モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第5章 悪役令嬢は絡まれたくない

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日曜日の朝、私はメイド達とシェフのスティーブンに、その日の予定を再確認していた。

「10時半に皆様がいらっしゃる予定です。まずはお茶とお菓子をお願いします。そのまま昼食までお話が続くと思いますので、12時半頃、軽食を出して貰いたいのだけど。」

兄のクラークは午前中は、用事があると言って、もう外に出かけている。でもお昼には帰ると言っていたから、一緒に食事ができるだろう。

2年生になってから皆が忙しくなったため、私がゆっくり話を出来たのはクリフだけだった。初日以来、お昼休みと放課後は結局、ほとんどクリフと二人で過ごしている。

授業の合間の休み時間ぐらいしか、皆と話ができず、消化不良な気持ちを抱えているのだ。

(久しぶりに、皆と色々話をしたいもんね。リリーの聖女修行や、ミリア達の話も聞きたいし・・・。)

エメライン王女のお世話係候補になって以来、三人ともあまり元気がない。せめて今日ぐらい、スティーブンの美味しい料理を食べて、楽しい時間を過ごして欲しいと思っていた。
ただし、メインで話し合いたいのは、やはりモーガン先生の事である。ノエルとグローシアにも、あれ以来会えていないし、例の補習がどうだったかも聞きたかった。

それに、クリフの方も、何か進展があったかもしれない。込み入った話が多いから、お昼を過ぎても終わらないかもしれないと思った。

「一応、午後のお茶の用意も、しておいて貰えますか?。日曜日なのに、忙しくさせてしまって、ごめんなさい。」

私がそう言うと、メイドもシェフも、にっこり笑って「全然大丈夫ですよ。」と言ってくれた。

「むしろ、久しぶりに大人数のお食事を作るので、腕の振るいがいがあります!。皆様に美味しいと言っていただける料理を作りますよ。」

スティーブンは腕をまくりながらそう言って、キッチンへ消えて行った。メイドのステラも、

「最高に美味しいお茶を淹れますね。」

そう言ってくれた。

「では、私は早速、テーブルの用意をさせて頂きます。」

メイドのマリアもてきぱきと動き始めた。

(皆、働き者で、本当にありがたいわぁ。)

そんな風に感心していると、突然玄関のチャイムが鳴った。

「えっ?。誰かしら?」

確認に行ったマリアが戻ってくると、

「アリアナ様、ディーン様がお見えです。」

(ん?。来るの早くない?)

「・・・お通しして。」

マリアは慌ただしく小さめのテーブルの準備をし、私はリビングの入り口でディーンを出迎えた。

「ディーン様、どうなさったのですか?。お約束の時間まで、まだ一時間もありますわ。」

「朝早くから申し訳ないと思ってる。だが、どうしても君に、先に話しておきたい事があったんだ。」

ディーンは浮かない顔で、椅子に座った。私はマリアにお茶を出してくれるようにお願いし、テーブルを挟んで彼の前に座った。

「皆が居ては、駄目な話ですか?」

私がそう問うと、ディーンの瞳が複雑そうに揺れた。

「実は、マーリン嬢の事なんだが・・・。」

(おっ!?)

「彼女とは、幼少期から面識があって・・・、何度か私の領に来た事もあるから、そこそこ親しくしていたんだ。」

おっと、そうきたか!、と私は思った。

リリーとディーンが結ばれない時は、ディーンはマーリンと恋人同士って言うのがテンプレだったから、きっと知り合いではあったのだろうと思っていたけど・・・。

「そうですか。マーリンさんは、ディーン様のご友人なのですね。」

「ゆ、友人と言えるほど、付き合いがあった訳では無いのだが・・・。」

ディーンの口ぶりは歯切れが悪くて、何か言い淀んでいるようだ。

「だが、彼女の人となりは、ある程度分かっていると思う。気は強いが、先日の授業の時のみたいに、いきなり人を責め立てる様な人間では無い筈だ。それなのに・・・」

ディーンの様子を見て、私は何となくピンっと来てしまった。もしかしたら、アリアナが無理矢理に婚約する前は、マーリンがディーンの婚約者候補だったのではないだろうか?。

(なるほど・・・、マーリンにとっちゃ、好きな男の子を横取りされた形なわけだ。そりゃ、アリアナの事が大嫌いになっても仕方無いよねぇ。)

マーリンの父は子爵だ。相手が公爵家じゃ、対抗のしようもない。

「分かりました。ディーン様はマーリンさんが、理由も無く、人を攻撃するような方では無いと、仰りたいんですね。」

ディーンを責めるつもりで言ったのでは無かったが、彼は少し慌てた様だった。

「もちろん、彼女が言ってた『不正』など、君がしていない事は分かってる。だが・・・。」

「だが?」

「その・・・君は多分、覚えていないと思うのだが、小さい頃、君とマーリン嬢が揉めた事があったんだ。だから、それでマーリン嬢が、君に悪感情を持ってしまったのだと思う。」

私は一瞬、息を飲んだ。

(来たー!!!。これか!?。ディーンが歯切れ悪かったのは。)

私はがっくりと肩を落とした。
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