モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第3章 悪役令嬢は関わりたくない

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その夜、女子は全員、こっそり私の部屋に集まった。

そして、

「借りてきました。」

私は別荘に置いてあった、兄の昔の服を、メイドに運んでもらって持ってきた。


「ありがとうございます!アリアナ様。ノエル様の服だと少し小さくて・・・。」

「ノエルはチビだからね。」

ミリアは弟に辛辣である。

レティシアは喜んで、持ってきた服を受け取った。


「さぁ、ジョー、グローシア、着替えるのよ。」

「ほーい」

「ク、クラーク様の服・・・。」


何をするかと言えば、ジョーとグローシアに男装させるらしい。


(確かに二人とも、女子にしては背が高いし、すらっとしてる。顔立ちもきりっとしているから、似合うかも?)


二人は衝立の陰で兄の服に着替え、レティシアの指示で、髪も後ろで縛った。少し化粧もしているようだ。


「うん・・、思った通りだわ!二人とも似合ってますわよ!」


レティが満足そうに頷いた。そして両手の親指と人差し指で四角を作って片目で覗いた。

「いいわ、すごく絵になる。さっ、こちらに並んでみて!」


二人は、私達の前に並んだ。


(お、おおーっ!)


カッコいい男の子が、目の前に立っていた。赤毛で青灰色の明るい瞳の元気そうな少年と、細かくウェーヴしたグレーアッシュの髪に、はしばみ色の瞳の、少し神経質そうな少年。


「ええ!?、驚いたわ!。素敵じゃないの!」

ミリアが目を丸くして、少し頬を紅潮させた。

「本当です!。良くお似合いです。」

リリーも目を輝かせている。

「そう?」

ジョージアがそう言って、ちょっと格好つけてポーズを決める。

「キャー!」

私達は思わず声を上げた。

「ちょっと!。あんまり騒いだら、周りに聞こえてしまいますわよ。」

そう注意しながらも、ミリアも興奮気味に笑っている。

「凄いです。レティのセンスも素晴らしいわ。」

私は感心して二人を眺めた。何着か持ってきた服の中で、二人に似合う様に組み合わせたのはレティシアだ。男の子っぽく見せるお化粧も、なんだかこなれている。


「お褒めて頂いて嬉しいですわ。さっ、ではアリアナ様とリリーも一緒に並んでください。」

「えっ?」

「はい?」

リリーと私は訳が分からず、ぽかんとした。

「ジョーの横にはアリアナ様。グローシアの横にリリーですよ!並んでみてください。」

私達は戸惑いながらも、二人の横に立った。

「良いですわ!。では、ジョー!。アリアナ様を後ろから抱きしめて!。そうじゃなくて肩の上から手を降ろすように・・・、ちょっとそれじゃアリアナ様の首を絞めちゃってるわよ!。」

(・・・うん・・・ちょっと苦しかった・・・。)

ジョーはレティシアに手取り足取りして貰い、なんとかポーズが決まった。

「こっちは良いわ。リリーとグローシアは壁際に寄って頂戴!。そう!。で、リリーは壁を背に。グローシアは片手をリリーの頭の横について。・・・良いわ!イメージ通りよ。」


レティはまた、親指と人差し指で小窓を作り、こちらを覗いている。私は混乱しつつも、自分達がしているポーズに見当がついた。


(こ、これってバックハグと壁ドンじゃん!。なんで私達こんな格好を・・・?もしかしてレティって・・・)


レティシアは私達の困惑をほったらかし、おもむろにスケッチブックを取り出した。そして、真剣な表情で鉛筆を動かし始めたのだ。

「ちょっと!レティ、何してるのよっ!?」

ミリアがスケッチブックを覗きこむ。そして、眉をピクリと動かし、


「絵を描いてるの?・・・待って、これって・・・。」


(う・・・、やっぱり・・・。)


「レティ!、もしかして裏の肖像画って、あなたが描いてるんじゃないの!?」

ミリアが呆れた声を上げた。

「私だけじゃないわよ。」

レティシアはスケッチブックに顔を向けたまま、さらっと答えた。

「もう!・・・先生方にバレない様にしなさいよ。」

「大丈夫!先生にもお客がいるから。」


(おいおい、それって、違う意味で大丈夫じゃないよ・・・。)

由緒正しきアンファエルン学園。それで良いのか?と心配になる。


「あ、あの・・・、私達、いつまでこの恰好でいたら・・・?」

リリーが恐る恐るそう尋ねた。

「大丈夫!デッサン取ったら、後はイメージで描けるから!」

「わ、わたくしは、どちらかと言えば、アリアナ様とポーズを取りたいのですが・・・。」

「グローシア、動かないで!。身長的にはこの組み合わせがピッタリなの!。」

(まぁ、グローシアの方がジョーよりも、少し背が高いからね・・・。)


背中にホカホカとジョージアの温もりを感じながら、私達はすっかりレティシアのペースにはまってしまった。





その夜、私は神セブンにグスタフが入っている夢と、彼に壁ドンされる夢をみてうなされた。
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