モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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(ぐっ、急に『王太子トラヴィス』戻った・・・。)

真面目な顔で、真っすぐ目を見られてドギマギしてしまう。トパーズ色の瞳が星のまたたきのようで・・・、

(顔がめっちゃ良い・・・。)

メイン攻略者、恐るべし。中身がアレなのに、見た目で脳が騙されそう。私は頭を振って、余計な考えを振り飛ばした。

「す、好きな人なんて居ないです。それに、恋愛を楽しむなどと言う気は無いですよ。とにかく、私はロリコンさえ回避できれば良いんです。」

「へぇ、勿体ないね。君はこんなにも、愛らしいのに。」

微笑みながら、そう言われて、頭の温度が一気に上がる。

「う・・・あ・・・」

恐らく真っ赤になって、言葉が出せないで居ると、トラヴィスが「ぶっ」と吹出した。

「あっはっは・・・。やっぱりそうか。男慣れしてないわね、あんたって。くっくっく・・・」

そう言って、けらけら笑っている。私は別の意味で、頭の温度が上がった。

「からかわないでくれませんか、トラヴィス殿下。」

我ながら、ドスの効いた声が出た。でも、思いっきりにらんだにもかかわらず、トラヴィスは全然ケロッとした表情だ。

「からかってるつもりは無いけどね。でも、慣れてないのはホントでしょ?。だから、前世でも彼氏出来なかったんじゃない?。」

「う・・・。確かに仰る通りですが・・・彼氏が出来なかったのは、忙しくて、恋愛などする暇は無かったからです!。それに・・・、特に誰も、好きにならなかったので・・・。」

前の世界でも、素敵な人はたくさんいた。高校でも、大学でも。けれど、イケメンだな、良い人だな、優しいなって思っても、別にそれは『恋』には繋がる事は無かった。

「毎日、勉強して、働いて、勉強して、ゲームして、勉強したら、一日終わってましたから。」

「・・・勉強多すぎない?。でもさ、乙女ゲームをやってたって事は、カッコいい男の子が嫌いな訳ではないわよね?。」

「嫌いどころか、大好きですよ。イケメンは、目の保養です。心の癒しです。国の宝です。」

思わず、拳を握りながら力説してしまう。

「うん・・・イケメン好きなのは、よーく分かった。だったらさ。ここでは、あんた、イケメンに周りを囲まれてる状態よ?。『誰かと恋人同士になりたいわっ。』とか思わないわけ?。」

「・・・?。思わないですねぇ。」

トラヴィスはポカンと口を開けて、呆れたように首を振った。

「勿体ない・・・。普通の女の子なら、この状態にいたら狂喜乱舞よ?。それに、あんたって相当可愛いし、家柄も良いし、頭も良くって、性格だって悪くない。望めば誰だって落とせそうなのに・・・。イケメン好きなくせに、恋人いらないなんて、どっか欠けてるわよ?。」

なんか、めちゃくちゃ褒められたのに、最後で落とされたな・・・。




(欠けてるなんて、失礼な・・・。そんな事・・・前の世界の時から気付いてるよ・・・。)

私は自室のベッドで熱に浮かされながら、胸がちりちりと痛んだ。

(だって、恋愛感情がどんなものなのか・・・私には本当に分からないんだもん・・・。)


今も、昔も。


だから、乙女ゲームにのめり込んだ。攻略者達と、悩みながらも楽しい恋愛をし、成長していくヒロインが、尊くて可愛くて大好きだった。

そして・・・、無様で、歪んでいても、執念深くても・・・。そして例えそれが憎悪に変わったとしても、ずっと相手に『恋』をしてるアリアナやエメラインが羨ましかった・・・。

(だから、睡眠時間を削ってでも、ゲームを止められなかったのかな?。・・・馬鹿だな、私は。)




夢の中、別の日にトラヴィスと話た事が再現される。トラヴィスは、何かと私に仕事以外の事を話しかけてくるのだ。それが、時々うっとおしい。

「ねぇ、あんた。クラークは兄弟だから仕方ないけど、ディーンとクリフの事はどう思ってんの?。」

「どうって、二人は友達ですよ?。」

「じゃあ、私とパーシヴァルは?。」

(はぁ?。何言っての、この人は。)

「トラヴィス殿下は・・・ご無礼で無ければ・・・同士ですかね?。パーシヴァルは・・・。」

そこで私は、思い出した。

(そうだ!。パーシヴァルの事、聞き忘れてた!)

「殿下!。パーシヴァルはいったい、どうしちゃってるんですか!?。おかしいです!。ゲームより、チャラくないし、・・・そ、それに彼は・・。」

(ど、どうしよう?。これ、言っていいのか?。)

パーシヴァルがディーンを好きって事、誰にも言わないって約束した。でも、よりによって攻略者が道ならぬ恋に走ってるなんて、とんでも無い異常事態だ。
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