。」
(まぁ、グローシアの方がジョーよりも、少し背が高いからね・・・。)
背中にホカホカとジョージアの温もりを感じながら、私達はすっかりレティシアのペースにはまってしまった。
その夜、私は神セブンにグスタフが入っている夢と、彼に壁ドンされる夢をみてうなされた。
そして、
「借りてきました。」
私は別荘に置いてあった、兄の昔の服を、メイドに運んでもらって持ってきた。
「ありがとうございます!アリアナ様。ノエル様の服だと少し小さくて・・・。」
「ノエルはチビだからね。」
ミリアは弟に辛辣である。
レティシアは喜んで、持ってきた服を受け取った。
「さぁ、ジョー、グローシア、着替えるのよ。」
「ほーい」
「ク、クラーク様の服・・・。」
何をするかと言えば、ジョーとグローシアに男装させるらしい。
(確かに二人とも、女子にしては背が高いし、すらっとしてる。顔立ちもきりっとしているから、似合うかも?)
二人は衝立の陰で兄の服に着替え、レティシアの指示で、髪も後ろで縛った。少し化粧もしているようだ。
「うん・・、思った通りだわ!二人とも似合ってますわよ!」
レティが満足そうに頷いた。そして両手の親指と人差し指で四角を作って片目で覗いた。
「いいわ、すごく絵になる。さっ、こちらに並んでみて!」
二人は、私達の前に並んだ。
(お、おおーっ!)
カッコいい男の子が、目の前に立っていた。赤毛で青灰色の明るい瞳の元気そうな少年と、細かくウェーヴしたグレーアッシュの髪に、はしばみ色の瞳の、少し神経質そうな少年。
「ええ!?、驚いたわ!。素敵じゃないの!」
ミリアが目を丸くして、少し頬を紅潮させた。
「本当です!。良くお似合いです。」
リリーも目を輝かせている。
「そう?」
ジョージアがそう言って、ちょっと格好つけてポーズを決める。
「キャー!」
私達は思わず声を上げた。
「ちょっと!。あんまり騒いだら、周りに聞こえてしまいますわよ。」
そう注意しながらも、ミリアも興奮気味に笑っている。
「凄いです。レティのセンスも素晴らしいわ。」
私は感心して二人を眺めた。何着か持ってきた服の中で、二人に似合う様に組み合わせたのはレティシアだ。男の子っぽく見せるお化粧も、なんだかこなれている。
「お褒めて頂いて嬉しいですわ。さっ、ではアリアナ様とリリーも一緒に並んでください。」
「えっ?」
「はい?」
リリーと私は訳が分からず、ぽかんとした。
「ジョーの横にはアリアナ様。グローシアの横にリリーですよ!並んでみてください。」
私達は戸惑いながらも、二人の横に立った。
「良いですわ!。では、ジョー!。アリアナ様を後ろから抱きしめて!。そうじゃなくて肩の上から手を降ろすように・・・、ちょっとそれじゃアリアナ様の首を絞めちゃってるわよ!。」
(・・・うん・・・ちょっと苦しかった・・・。)
ジョーはレティシアに手取り足取りして貰い、なんとかポーズが決まった。
「こっちは良いわ。リリーとグローシアは壁際に寄って頂戴!。そう!。で、リリーは壁を背に。グローシアは片手をリリーの頭の横について。・・・良いわ!イメージ通りよ。」
レティはまた、親指と人差し指で小窓を作り、こちらを覗いている。私は混乱しつつも、自分達がしているポーズに見当がついた。
(こ、これってバックハグと壁ドンじゃん!。なんで私達こんな格好を・・・?もしかしてレティって・・・)
レティシアは私達の困惑をほったらかし、おもむろにスケッチブックを取り出した。そして、真剣な表情で鉛筆を動かし始めたのだ。
「ちょっと!レティ、何してるのよっ!?」
ミリアがスケッチブックを覗きこむ。そして、眉をピクリと動かし、
「絵を描いてるの?・・・待って、これって・・・。」
(う・・・、やっぱり・・・。)
「レティ!、もしかして裏の肖像画って、あなたが描いてるんじゃないの!?」
ミリアが呆れた声を上げた。
「私だけじゃないわよ。」
レティシアはスケッチブックに顔を向けたまま、さらっと答えた。
「もう!・・・先生方にバレない様にしなさいよ。」
「大丈夫!先生にもお客がいるから。」
(おいおい、それって、違う意味で大丈夫じゃないよ・・・。)
由緒正しきアンファエルン学園。それで良いのか?と心配になる。
「あ、あの・・・、私達、いつまでこの恰好でいたら・・・?」
リリーが恐る恐るそう尋ねた。
「大丈夫!デッサン取ったら、後はイメージで描けるから!」
「わ、わたくしは、どちらかと言えば、アリアナ様とポーズを取りたいのですが・・・。」
「グローシア、動かないで!。身長的にはこの組み合わせがピッタリなの!。」
(まぁ、グローシアの方がジョーよりも、少し背が高いからね・・・。)
背中にホカホカとジョージアの温もりを感じながら、私達はすっかりレティシアのペースにはまってしまった。
その夜、私は神セブンにグスタフが入っている夢と、彼に壁ドンされる夢をみてうなされた。
17
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる