146 / 284
第6章 悪役令嬢は利用されたくない
23
しおりを挟む
笑みを浮かべて私を見下ろすトラヴィスは壮絶に格好良かったが、そんな呑気な事は考えられないくらい私は焦った。
(う、嘘でしょ、トラヴィス。まさか本気じゃ無いよね?。)
冷や汗が止まらない。
でもトラヴィスがフリーになった場合、家格、年齢、その他もろもろ条件が合うのは確かに『アリアナ』だ。
(じょ、冗談じゃない!。皇太子妃なんてムリムリムリ!。私はロリコン回避して平和に暮らしたいだけなんだよ!?。)
「ごごご、ご冗談を・・・あはは。やだなぁ、殿下。か、からかわないでくださいよ。」
「からかう?私は、至極真面目に言ってるのだが?。」
「ちょ、ちょっと!。なんで顔を近づけて来るんですか!?!。」
「君はイケメンが大好きだろう?。」
「イケメンは、程よい距離で眺めるのが良いんです!」
「ふ~ん。でもたまには触れてみるのも悪くないんじゃないか?。」
(ぎゃ、ぎゃー!)
どんどん顔を近づけて来るトラヴィスに、私はほぼパニック状態だ。
「ね、ねーさん!いい加減にしてください!」
両手で顔を庇いながら、目を瞑って下に逃げた。這い出す様に、トラヴィスの壁ドンから抜け出すと、後ろでクスクス笑う声が聞こえてきた。
(な?何?。)
「くっくっく・・・ほんと、お子様・・・、OK。あんたの為に、しばらく私はねーさんで居てあげるわよ。でも気を付けなさい。自分がどういう立場にいるのか、ちゃんと理解しなさいよ。」
そう言って髪を手で払ったトラヴィスは、いつものアラサーねーさんに戻っていた。
「や、やっぱり、からかってたんですね!?。」
涙目で睨んだ私に呆れたように溜息をついたトラヴィスは、自分の机に戻って座り、私にも座るように椅子を指さした。
「至極真面目に話してるって言ったでしょ?。要は私とあんたがフリーになったら、周りが放っておかないって事。それを忘れないで。あんたのお父さんだって、グスタフよりも私が相手の方が、メリットあるって考えるわよ?。」
「た、確かに・・・。」
コールリッジ家にとっては、その方が絶対絶対都合が良い。
(ま、まずい・・・。このままじゃ、ずーっとディーンと婚約解消できないんじゃ・・・?。)
「理解出来たのなら、授業に戻りなさい。護衛を付けてあげるから。ああ、それから『例の仕事』に関しては新しい案が出来たから。また放課後に話しましょ。」
ドッと疲れている私に向かって、トラヴィスは神々しいまでの微笑を放った。そしてひらひらと手を振ると、引き出しから書類を出して読み始める。もう私の方なんて見もしない。
「・・・失礼します。」
執務室から出て私は扉にもたれると、ずるずると座り込んで頭を抱えた。
(私がヒロイン?。トラヴィスと結婚!?。いや・・・そんな事ありえないから!)
ロリコンと結婚するのも嫌だけど、皇太子妃なんてもっと無理だ!。どうして?私は平和に暮らしたいだけなのに・・・。
うつうつした気分で教室に戻ると、ちょうど授業が終わった所だった。皆それぞれ仲の良いグループで昼食に向かおうとしている。
「あ、アリアナ様!」
ミリアが目ざとく私を見つけて駆け寄ってきた。
「先生の用事は終わったのですか?。なかなか戻られないので心配しましたわ。」
「お昼ごはんを食べ損ねちゃったら大変だもんね。」
ジョージアがミリアの肩に後ろから抱きつきながら両手をまわし、私に笑いかける。レティシアとクリフもやってきて、
「今日は良いお天気ですから中庭のカフェに行きません?。」
「良いな。席が無くなる前に早く行こう。」
と笑顔を私に向ける。
(あ~、ホッとする・・・。)
皆、私が落ち込んでいるのを察してくれているのだろう。その上で何も聞かずに気遣ってくれているのが分かる。問題は山積みのままだけど、さっきまでのモヤモヤした気分が溶けていった。
「ええ、そうしましょう!。え~っと、リリーとディーン様は・・・?」
「あ、二人は・・・。」
微妙な表情でミリアは顔を教室の出口に方へ向ける。そこにはリリーとディーンがマーリンと一緒に立っているのが見えた。
(う、嘘でしょ、トラヴィス。まさか本気じゃ無いよね?。)
冷や汗が止まらない。
でもトラヴィスがフリーになった場合、家格、年齢、その他もろもろ条件が合うのは確かに『アリアナ』だ。
(じょ、冗談じゃない!。皇太子妃なんてムリムリムリ!。私はロリコン回避して平和に暮らしたいだけなんだよ!?。)
「ごごご、ご冗談を・・・あはは。やだなぁ、殿下。か、からかわないでくださいよ。」
「からかう?私は、至極真面目に言ってるのだが?。」
「ちょ、ちょっと!。なんで顔を近づけて来るんですか!?!。」
「君はイケメンが大好きだろう?。」
「イケメンは、程よい距離で眺めるのが良いんです!」
「ふ~ん。でもたまには触れてみるのも悪くないんじゃないか?。」
(ぎゃ、ぎゃー!)
どんどん顔を近づけて来るトラヴィスに、私はほぼパニック状態だ。
「ね、ねーさん!いい加減にしてください!」
両手で顔を庇いながら、目を瞑って下に逃げた。這い出す様に、トラヴィスの壁ドンから抜け出すと、後ろでクスクス笑う声が聞こえてきた。
(な?何?。)
「くっくっく・・・ほんと、お子様・・・、OK。あんたの為に、しばらく私はねーさんで居てあげるわよ。でも気を付けなさい。自分がどういう立場にいるのか、ちゃんと理解しなさいよ。」
そう言って髪を手で払ったトラヴィスは、いつものアラサーねーさんに戻っていた。
「や、やっぱり、からかってたんですね!?。」
涙目で睨んだ私に呆れたように溜息をついたトラヴィスは、自分の机に戻って座り、私にも座るように椅子を指さした。
「至極真面目に話してるって言ったでしょ?。要は私とあんたがフリーになったら、周りが放っておかないって事。それを忘れないで。あんたのお父さんだって、グスタフよりも私が相手の方が、メリットあるって考えるわよ?。」
「た、確かに・・・。」
コールリッジ家にとっては、その方が絶対絶対都合が良い。
(ま、まずい・・・。このままじゃ、ずーっとディーンと婚約解消できないんじゃ・・・?。)
「理解出来たのなら、授業に戻りなさい。護衛を付けてあげるから。ああ、それから『例の仕事』に関しては新しい案が出来たから。また放課後に話しましょ。」
ドッと疲れている私に向かって、トラヴィスは神々しいまでの微笑を放った。そしてひらひらと手を振ると、引き出しから書類を出して読み始める。もう私の方なんて見もしない。
「・・・失礼します。」
執務室から出て私は扉にもたれると、ずるずると座り込んで頭を抱えた。
(私がヒロイン?。トラヴィスと結婚!?。いや・・・そんな事ありえないから!)
ロリコンと結婚するのも嫌だけど、皇太子妃なんてもっと無理だ!。どうして?私は平和に暮らしたいだけなのに・・・。
うつうつした気分で教室に戻ると、ちょうど授業が終わった所だった。皆それぞれ仲の良いグループで昼食に向かおうとしている。
「あ、アリアナ様!」
ミリアが目ざとく私を見つけて駆け寄ってきた。
「先生の用事は終わったのですか?。なかなか戻られないので心配しましたわ。」
「お昼ごはんを食べ損ねちゃったら大変だもんね。」
ジョージアがミリアの肩に後ろから抱きつきながら両手をまわし、私に笑いかける。レティシアとクリフもやってきて、
「今日は良いお天気ですから中庭のカフェに行きません?。」
「良いな。席が無くなる前に早く行こう。」
と笑顔を私に向ける。
(あ~、ホッとする・・・。)
皆、私が落ち込んでいるのを察してくれているのだろう。その上で何も聞かずに気遣ってくれているのが分かる。問題は山積みのままだけど、さっきまでのモヤモヤした気分が溶けていった。
「ええ、そうしましょう!。え~っと、リリーとディーン様は・・・?」
「あ、二人は・・・。」
微妙な表情でミリアは顔を教室の出口に方へ向ける。そこにはリリーとディーンがマーリンと一緒に立っているのが見えた。
15
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる