モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第4章 悪役令嬢は目を付けられたくない

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18時50分。

私達はドレスアップして、門の前で集合した。辺りは、待ち合わせしているグループやカップル、会場へ向かう人達でごった返している。


「アリアナ様!。なんて可愛らしいのでしょう!素敵なドレスです!。」

レティは私に会うなりそう叫んで、両頬に手をやった。

「スケッチブックを持って来れなかったのが、悔しいですわ。本当にお似合いです。」

さすがに、パーティ会場に持ち込むのは諦めたらしい。

「そうですか?。母が用意してくれたのですが、自分では良く分からなくて・・・。」

私はメイドに着せてもらったドレスに目をやった。

(生地が良いのは分かるけど。)

「ご存じないのですか!?。このドレス、社交界でも有名なデザイナーの最新デザインですよ。」

「あら、そうなんですか?」

(ほ~お、そりゃ、お金がかかってそうだ。)

確かによく見れば、色んな所に銀糸の刺繡や、レース、宝石なんかも付いている。

(売ったら、良い値段が付くかな?。でも、どんなに綺麗で大人っぽいデザインでも、子供サイズなんだよねぇ。)


実は私、去年から2㎜しか身長が伸びていないのだ。

2㎜だよ!?。

誤差レベルだよ!。


おかげでどんどん皆との身長差が開くばかりだ。しっかり栄養をとって、運動もしているというのに!


やっぱり、乙女ゲームの設定からは逃れられないのか!?。それともまさか、グスタフの呪いとかじゃないよね・・・!?。


(だから、ダンスも出来れば踊りたくないんだよなぁ・・・。高身長のディーンとなんて、大人と子供だって。)

小さい子がお兄さんに踊って貰ってるような、微笑ましい光景にしか見えないんじゃなかろうか?


(それに比べて・・・。)

私はドレスアップした皆をじっくりと見て、感嘆の溜息をついた。

(それに比べて、皆の大人っぽくて、美しい事よ!。色んなタイプの美女の集まりだね、こりゃ。)

通りかかる男子達も、ちらちらとこちらを見ているのだ。


「皆の方が、ずっと素敵だと思います。綺麗で大人っぽくて、よく似合ってます。」

皆は「そんな事無い」と言っているが、私は心底そう思っている。

とくにリリーの美しさがヤバい!。本物の、女神降臨だよ!

(ああ、マジで眼福。ほんと良かったぁ、リリーがパーティに出れて。)


最初、彼女はドレスを持っていないからと、パーティを欠席するつもりだったのだ。

それを、身長が同じくらいのレティシアが、ドレスを貸すことになり、靴はサイズがほぼ同じであるミリアのを履くことになった。そして、アクセサリー類は私のだ。

リリーはそれら全てを完璧に着こなして、誰よりも眩しいほどに輝いている。さっき通りかかった男子なんて、ずっとリリーを見てるもんだから、門の壁にぶつかってたぐらいだ。

(阿保だけど、気持ちは分かる。私だって、ずっとリリーを眺めていたいもん。)

こんなにも美しい彼女を見たら、攻略対象だった3人も、また気持ちが変わるのではないだろうか。

(ゲームでは、1年生終了時に、一番好感度が上がっている攻略対象が、ドレス一式をプレゼントしてくれたんだよね。でも、誰にもそういう雰囲気はなかったんだよなぁ・・・。)

つまり、通常であれば、ディーン、パーシヴァル、クラークの3人のうち、誰かがドレスをプレゼントする筈だったのだ。しかし今回、結局そういうアクションは見られなかった。

(かなり大事なイベントだったんだけどな。リリーがダンスパーティに出る為にはマストだったし、2年生からの攻略にも関わって来るから。)


兄のクラークには、微塵もそんな気配は無かった。グローシアの事もあるから、クラーク×リリー計画がポシャったせいだとは思うのだが・・・。

パーシヴァルに関しては、これは最早、論外である。この世界では彼はディーン以外、誰も見ていないのだ。

と言う事は、残りはディーンしか可能性が無かったのだが、どうも二人は本当に友達以上でも以下でもない様なのだ。


(まさか、1年の終わりの結果がこうなるとは思わなかった・・・。これゲームだったらリセット案件だよ。)

私は思わず、天を仰いだ。


乙女ゲームの中で、誰とも好感度が上がらなかった場合、リリーはダンスパーティに参加できなくなる。その場合、2年生以降のストーリーが、大分変ってしまうのだ。

(まず、第三部には確実に行けない。聖女になるのも難しくなる。それに、新しい攻略者との出会いが全部無くなっちゃうんだよね、確か。)

要は、滅茶苦茶つまらないゲームになってしまうのである。

プレイーヤーによっては、ワザとそういうシチュエーションにして、ひたすら聖女になる事を目指すツワモノもいたみたいだけど、よくやるなぁって、私なんかは思ってしまう。しかも、最初の三人の攻略対象はすぐ好感度上がる設定になってるから、これって逆に難しいらしいのだ。


(だから、こういう事態は予想外。レティが予備のドレスを持っていて、ほんとに助かった。)

淡いグリーンと光沢のある白いスカートのドレスは、レティが着るよりもリリーの方が似合ってそうだ。

(リリーが聖女を目指すなら、ダンスパーティには絶対出ておいた方が良い。それに、私がこのパーティで、どういう結果になるのかも、ヒロインにはちゃんと見届けて欲しい。)

ゲームではこのダンスパーティで、私の悪役令嬢の役目は終わる。ならば、悪役令嬢をやってこなかった私は、ここではどう言う結末を迎えるのか・・・?


断罪は無い筈。


だけど、そう思っていても、怖く無い訳じゃない。

(というか、滅茶苦茶怖い。でも・・・、逃げる訳にはいかない。これはきっと、アリアナと私が乗り越えなくちゃいけないイベントなんだ。)

私は大きく息を吸って、前方の豪華な建物を見据えた。

(さっ、覚悟決めて行くよ!)

私はパーティー会場の、扉をくぐった。
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