モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第5章 悪役令嬢は絡まれたくない

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(やっぱりだよ!。絶対そうだと思ってたんだ。ディーンは揉めたって表現してるけど、恐らくアリアナが一方的にイジメたんじゃ無いの!?。)

ちょっとアリアナ、聞いてる!?と、私は心の中に叫んだ。

「も、申し訳ありません・・・。正直、覚えておりません・・・。あの・・・馬車の事故以来、記憶がどうも・・・。」

「ああ、それは知っている。だから・・・もしかしたら、君は気分を害するかもしれないが、それを承知で頼みに来た。マーリン嬢を許してやってくれないだろうか?。」

ディーンは唇を引き結んで、私から目を逸らせてそう言った。私はやっと彼が、皆より先にやってきた理由が分かった。

(そっか、ディーンがわざわざ二人で話したかった事ってこれなんだ。マーリンの事が心配だったんだ。・・・それに、もしかしたら皆の前で、昔の私の話を出すのを避けてくれたのかもしれない。)

ディーンは多分、マーリンの事を、人としてちゃんと好きだったのだろう。私は目を伏せたままのディーンに、笑いかけた。

「良いですよ。」

「え?」

ディーンは驚いた顔で私を見た。

「許すも何も、あの時私も、結構きつい言い方しましたから。お互い様ですね。」

「・・・アリアナ。」

「昔の事も、謝らなくちゃいけませんね。・・・覚えてないと言ったら、もっとマーリンさんを怒らせてしまいそうですが。」

首をすくめてそう言うと、ディーンは安心したように笑った。

「ありがとう・・・。てっきり君に断れるかと思ってた。」

「だから、ずっと恐い顔してたんですね。」

からかう様にそう言うと、ディーンの顔が少し赤くなった。

「すまない・・・、君が怒るかもしれないと思ってたから。」

「怒りませんよ。きっと私も悪かったのですし、ディーン様が友達を心配するのは当たり前です。・・・なのに、ありがとうございます。あの時、私の味方をして下さって。」

「え?」

「一緒に、通常クラスに行くと言って下さったでしょ?。」

ディーンは苦笑しながら、

「一番、最後だったよ。」

「最後はパーシヴァル殿下ですよ。しかもディーン様にくっついてですから。」

思い出すと、なんだかおかしくなって、二人で笑ってしまった。

「でも、良かったです。ディーン様が、そう言う風に思って下さっていて。マーリンさんの事は気になってましたから。実は、クリフ様には言ってあるのです。マーリンさんと普通に接して欲しいって。」

「えっ!?」

ディーンは本当に驚いたようだった。

「他の皆には、今日お願いするつもりです。教室では言いにくかったので。マーリンさん、この一週間、教室では誰とも話していないのでは無いでしょうか?。短い休み時間も、一人で何処かへ行ってるようですし。」

「ああ・・・、だが、聖女候補の補講では、リリー嬢と二人だから・・・。」

「ええ、リリーは優しいので、マーリンさんとも仲良くしてくれていると思います。」

これについても、リリーに今日、聞きたいと思っていたのだ。
聖女候補の補講では、マーリンはどういう様子なのか?。誰かに操られているような、そんな素振りは無いのか?

(精神魔術の事についてディーンに話すのは、皆が来てからにしよう。説明が二度手間になるもんね。それよりも・・・)

「ディーン様も、マーリンさんに、どんどん話しかけてくださいね。私は立場上、無理なので。でもディーン様とリリーが、マーリンさんと親しくすると、きっとクラスでの雰囲気も変わると思うのです。そもそも、ディーン様はマーリンさんと仲が良かったわけですし。」

「いや・・・そんなに仲が良いと言う訳では・・・」

「きっと、お二人って気が合うと思うんですよね!」

だって、ルート外では、必ず恋人になってたぐらいだから。

(ふむ・・・。昔、意地悪した罪滅ぼしに、ディーンとの仲を取り持ってあげるってのも、アリかもね。そうすれば、私もマーリンと、友達になれるかも!?。だって、マーリンは根は良い子なんだし、私が昔のアリアナとは違うって分かれば、許してくれるかもしれないじゃない?)

昔から好きだったディーンが恋人になれば、マーリンだって即ハッピーだろう。

そんな妄想を繰り広げていたら、ディーンが私を、じっとりした目で見つめていた。

「・・・えっ、ディーン様、何ですか?その目は。」

「アリアナ。君・・・、何か変な事を考えてない?」

「へ、変な事って・・・?」

「私と、マーリンをくっつけようとか・・・。」

「えっ!?。私、声に出てました?」

思わずそう言ってしまうと、ディーンはがっくりと項垂れ、はぁっと、めちゃくちゃ深いため息をついた。

「あ、あのディーン様?」

「・・・忘れてない?。君と私は一応婚約者なんだけど?。」

「そ、そうですが・・・。」

「婚約者に他の相手とくっつけようって・・・ありえるのか?。」

「いや、でも、ほら、一応ってだけで、いつでもポイってできますから。」

そう言うと、ディーンは顔を上げて、キッと私を睨みつけた。

(ひっ!、こわっ)

「ディ・・・ディーン様?」

「いつでもポイ?。君は私をそんな風に思ってるのか?」

普段よりも声が低い・・・。マジで怖いぞ・・・。

「ち、違いますよ!?。ポイってするのは、ディーン様の方です。ディーン様がわたくしをポイって捨てるんです。」

するとディーンが机をバンと叩いて立ち上がった。私は驚いて、身を縮めた。

(ひえっ!。なんで?。お、怒ってる!?)

「私がそんな事、するわけ無いだろう!」

だけど、叫ぶように言ったディーンの声を聞いた時、不思議な事に私はスッと冷静になった。そして、

「しますよ、あなたは。他に好きな方が出来れば、アリアナなど直ぐに捨てます。」

勝手に口から、言葉が零れ落ちた。そんな感じだった。

(嘘つき。どんなルートだって、ディーンはアリアナを選ばないじゃ無いか・・・。)

いかん・・・なんか思考が良くない方に向かっている気がする。一瞬ふらっと目眩の様な感覚がして、私は頭を軽く振った。

「アリアナ・・・?」

顔を上げると、つい今まで怒っていたディーンが、心配そうにしていた。

「・・・すみません、言い過ぎました。」

頭を下げると、ディーンも、

「いや、私も大きな声を出して・・・、悪かった。」

そう謝ってくれた。
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