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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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「5才の時に、前世の記憶を思い出したけど、ちゃんとそれまでトラヴィスとして育った記憶もある。だから中身もトラヴィスだよ、私は。」
平然とそう言われて、私は混乱した。
「で、殿下は、トラヴィスの記憶があるんですか!?。」
そう聞くと、不思議そうに私を見て、
「当たり前だろう?。私は単に、昔の事を思い出しただけだ。もちろん、それからの生き方に、大きな影響を与えはしたがね。」
そう言って、フッと笑った。
(ま、また、スルっとと王太子に戻る・・・)
アラサーねーさんの喋り方の時は、違和感はあるけど全然緊張しないのに、完全にトラヴィスの口調に戻られると、急に背筋が伸びる様な気にさせられる。それに・・・、
(どういう事?)
この世界での、自分という存在の感じ方が、トラヴィスと私では全然違う?!。
「あ、あの・・・殿下は、自分の中に、自分だけじゃなくて、別の人が居る感覚は無いのでしょうか?。」
「はぁ!?。何それ、気持ち悪~い!」
だから、急に喋り方を変えないで・・・。
「ですから、例えば殿下の中に、前世の自分と、トラヴィスの人格?というか存在を感じる事は無いのですか?。」
「は?。何言ってんの?。無いわよぉ、そんなの。だから、私がトラヴィスなんだってば。OLと王太子が同居してるんじゃなくて、王太子の私が、昔OLだった事を思い出しただけよ。もしかして、あんたは違うの?。」
トラヴィスの言葉に私は考え込んでしまった。
前の世界で生きていたのは、私もトラヴィスも同じだと思う。同じ乙女ゲームをやっていた事から、年齢は違うけど同じ時代に居たのだろう。だけどこの世界での存在の仕方が、違っているような気がした。
少なくとも、私はアリアナでは無い。アリアナの記憶なんて持っていないし、前世を思い出したと言う感覚も無い。
『私』はあくまでも『私』で、気が付いたら『アリアナ』の肉体で目を覚ましたのだ。そして、その時からずっと、『アリアナ』の存在をどこかで感じている。彼女は私の行動を止めようとしたこともあったし、一度は『私』と代わって、表面に出てきた事だってある。
(イーサンは私の中に二人居るって言った。そしてそのうちの一人・・・アリアナは弱くて、表に出てこれないんだって・・・。だから、やっぱり殿下とは違う。私はアリアナの前世なんかじゃない。別の人格なんだ。)
私はトラヴィスに、その事を説明した。
「驚いたわね・・・。あんたもてっきり、前世を思い出した口だと思ったわ。でもさ、もしかしたら単に、事故のショックでアリアナの記憶を忘れたって事じゃ無いの?。」
「だとしたら、たまにアリアナが出て来るのっておかしくないですか?。しかも、私の息の根を止めようとした事もありましたよ。」
「いや、自分の息の根止めちゃだめでしょ!。・・・だったらねぇ、2重人格って事はない?。事故のショックで、前世の自分と、今世のアリアナの部分に分かれたってのはどう?。」
「イーサンの話を聞いて無けりゃ、良い線いってる気はしますがね。だけど、あいつは確実に、私の中には二人居るって言ってましたよ。」
まぁ、奴が嘘ついて無ければだけどね。それに、奴を信じるのも癪だけどね。
「ふーん・・・。」
トラヴィスは少し考え込むようにして、「そうか・・・、魔力を使えば・・・でも・・・。」と、何かブツブツと言い始めた。
「殿下?。」
「・・・いや、うん・・・できるかも」
「どうしたんですか?。」
困惑する私の方を、トラヴィスは突然くるりと振り向くと、机を回ってスタスタと、こちらにやってきた。そして私の頭を両手でがしっと掴むと、いきなり顔を近づけてきたのだ!。
「でで、殿下!?。」
「しっ!動かないで!」
(う、動かないでって・・・!?)
万力の様な怪力で頭を掴まれては、動きようが無い。そして、トラヴィスはおでこが付きそうなくらい顔を近づけて、眉間にしわを寄せて、私の目の中を覗きこんだのだ。
(な、なんなの?この状態。)
私は、不気味なトラヴィスの様子に意味が分からなくて、身体が固まっていた。
「ほうほう・・・なるほどね・・・。分かる、分かる・・・」
(い、いやだぁ・・・この人、まだブツブツ言ってるよぉ~。)
掴まれた頭は痛いし、トラヴィスの目付き異様だし、なんかもう涙目になってしまう。すると、突然、執務室のドアが「トントン」とノックされたのだ。
「入りたまえ。」
何かに集中しているトラヴィスは、そのままの恰好でぞんざいに答えた。
(えええっ!?)
いや、駄目でしょ!?。今は!。
「失礼しま・・・。」
思った通り、執務室に入ってきたディーンは、私とトラヴィスの姿を見て絶句した。
平然とそう言われて、私は混乱した。
「で、殿下は、トラヴィスの記憶があるんですか!?。」
そう聞くと、不思議そうに私を見て、
「当たり前だろう?。私は単に、昔の事を思い出しただけだ。もちろん、それからの生き方に、大きな影響を与えはしたがね。」
そう言って、フッと笑った。
(ま、また、スルっとと王太子に戻る・・・)
アラサーねーさんの喋り方の時は、違和感はあるけど全然緊張しないのに、完全にトラヴィスの口調に戻られると、急に背筋が伸びる様な気にさせられる。それに・・・、
(どういう事?)
この世界での、自分という存在の感じ方が、トラヴィスと私では全然違う?!。
「あ、あの・・・殿下は、自分の中に、自分だけじゃなくて、別の人が居る感覚は無いのでしょうか?。」
「はぁ!?。何それ、気持ち悪~い!」
だから、急に喋り方を変えないで・・・。
「ですから、例えば殿下の中に、前世の自分と、トラヴィスの人格?というか存在を感じる事は無いのですか?。」
「は?。何言ってんの?。無いわよぉ、そんなの。だから、私がトラヴィスなんだってば。OLと王太子が同居してるんじゃなくて、王太子の私が、昔OLだった事を思い出しただけよ。もしかして、あんたは違うの?。」
トラヴィスの言葉に私は考え込んでしまった。
前の世界で生きていたのは、私もトラヴィスも同じだと思う。同じ乙女ゲームをやっていた事から、年齢は違うけど同じ時代に居たのだろう。だけどこの世界での存在の仕方が、違っているような気がした。
少なくとも、私はアリアナでは無い。アリアナの記憶なんて持っていないし、前世を思い出したと言う感覚も無い。
『私』はあくまでも『私』で、気が付いたら『アリアナ』の肉体で目を覚ましたのだ。そして、その時からずっと、『アリアナ』の存在をどこかで感じている。彼女は私の行動を止めようとしたこともあったし、一度は『私』と代わって、表面に出てきた事だってある。
(イーサンは私の中に二人居るって言った。そしてそのうちの一人・・・アリアナは弱くて、表に出てこれないんだって・・・。だから、やっぱり殿下とは違う。私はアリアナの前世なんかじゃない。別の人格なんだ。)
私はトラヴィスに、その事を説明した。
「驚いたわね・・・。あんたもてっきり、前世を思い出した口だと思ったわ。でもさ、もしかしたら単に、事故のショックでアリアナの記憶を忘れたって事じゃ無いの?。」
「だとしたら、たまにアリアナが出て来るのっておかしくないですか?。しかも、私の息の根を止めようとした事もありましたよ。」
「いや、自分の息の根止めちゃだめでしょ!。・・・だったらねぇ、2重人格って事はない?。事故のショックで、前世の自分と、今世のアリアナの部分に分かれたってのはどう?。」
「イーサンの話を聞いて無けりゃ、良い線いってる気はしますがね。だけど、あいつは確実に、私の中には二人居るって言ってましたよ。」
まぁ、奴が嘘ついて無ければだけどね。それに、奴を信じるのも癪だけどね。
「ふーん・・・。」
トラヴィスは少し考え込むようにして、「そうか・・・、魔力を使えば・・・でも・・・。」と、何かブツブツと言い始めた。
「殿下?。」
「・・・いや、うん・・・できるかも」
「どうしたんですか?。」
困惑する私の方を、トラヴィスは突然くるりと振り向くと、机を回ってスタスタと、こちらにやってきた。そして私の頭を両手でがしっと掴むと、いきなり顔を近づけてきたのだ!。
「でで、殿下!?。」
「しっ!動かないで!」
(う、動かないでって・・・!?)
万力の様な怪力で頭を掴まれては、動きようが無い。そして、トラヴィスはおでこが付きそうなくらい顔を近づけて、眉間にしわを寄せて、私の目の中を覗きこんだのだ。
(な、なんなの?この状態。)
私は、不気味なトラヴィスの様子に意味が分からなくて、身体が固まっていた。
「ほうほう・・・なるほどね・・・。分かる、分かる・・・」
(い、いやだぁ・・・この人、まだブツブツ言ってるよぉ~。)
掴まれた頭は痛いし、トラヴィスの目付き異様だし、なんかもう涙目になってしまう。すると、突然、執務室のドアが「トントン」とノックされたのだ。
「入りたまえ。」
何かに集中しているトラヴィスは、そのままの恰好でぞんざいに答えた。
(えええっ!?)
いや、駄目でしょ!?。今は!。
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思った通り、執務室に入ってきたディーンは、私とトラヴィスの姿を見て絶句した。
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