モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい（完結）

第５章 悪役令嬢は絡まれたくない

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「それが・・・私も最初不安だったのですが、補講で会う時のマーリンさんって、とても良い方なのです。」

「ええっ！？」

リリーの言葉に、ジョージアとディーン以外の皆が顔をしかめた。

「そんな訳無いじゃない！。アリアナ様に、あんな酷い事を言った人よ。」

「そうよ。良い人だなんて、おかしいですわ！。」

ミリアとレティシアはぷりぷり怒ってる。

「アリアナ様のお許しさえあれば、成敗しにいきたいのですが・・・。」

グローシアの背中からは黒いオーラが立ち上っていて、私は慌てた。

「グローシア、成敗は駄目だから！。ミリーもレティも落ち着いて。とりあえずリリーの話を聞きましょうよ。」

リリーはためらいつつ、話してくれた。

「私も、マーリンさんがした事に、腹を立てていました。だから、聖女の補講もちょっと憂鬱だったのですが、補講でのマーリンさん、教室とは全く違うのです。」

私達はリリーの言葉に戸惑い、顔を見合わせた。

「どんなふうに？」

「とても明るい方です。はきはきして、嫌みが無いと言うか・・・。親切にしてくれますし、一緒に授業を受けていて、楽しいくらいで・・・。」

リリーの言うマーリンの人となりは、ゲームでのマーリンそのものだった。

「クラスで居る時とは、まったく違うじゃない。」

ミリアが呆れたように言うと、ジョーはちょっと難しい顔で腕を組んだ。

「クラスでは、あの騒ぎ以降、完全に浮いちゃってるから、周りも話しかけないものね。マーリンさんも、居心地悪くて、自分が出せないんじゃない？」

「当たり前だわ。自業自得よ。」

ミリアは冷たい目をジョーに向けた。

ミリアの言葉に、レティシアとグローシアはうんうんと頷いているが、リリーとディーンの表情は少し曇っている。二人はマーリンの今の状態を、何とかしてあげたいと思っているのだ。

（だから、私が言わないとね。）

「その事なのですが。」

私は片手を上げて、皆の注目を集めた。

「マーリンさんの事ですが、皆にお願いがあります。教室でマーリンさんと仲良くして欲しいの。できれば、どんどん話しかけて欲しいのです。」

「アリアナ様！？」

ミリアとレティが驚いた顔を私に向けた。

「嫌ですわ！。私、あのような方と仲良く出来ません。」

「そうですわ。あんな怖い方に話しかけるなんて・・・。」

私は、二人の言葉にうんうんと頷きながらも、諭す様に言った。

「マーリンさんが、あの様な事をしたのは、実は私も悪かったの。前に、私は（本当は私じゃないけど）マーリンさんと揉めた事があって・・・、彼女が怒るのは当然なのです。実際の彼女は、リリーの言った様に、明るくて良い方だから、ミリー達が普通に接すれば、きっとクラスにも馴染んでいくと思うわ。」

「そんな・・・、アリアナ様は人が良す過ぎますわ。」

「でも、このままだと、クラスの雰囲気も悪いでしょ？。私は嫌われてるから無理だけど、皆にはマーリンさんと仲良くして欲しいの。今のクラスの状態を、マリオット先生もお悩みだと思うから。」

せっかくの上級クラスなのに、あの騒ぎのせいで、まとまりが無く、固い雰囲気が続いている。クラスメイト達はマーリンには近づかないし、私に対する態度もぎこちない。

ミリアとレティシアは困ったように、顔を見合わせた。でも。ジョージアとリリーの顔は少し明るくなった。

「OK、私はそうする。アリアナ様って、やっぱり凄いわね。」

ジョージアはウィンクしながらそう言った。

リリーも、

「アリアナ様、ありがとうございます。」

そう言って笑った。そして、ミリアとレティシアも「アリアナ様がそう仰るなら・・・。」と渋々承諾してくれた。ちらっと見ると、ディーンも少し安心したような顔をしている。

（よし、これで一つ片付いた。）

マーリンの話が出た所で、精神魔術の話もしたいのだけど、まだクリフ達がやってこない。

（遅いな・・・。どうしたんだろう？）

仕方ないので、ミリア達にエメライン王女の話を聞くことにした。

「えっと、ミリア達のお世話係候補の方はどうですか？。色々大変だとは思いますが、順調ですか？。」

「うっ・・・。」

ミリア達3人の顔が、あからさまに曇った。

「先日は、申し訳ありませんでした。アリアナ様。」

「エメライン王女の事をを止められなくて。」

「しかも、びしょ濡れのアリアナ様を、放っていく事になってしまって・・・。」

ミリアは頭を下げながら、ジョージアは頭に手を当てて、レティシアは涙ぐみながら、椅子から立ち上がった。

「えっ！？。それはもう、前に謝ってもらいましたよ。というか、あれは皆さんのせいでは無いでしょ？」