110 / 284
第5章 悪役令嬢は絡まれたくない
11
しおりを挟む
日曜日の朝、私はメイド達とシェフのスティーブンに、その日の予定を再確認していた。
「10時半に皆様がいらっしゃる予定です。まずはお茶とお菓子をお願いします。そのまま昼食までお話が続くと思いますので、12時半頃、軽食を出して貰いたいのだけど。」
兄のクラークは午前中は、用事があると言って、もう外に出かけている。でもお昼には帰ると言っていたから、一緒に食事ができるだろう。
2年生になってから皆が忙しくなったため、私がゆっくり話を出来たのはクリフだけだった。初日以来、お昼休みと放課後は結局、ほとんどクリフと二人で過ごしている。
授業の合間の休み時間ぐらいしか、皆と話ができず、消化不良な気持ちを抱えているのだ。
(久しぶりに、皆と色々話をしたいもんね。リリーの聖女修行や、ミリア達の話も聞きたいし・・・。)
エメライン王女のお世話係候補になって以来、三人ともあまり元気がない。せめて今日ぐらい、スティーブンの美味しい料理を食べて、楽しい時間を過ごして欲しいと思っていた。
ただし、メインで話し合いたいのは、やはりモーガン先生の事である。ノエルとグローシアにも、あれ以来会えていないし、例の補習がどうだったかも聞きたかった。
それに、クリフの方も、何か進展があったかもしれない。込み入った話が多いから、お昼を過ぎても終わらないかもしれないと思った。
「一応、午後のお茶の用意も、しておいて貰えますか?。日曜日なのに、忙しくさせてしまって、ごめんなさい。」
私がそう言うと、メイドもシェフも、にっこり笑って「全然大丈夫ですよ。」と言ってくれた。
「むしろ、久しぶりに大人数のお食事を作るので、腕の振るいがいがあります!。皆様に美味しいと言っていただける料理を作りますよ。」
スティーブンは腕をまくりながらそう言って、キッチンへ消えて行った。メイドのステラも、
「最高に美味しいお茶を淹れますね。」
そう言ってくれた。
「では、私は早速、テーブルの用意をさせて頂きます。」
メイドのマリアもてきぱきと動き始めた。
(皆、働き者で、本当にありがたいわぁ。)
そんな風に感心していると、突然玄関のチャイムが鳴った。
「えっ?。誰かしら?」
確認に行ったマリアが戻ってくると、
「アリアナ様、ディーン様がお見えです。」
(ん?。来るの早くない?)
「・・・お通しして。」
マリアは慌ただしく小さめのテーブルの準備をし、私はリビングの入り口でディーンを出迎えた。
「ディーン様、どうなさったのですか?。お約束の時間まで、まだ一時間もありますわ。」
「朝早くから申し訳ないと思ってる。だが、どうしても君に、先に話しておきたい事があったんだ。」
ディーンは浮かない顔で、椅子に座った。私はマリアにお茶を出してくれるようにお願いし、テーブルを挟んで彼の前に座った。
「皆が居ては、駄目な話ですか?」
私がそう問うと、ディーンの瞳が複雑そうに揺れた。
「実は、マーリン嬢の事なんだが・・・。」
(おっ!?)
「彼女とは、幼少期から面識があって・・・、何度か私の領に来た事もあるから、そこそこ親しくしていたんだ。」
おっと、そうきたか!、と私は思った。
リリーとディーンが結ばれない時は、ディーンはマーリンと恋人同士って言うのがテンプレだったから、きっと知り合いではあったのだろうと思っていたけど・・・。
「そうですか。マーリンさんは、ディーン様のご友人なのですね。」
「ゆ、友人と言えるほど、付き合いがあった訳では無いのだが・・・。」
ディーンの口ぶりは歯切れが悪くて、何か言い淀んでいるようだ。
「だが、彼女の人となりは、ある程度分かっていると思う。気は強いが、先日の授業の時のみたいに、いきなり人を責め立てる様な人間では無い筈だ。それなのに・・・」
ディーンの様子を見て、私は何となくピンっと来てしまった。もしかしたら、アリアナが無理矢理に婚約する前は、マーリンがディーンの婚約者候補だったのではないだろうか?。
(なるほど・・・、マーリンにとっちゃ、好きな男の子を横取りされた形なわけだ。そりゃ、アリアナの事が大嫌いになっても仕方無いよねぇ。)
マーリンの父は子爵だ。相手が公爵家じゃ、対抗のしようもない。
「分かりました。ディーン様はマーリンさんが、理由も無く、人を攻撃するような方では無いと、仰りたいんですね。」
ディーンを責めるつもりで言ったのでは無かったが、彼は少し慌てた様だった。
「もちろん、彼女が言ってた『不正』など、君がしていない事は分かってる。だが・・・。」
「だが?」
「その・・・君は多分、覚えていないと思うのだが、小さい頃、君とマーリン嬢が揉めた事があったんだ。だから、それでマーリン嬢が、君に悪感情を持ってしまったのだと思う。」
私は一瞬、息を飲んだ。
(来たー!!!。これか!?。ディーンが歯切れ悪かったのは。)
私はがっくりと肩を落とした。
「10時半に皆様がいらっしゃる予定です。まずはお茶とお菓子をお願いします。そのまま昼食までお話が続くと思いますので、12時半頃、軽食を出して貰いたいのだけど。」
兄のクラークは午前中は、用事があると言って、もう外に出かけている。でもお昼には帰ると言っていたから、一緒に食事ができるだろう。
2年生になってから皆が忙しくなったため、私がゆっくり話を出来たのはクリフだけだった。初日以来、お昼休みと放課後は結局、ほとんどクリフと二人で過ごしている。
授業の合間の休み時間ぐらいしか、皆と話ができず、消化不良な気持ちを抱えているのだ。
(久しぶりに、皆と色々話をしたいもんね。リリーの聖女修行や、ミリア達の話も聞きたいし・・・。)
エメライン王女のお世話係候補になって以来、三人ともあまり元気がない。せめて今日ぐらい、スティーブンの美味しい料理を食べて、楽しい時間を過ごして欲しいと思っていた。
ただし、メインで話し合いたいのは、やはりモーガン先生の事である。ノエルとグローシアにも、あれ以来会えていないし、例の補習がどうだったかも聞きたかった。
それに、クリフの方も、何か進展があったかもしれない。込み入った話が多いから、お昼を過ぎても終わらないかもしれないと思った。
「一応、午後のお茶の用意も、しておいて貰えますか?。日曜日なのに、忙しくさせてしまって、ごめんなさい。」
私がそう言うと、メイドもシェフも、にっこり笑って「全然大丈夫ですよ。」と言ってくれた。
「むしろ、久しぶりに大人数のお食事を作るので、腕の振るいがいがあります!。皆様に美味しいと言っていただける料理を作りますよ。」
スティーブンは腕をまくりながらそう言って、キッチンへ消えて行った。メイドのステラも、
「最高に美味しいお茶を淹れますね。」
そう言ってくれた。
「では、私は早速、テーブルの用意をさせて頂きます。」
メイドのマリアもてきぱきと動き始めた。
(皆、働き者で、本当にありがたいわぁ。)
そんな風に感心していると、突然玄関のチャイムが鳴った。
「えっ?。誰かしら?」
確認に行ったマリアが戻ってくると、
「アリアナ様、ディーン様がお見えです。」
(ん?。来るの早くない?)
「・・・お通しして。」
マリアは慌ただしく小さめのテーブルの準備をし、私はリビングの入り口でディーンを出迎えた。
「ディーン様、どうなさったのですか?。お約束の時間まで、まだ一時間もありますわ。」
「朝早くから申し訳ないと思ってる。だが、どうしても君に、先に話しておきたい事があったんだ。」
ディーンは浮かない顔で、椅子に座った。私はマリアにお茶を出してくれるようにお願いし、テーブルを挟んで彼の前に座った。
「皆が居ては、駄目な話ですか?」
私がそう問うと、ディーンの瞳が複雑そうに揺れた。
「実は、マーリン嬢の事なんだが・・・。」
(おっ!?)
「彼女とは、幼少期から面識があって・・・、何度か私の領に来た事もあるから、そこそこ親しくしていたんだ。」
おっと、そうきたか!、と私は思った。
リリーとディーンが結ばれない時は、ディーンはマーリンと恋人同士って言うのがテンプレだったから、きっと知り合いではあったのだろうと思っていたけど・・・。
「そうですか。マーリンさんは、ディーン様のご友人なのですね。」
「ゆ、友人と言えるほど、付き合いがあった訳では無いのだが・・・。」
ディーンの口ぶりは歯切れが悪くて、何か言い淀んでいるようだ。
「だが、彼女の人となりは、ある程度分かっていると思う。気は強いが、先日の授業の時のみたいに、いきなり人を責め立てる様な人間では無い筈だ。それなのに・・・」
ディーンの様子を見て、私は何となくピンっと来てしまった。もしかしたら、アリアナが無理矢理に婚約する前は、マーリンがディーンの婚約者候補だったのではないだろうか?。
(なるほど・・・、マーリンにとっちゃ、好きな男の子を横取りされた形なわけだ。そりゃ、アリアナの事が大嫌いになっても仕方無いよねぇ。)
マーリンの父は子爵だ。相手が公爵家じゃ、対抗のしようもない。
「分かりました。ディーン様はマーリンさんが、理由も無く、人を攻撃するような方では無いと、仰りたいんですね。」
ディーンを責めるつもりで言ったのでは無かったが、彼は少し慌てた様だった。
「もちろん、彼女が言ってた『不正』など、君がしていない事は分かってる。だが・・・。」
「だが?」
「その・・・君は多分、覚えていないと思うのだが、小さい頃、君とマーリン嬢が揉めた事があったんだ。だから、それでマーリン嬢が、君に悪感情を持ってしまったのだと思う。」
私は一瞬、息を飲んだ。
(来たー!!!。これか!?。ディーンが歯切れ悪かったのは。)
私はがっくりと肩を落とした。
15
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる