145 / 284
第6章 悪役令嬢は利用されたくない
22
しおりを挟む
「いーい!?。ディーンとクリフはあんたにぞっこん。それに、あろう事かイーサン様まであんたを気に入ってるのよ!?。」
トラヴィスは悔しそうな顔で右手を握った。その拳がぷるぷると震えている。
(ちょっと!。どうしてそこで、王太子が悔しがるの!?。それに、そんな馬鹿なことあるわけないでしょうが!)
私は慌てて反論する。
「いえいえ、ディーンとクリフは友達ですし、・・・ディーンにはマーリンが・・・、それにイーサンなんて、単に私に嫌がらせしてるだけですよ!。いっつも、私の気に障る事ばっか言って・・・。」
「だまらっしゃい!。」
厳しい声でビシッと言われて、私は思わず背筋を伸ばした。トラヴィスは眉間を親指と人差し指で挟んで、首を振り、
「鈍いのもここまで来ると、さすがに病的よ。ディーン達が気の毒になってくるわ・・・。良く聞きなさい。ゲームでは、イーサン様のルートに入った場合、イーサン様は、ヒロイン以外の人の前にはめったに表れないわ。なのに、あんたの前には2回も、向こうから会いに来てるのよ!。完全にあんたはルートに入ってるのよ!。それに、クリフだって嫌がってた生徒会に入ったのは、何のためだと思ってんの?。あんたが私の秘書になったからでしょ?。一番可哀そうなのはディーンよ!。いい加減、ディーンに他の女を当てがおうとするのはやめなさい。」
「いや、別に当てがおうと思ったわけじゃ・・・。だって、ヒロインと結ばれない場合は、いつもマーリンと恋人になってたじゃないですか・・・。」
「この世界では、今でもあんたの婚約者よ。ゲームでは婚約破棄していたけど、ここでは違うの!。多分、ディーンは自分からは婚約破棄を言い出さないでしょうね。」
「えっ!。じゃあ、やっぱり私から、そろそろ言った方が良いですかね?。ロリコン避けに使うのも申し訳なくて。ディーンの青春を奪ってるんじゃないかと・・・。」
トラヴィスは今度は頭を抱えて、うずくまった。
「・・・いい加減、こっちが病気になりそうだわ。」
そして突然、ガバッと立ち上がると、私に向かってずんずん歩いてきた。
(いやいや、ちょっと何?。)
つられて私は、後ずさったが、気が付いたら壁際に追いつめられていた。
「な、何ですか!?殿下!。」
バンッ!
壁が音を立てるくらいの勢いで、トラヴィスは私の顔の横に手を付いた。そして、すくんだ私を上から真っすぐ見下ろした。
(こ、これは!。絵に描いたような壁ドン。)
見上げたトラヴィスの顔に、黄金の髪が揺れ、トパーズ色の瞳に射すくめられる・・・、
「『カッコいい~!』とか思ってんじゃ無いでしょうね?。」
ギクッ!
(し、思考を、読まれてる!?。)
「あんたの考えそうなことくらい、お見通しよ。そのくせ、恋愛感情には全く発展しないって、どういう精神構造してんのよ?。」
半目で睨まれて、視線を逸らす。
「べ、別に『カッコいい』と思う度に、恋愛感情を抱いてたら、キリが無いと思いますけど?。」
「うるさい!。いい加減にしなさい、この恋愛音痴の激ニブ女!。・・・言っておくが、ディーンと婚約解消なんて、考えない方が良い。」
(えっ?)
酷い言われようだが、後半は王太子の口調で言われ、反論を飲み込んだ。
「・・・どういう事でしょう?。で、殿下には関係ない事では?。」
トラヴィスは私を見下ろしたまま、薄く笑った。
「大いにある。今回の事件で、私はエメラインとの婚約を解消する事となった。だから、また新たに伴侶を見つけなくてはいけない。家柄、私の後ろ盾となりうる権力、そして皇帝妃の資質の三拍子揃った令嬢をだ。一番、可能性があるのは誰だ?。」
私の頭の横に肘をついて、耳元でささやくように言われ、さーっと血の気が引いた。
「そ、揃ってるのは、家柄と権力の二つだけです・・・。」
「私は、君には資質も備わっていると思っている。容姿は申し分ない。頭も良い。それに、君の前なら、私は取り繕わずに素のままの自分で居られる。こんな好条件の令嬢は他に居ないと思わないか?。」
トラヴィスは悔しそうな顔で右手を握った。その拳がぷるぷると震えている。
(ちょっと!。どうしてそこで、王太子が悔しがるの!?。それに、そんな馬鹿なことあるわけないでしょうが!)
私は慌てて反論する。
「いえいえ、ディーンとクリフは友達ですし、・・・ディーンにはマーリンが・・・、それにイーサンなんて、単に私に嫌がらせしてるだけですよ!。いっつも、私の気に障る事ばっか言って・・・。」
「だまらっしゃい!。」
厳しい声でビシッと言われて、私は思わず背筋を伸ばした。トラヴィスは眉間を親指と人差し指で挟んで、首を振り、
「鈍いのもここまで来ると、さすがに病的よ。ディーン達が気の毒になってくるわ・・・。良く聞きなさい。ゲームでは、イーサン様のルートに入った場合、イーサン様は、ヒロイン以外の人の前にはめったに表れないわ。なのに、あんたの前には2回も、向こうから会いに来てるのよ!。完全にあんたはルートに入ってるのよ!。それに、クリフだって嫌がってた生徒会に入ったのは、何のためだと思ってんの?。あんたが私の秘書になったからでしょ?。一番可哀そうなのはディーンよ!。いい加減、ディーンに他の女を当てがおうとするのはやめなさい。」
「いや、別に当てがおうと思ったわけじゃ・・・。だって、ヒロインと結ばれない場合は、いつもマーリンと恋人になってたじゃないですか・・・。」
「この世界では、今でもあんたの婚約者よ。ゲームでは婚約破棄していたけど、ここでは違うの!。多分、ディーンは自分からは婚約破棄を言い出さないでしょうね。」
「えっ!。じゃあ、やっぱり私から、そろそろ言った方が良いですかね?。ロリコン避けに使うのも申し訳なくて。ディーンの青春を奪ってるんじゃないかと・・・。」
トラヴィスは今度は頭を抱えて、うずくまった。
「・・・いい加減、こっちが病気になりそうだわ。」
そして突然、ガバッと立ち上がると、私に向かってずんずん歩いてきた。
(いやいや、ちょっと何?。)
つられて私は、後ずさったが、気が付いたら壁際に追いつめられていた。
「な、何ですか!?殿下!。」
バンッ!
壁が音を立てるくらいの勢いで、トラヴィスは私の顔の横に手を付いた。そして、すくんだ私を上から真っすぐ見下ろした。
(こ、これは!。絵に描いたような壁ドン。)
見上げたトラヴィスの顔に、黄金の髪が揺れ、トパーズ色の瞳に射すくめられる・・・、
「『カッコいい~!』とか思ってんじゃ無いでしょうね?。」
ギクッ!
(し、思考を、読まれてる!?。)
「あんたの考えそうなことくらい、お見通しよ。そのくせ、恋愛感情には全く発展しないって、どういう精神構造してんのよ?。」
半目で睨まれて、視線を逸らす。
「べ、別に『カッコいい』と思う度に、恋愛感情を抱いてたら、キリが無いと思いますけど?。」
「うるさい!。いい加減にしなさい、この恋愛音痴の激ニブ女!。・・・言っておくが、ディーンと婚約解消なんて、考えない方が良い。」
(えっ?)
酷い言われようだが、後半は王太子の口調で言われ、反論を飲み込んだ。
「・・・どういう事でしょう?。で、殿下には関係ない事では?。」
トラヴィスは私を見下ろしたまま、薄く笑った。
「大いにある。今回の事件で、私はエメラインとの婚約を解消する事となった。だから、また新たに伴侶を見つけなくてはいけない。家柄、私の後ろ盾となりうる権力、そして皇帝妃の資質の三拍子揃った令嬢をだ。一番、可能性があるのは誰だ?。」
私の頭の横に肘をついて、耳元でささやくように言われ、さーっと血の気が引いた。
「そ、揃ってるのは、家柄と権力の二つだけです・・・。」
「私は、君には資質も備わっていると思っている。容姿は申し分ない。頭も良い。それに、君の前なら、私は取り繕わずに素のままの自分で居られる。こんな好条件の令嬢は他に居ないと思わないか?。」
16
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる