モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
114 / 284
第5章 悪役令嬢は絡まれたくない

15

しおりを挟む
私がそう言うと、ジョージアは苦笑いしながら頬をぽりぽり掻いた。

「いや、まぁ、そうなんだけど・・・。エメライン王女に何も言えなかったし、助けられなかったのは事実だから・・・。」

「そんなの当然ですよ。あの状況では無理です。あの場でエメライン王女に逆らったら、あなた達の方が大変な事になってましたよ。それに、頭から水かけられるくらい、どうって事ないですから。」

そう、悪いのは3人じゃない。あくまで、あのくっそ意地悪なエメラインなのだから。そんな風に思ってると、隣から、なんだか異様な空気が漂ってきた。

(ん?)

顔を向けると、グローシアから再び黒いオーラは立ち昇っていた。

「・・・・どういう事です?。アリアナ様が水をかけられたと言うのは・・・。私は処刑執行人に転職した方が良いでしょうか?。」

グローシアの顔から表情が消え、目からは光が消え失せ、真っ黒に淀んでいる。

「駄目!。駄目だからね!。転職は禁止!。騎士で良いから!」

一生懸命グローシアをなだめて居ると、今度は向かいからヒンヤリした空気を感じる。

「頭から水をかけられた?。それって、どういう事だい?アリアナ。私は聞いて無いけど・・・。」

ディーンの薄っすら笑った顔に、ゾッと悪寒が走った。

「ディ、ディーン様はお忙しくて、お話しする暇が無かったのです。」

「へぇ・・・じゃ、クリフには話してるって事か。」

なんでそこでクリフの名が?!。それに冷気が増したぞ!

「クリフ様にも、は、話して無いです!。そもそも、たいした話では無いので・・・。」

「水をかけられたのが、たいした話じゃ無いのか!?」

(どうして、ディーンが怒るのよ!?)

思わず目を瞑って、身を縮めた私を、隣のリリーが庇う様に抱きしめた。

「ディーン様、落ち着いてください。アリアナ様に怒る事では無いですよ。グローシアも座りましょう。フォークを机に突き刺しては駄目!。」

(ううう、リリー、ありがとう。)

私がヒロインの優しさに浸っていると、ジョージアが突然「決めた!」と大きな声を出したので、皆が彼女の方を見た。

「私、決めたわ。エメライン王女のお世話役、断わる。」

「えっ!」

「ちょ、ちょっと!」

「ジョー!?」

ジョーは紅茶をぐびぐびとあおった。

「止めないで。そもそもお世話係なんて、向いてないし。」

「で、でも、私達の方から断ったら、家の方にも何をされるか・・・。」

レティシアの声が震えている。

「構わない。もうこれ以上、エメライン王女に仕える気はないわ。きっと父や母だって分かってくれる。」

(いやいや、それは駄目でしょ!?)

「ま、待って!ジョー。私はあれくらい、全然気にしてないから。あれ以来、顔を合わせてないから、何もされてないし。」

すると、ミリアが固い表情で口を挟んだ。

「いいえ、アリアナ様。エメライン様は、今後もアリアナ様への嫌がらせを計画しているんです。」

「えっ?」

(なんですと?)

「上級生が開くお茶会に、アリアナ様だけ呼ばない様にするとか。陰で、アリアナ様の悪口を言いふらすとか。」

「そんなの、全然気にしないですよ!。」

(子供がやるレベルじゃん。)

「あげくに、私達に、アリアナ様の机に泥を入れてこいなどと・・・。」

(げっ!)

「・・・教科書を汚されるのは、困るわね。それに、ミリア達にやらせようっていうのは、気に入らない。ごめんなさいね、私の為に、あなた達まで嫌な気持ちにさせて・・・。」

私がそう言うと、しっかり者のミリアが一瞬泣きそうな顔をした。そして、スッと居住まいを正すと、

「アリアナ様。私もお世話係を断りますわ。」

きっぱりとそう言った。

「ミリー!あなたまで。」

レティシアが悲鳴の様な声をあげる。

「私の家は、エメライン王女に睨まれると困るでしょうね・・・。でも、父も母も兄弟も、その為に私の大事な友達を、犠牲にしろとは言わないわ。」

「ミリー・・・。」

(な、なんか大変な事に・・・。)

私は、半泣きのレティシアを見ておろおろしてしまった。でも、レティシアは一度大きなため息をつくと、

「・・・二人が居ないのに、エメライン王女の所に、一人でなんか残れないわ。私もやめる。お世話係、やめるわ!」

そう言うと、泣き出しそうだったくせに、スッキリした顔で笑った。

「だって、お世話係やってると、全然、絵が描けないんですもの!。凄く、ストレスが溜まっていたのよ。」
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

処理中です...