モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
115 / 284
第5章 悪役令嬢は絡まれたくない

16

しおりを挟む
「私も、実は生徒会にスカウトされてたの。お世話係より、そっちの方が断然、面白そうだわ。」

ミリアも吹っ切れた様に笑い、ジョーも、

「誰かにへこへこするのって、向いて無いのよねぇ。侍女になるのだってごめんだわ。あ~やっとスッキリして、お菓子を食べる事が出来る!」

そう言って、ケーキをばくばく食べ始めた。私は三人の宣言に、呆気に取られた。

「そう言えば、ジョーは珍しく、お茶しか飲んで無かったですね・・・。そんなに気になってたんですか・・・」

と思ったが、

(って、いやいや、そういう場合じゃなくて!)

「ちょっと、待って!。本当に大丈夫なのですか!?。お家にまで影響が及ぶなら、考え直してくださいよ!。それに、あなた達まで、嫌がらせをされるかもしれないですよ。」

「構いませんわ。ああ、そうなったら、アリアナ様への嫌がらせが減るかもしれませんわ。」

名案を思いついたようにミリアが目を輝かせたので、私は何も言えなくなってしまった。

(エメラインってゲームじゃ、結構えげつなかったんだからね!。自分の取り巻き使って、ヒロインに、それはそれは酷い仕打ちをしたんだから。取り巻き達も、結構強くって、魔術を使ってきたりして・・・)

そこまで考えて、ハタッと思い当たった。

(あれ・・・?。もしかして、ゲームでリリーに嫌がらせしてた、エメラインの取り巻きって、今のお世話係候補達よね・・・。ってことはミリア達も?。)

ゲームのエメラインの取り巻きは5、6人。名前の記載は無くて、取り巻きA、B、C、D・・・って書かれてた。

(確か、取り巻きの中には、特に魔力の強い三人の女生徒が居たっけ・・・、という事は、あれがミリア達か!?)

トラヴィス・ルートでは、選択によっては、エメライン達とのバトルになる。その時に手こずる相手が、この三人なのだ。

(もしこの先、リリーがトラヴィスを選んだら、ミリア達とバトルになる可能性も・・・。)


なんて恐ろしい展開なのよ!


だとしたら、エメラインのお世話係は、やっぱり辞めて貰った方が良いのかもしれない。そんな風にぐるぐる考えていたら、リリーと目が合った。彼女は私の心の中を知らないだろうに、私を安心させるように、ふわりと笑った。その途端、心が温かくなり、思考も落ち着いてきた。

(はぁ・・・聖女の微笑みだわ。そうね・・・やっぱり、リリーの為にもエメラインの味方は、減らしておいた方が良いよね。それにミリア達も、悪い事に加担するのは辛いだろうし。)

「分かりました。もし、あなた達が、エメライン王女に何かされたら、教えてくださいね。私の方でも出来るだけ、手を打ちますから。」

「ありがとうございます。アリアナ様!」

本当に、三人の家がマズい事になったら、何とかならないか父にお願いしてみよう。



よっぽどお腹が空いていたのか、お昼前だと言うのに、ジョーは、お菓子への手が止まらない。彼女はパイをかじりながら、時計をちらりと見た。

「それにしても、クリフ様達、遅くない?。もうすぐ11時半よ。」

「ちょっと見てこようか?」

とディーンが席を立った時、玄関のチャイムが鳴った。

「いらっしゃったのかしら?」

私は椅子から立ち上がり、入口の方へ向かった。

思った通り、玄関にクリフとノエルとパーシヴァルが立っていた。クリフは私の顔を見ると、困ったように口もとに手をやった。

「遅くなってすまない・・・。連れてこようか迷ったんだが、実はノエルの奴が・・・。」

「ノエル様、どうかなされたのですか?」

ノエルの方へ目を向けると、彼とバチっと目が合った。

「あのさぁ・・・アリアナ嬢。君さぁ・・・。」

声が、いつのも明るい彼の様子では無く、口調がとげとげしい。そして、何より私を見る目に、彼とは思えないような凶暴な光が揺れていた。

(えっ?。ノエルってば、怒ってる?。しかも私に!?)

「ノ、ノエル様・・・どうしたのですか?」

すると彼は、私をビシッと指さしてこう言ったのだ。

「いい加減に、しなよねっ!。ちょっと可愛くて、頭良くて、家柄が良いからって、周りにいる男を振り回すのはっ!。」

ノエルの口から、想像も出来ない言葉を聞いて、私は一瞬、思考が吹っ飛んだ。

(は?)
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...