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第5章 悪役令嬢は絡まれたくない
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生徒会室は3つの部屋で構成されている。
一つは生徒会のメンバーが作業する為の広い部屋。二つ目は、休憩やお茶会にも使える、小さなキッチン付きのティールーム。そして三つ目は、生徒会長の執務室・・・、つまり、トラヴィスの為だけの専用個室だ。
「皇太子殿下・・・。どうして私は、授業中に呼び出されたのでしょうか・・・?」
トラヴィスは大きめのデスクの、高い背もたれの椅子に腰かけていて、私は部屋の真ん中に置かれた椅子に座っている。
まるで何かの面接のようだ。
「私の学年は、一昨日フィールドワークで休日授業だったからね。今日は振り替えで休みなんだ。君のクラスは今、先生が急病で自習中だよね?。」
(ちっ)
私は心の中で舌打ちした。なんで急に決まった自習の事を知ってるのよ!?
トラヴィスは、ニコニコと眩いばかりの皇太子スマイルを浮かべている。
普通の女性なら、それだけでクラクラしそうなぐらい、魅力的な微笑みだ。
輝くブロンドの髪に、皇室直系の証である、金に近いトパーズの瞳。美しいが、決して女性的ではない精悍な顔。耳に心地よい声と、誠実そうな物言い。さすが、乙女ゲーム『アンファエルンの光の聖女』のメイン攻略者だよ。文句のつけようが無い。
(だが、騙されないぞ・・・。この皇子は胡散臭い。)
微笑む瞳の奥で、油断のならない光が見え隠れしている事を、私は見逃してはいないのだ。
「私の秘書を引き受けてくれて嬉しいよ。生徒会の仕事は何かと雑多で忙しいからね。生徒会メンバーは皆、優秀だけど、それでも、私が直接指示しなくてはいけない事も多い。」
「・・・はい。」
私は渋々返事を返した。
(引き受けたも何も、断わる選択肢が無かっただけだって!。あんたが、兄のクラークを使ったあげく、周りからも固められたんだから!)
私の内心の毒づきを知らないで、トラヴィスは、涼しい顔で話を続ける。
「皇国の公務も一部引き受けているから、なかなか、やりたい事が出来なくてね。新規で試したい事も色々あるから、その辺を手伝ってほしいんだ。」
(そう言えば、ディーンが言ってたな。トラヴィスは色々と、新しいアイデアを出してるって。)
だからと言って、なんで私が?と言う思いは抜けない。私は学力なら誰にも負けないが、正直それだけなのだ。
「・・・はぁ、そうですか。でも私がお役に立てるとは思えません・・・、お聞きになっていると思いますが、私は魔力ゼロなのです。」
「その辺は大丈夫。手伝ってほしい事に、魔力は関係ないから。」
トラヴィスは笑みを崩さない。なんだかそれも裏がある様な気がして、気味が悪くなってくる。
「でも、今日呼び出したのは、仕事とは関係ない。実は、君に二人きりで、聞きたい事があってね。」
気のせいか、「二人きりで」と言う部分が、強調されていた様に思えて、私は身構えた。
トラヴィスは組んだ手の上から私を見据え、彼の目が鋭くキラリと光った。それを見て私は一瞬ゾクリとし、警戒心が増す。
(何?。もしかして、また悪役令嬢役の事・・・?)
執務室の時計の音が、やけに大きく聞こえる。私の心臓の音と呼応するかのように・・・。
トラヴィスは不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりとした口調で、私に向かって訪ねた。
「アリアナ嬢。君は、カップラーメンはノーマル派?。それともシーフード派か?。」
私は一瞬、ガクッと力が抜けた。何を聞かれるかと思えば・・・、
(は?。何だ?、そのくだらない質問。)
「・・・どちらかと言えばノーマルですが、いったいどういう・・・。」
そこまで答えて、私は全身が凍り付いた。
(な、な、な、何!?。こ、こ、こ、この人、今、なんてった?!)
この乙女ゲームの世界に、カップラーメンなんてあるわけない!。だとしたら、この人は・・・。
思わず椅子から立ち上がり、口元を押さえる。その手が知らずとが震えいた。そして、私のその様子を見て、トラヴィスは皇太子らしからぬ表情で、ニヤリと笑った。
「・・・ノーマルね・・・そう、ふふっ・・・ノーマル派なんだ。」
そう言いながら、「くっくっく・・・」と組んだ手を額に当てて頷き、身体を震わせて笑い始めた。
私はその異様な姿と、聞かれた事の衝撃で、壁際に張り付く様にして距離を取った。
(な、何なの?この人。気持ち悪っ!。いったい何者!?)
もう部屋から逃げだそうか?と思った時、
「あっはっはっは・・・、もう、やっだぁー!そんな、怖がんないでよぉ~!」
トラヴィスは、心底おかしそうに笑いながら、明るい口調で、そう言ったのだ。
第5章 終
一つは生徒会のメンバーが作業する為の広い部屋。二つ目は、休憩やお茶会にも使える、小さなキッチン付きのティールーム。そして三つ目は、生徒会長の執務室・・・、つまり、トラヴィスの為だけの専用個室だ。
「皇太子殿下・・・。どうして私は、授業中に呼び出されたのでしょうか・・・?」
トラヴィスは大きめのデスクの、高い背もたれの椅子に腰かけていて、私は部屋の真ん中に置かれた椅子に座っている。
まるで何かの面接のようだ。
「私の学年は、一昨日フィールドワークで休日授業だったからね。今日は振り替えで休みなんだ。君のクラスは今、先生が急病で自習中だよね?。」
(ちっ)
私は心の中で舌打ちした。なんで急に決まった自習の事を知ってるのよ!?
トラヴィスは、ニコニコと眩いばかりの皇太子スマイルを浮かべている。
普通の女性なら、それだけでクラクラしそうなぐらい、魅力的な微笑みだ。
輝くブロンドの髪に、皇室直系の証である、金に近いトパーズの瞳。美しいが、決して女性的ではない精悍な顔。耳に心地よい声と、誠実そうな物言い。さすが、乙女ゲーム『アンファエルンの光の聖女』のメイン攻略者だよ。文句のつけようが無い。
(だが、騙されないぞ・・・。この皇子は胡散臭い。)
微笑む瞳の奥で、油断のならない光が見え隠れしている事を、私は見逃してはいないのだ。
「私の秘書を引き受けてくれて嬉しいよ。生徒会の仕事は何かと雑多で忙しいからね。生徒会メンバーは皆、優秀だけど、それでも、私が直接指示しなくてはいけない事も多い。」
「・・・はい。」
私は渋々返事を返した。
(引き受けたも何も、断わる選択肢が無かっただけだって!。あんたが、兄のクラークを使ったあげく、周りからも固められたんだから!)
私の内心の毒づきを知らないで、トラヴィスは、涼しい顔で話を続ける。
「皇国の公務も一部引き受けているから、なかなか、やりたい事が出来なくてね。新規で試したい事も色々あるから、その辺を手伝ってほしいんだ。」
(そう言えば、ディーンが言ってたな。トラヴィスは色々と、新しいアイデアを出してるって。)
だからと言って、なんで私が?と言う思いは抜けない。私は学力なら誰にも負けないが、正直それだけなのだ。
「・・・はぁ、そうですか。でも私がお役に立てるとは思えません・・・、お聞きになっていると思いますが、私は魔力ゼロなのです。」
「その辺は大丈夫。手伝ってほしい事に、魔力は関係ないから。」
トラヴィスは笑みを崩さない。なんだかそれも裏がある様な気がして、気味が悪くなってくる。
「でも、今日呼び出したのは、仕事とは関係ない。実は、君に二人きりで、聞きたい事があってね。」
気のせいか、「二人きりで」と言う部分が、強調されていた様に思えて、私は身構えた。
トラヴィスは組んだ手の上から私を見据え、彼の目が鋭くキラリと光った。それを見て私は一瞬ゾクリとし、警戒心が増す。
(何?。もしかして、また悪役令嬢役の事・・・?)
執務室の時計の音が、やけに大きく聞こえる。私の心臓の音と呼応するかのように・・・。
トラヴィスは不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりとした口調で、私に向かって訪ねた。
「アリアナ嬢。君は、カップラーメンはノーマル派?。それともシーフード派か?。」
私は一瞬、ガクッと力が抜けた。何を聞かれるかと思えば・・・、
(は?。何だ?、そのくだらない質問。)
「・・・どちらかと言えばノーマルですが、いったいどういう・・・。」
そこまで答えて、私は全身が凍り付いた。
(な、な、な、何!?。こ、こ、こ、この人、今、なんてった?!)
この乙女ゲームの世界に、カップラーメンなんてあるわけない!。だとしたら、この人は・・・。
思わず椅子から立ち上がり、口元を押さえる。その手が知らずとが震えいた。そして、私のその様子を見て、トラヴィスは皇太子らしからぬ表情で、ニヤリと笑った。
「・・・ノーマルね・・・そう、ふふっ・・・ノーマル派なんだ。」
そう言いながら、「くっくっく・・・」と組んだ手を額に当てて頷き、身体を震わせて笑い始めた。
私はその異様な姿と、聞かれた事の衝撃で、壁際に張り付く様にして距離を取った。
(な、何なの?この人。気持ち悪っ!。いったい何者!?)
もう部屋から逃げだそうか?と思った時、
「あっはっはっは・・・、もう、やっだぁー!そんな、怖がんないでよぉ~!」
トラヴィスは、心底おかしそうに笑いながら、明るい口調で、そう言ったのだ。
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