モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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(あ~なるほど。)

私は以前、皆にマーリンと仲良くしてくれるように言った。
だからリリーはもちろんミリア達もマーリンに何度も話しかけた。けれどマーリンはリリーとディーン以外の人には心を開こうとしなかったのだ。
まぁ皆は、マーリンが大嫌いな『アリアナ』の友達なのだから警戒されるのは当たり前かもしれない。人の懐に入り込むのが大得意な、あのパーシヴァルですらマーリンには通用しなかったのだから。

(でも、ディーンとリリーとは普通に話すんだよなぁ。)

ディーンは昔からの幼馴染で好きな人だもんね。リリーはゲームでは親友ポジションだったのだからその辺が影響しているのかもしれない。

だから、結局ディーンとリリーの二人だけがマーリンのそばに居る事ができた。その他の人がマーリンに近寄った所で、塩対応をされるのが落ちなのだ。やっぱり2年生の初日の騒動の時、誰も味方をしてくれなかった事が尾を引いてるのだろうか?


すると、マーリンと話していたディーンがふと顔を上げ、私と目が合った。瞬間、彼は顔を赤らめると恥ずかしそうに視線を逸らした。

(な、なんだ?。その反応は!?)

イケメンが乙女の様に恥じらうのは、ぞくぞくするではないか!。

(きっと。さっきの執務室での事を思い出したんだな?。トラヴィスにからかわれた事も、相当尾がをひいてそうだね。)

まぁ、私も人の事は言えない。トラヴィスの手の平の上で転がされるのは、私の方が多いのだから・・・。


昼食の場所が決まったのだろう、マーリンとディーンは教室を出て行き、リリーも後に続いた。でもリリーは出がけに私の方を見て微笑みながら手を振ってくれた。

(ああ・・・ヒロインが尊い!)

締まりのない顔でブンブン手を振り返していると、クリフが

「さぁ、俺達も早く行こう。」

私の肩をポンっと叩いた。

「そうですね。お昼休みは短いですし・・・って、パーシヴァル殿下!どうしたのです?!。」

クリフの後ろにパーシヴァルが付いてきている。私が驚いたのは、彼はいつもディーンにくっついている筈だからだ。ディーンがマーリンと居る時も、私達と居る時も、必ずパーシヴァルはディーンの傍にいたのに・・・。

「今日は、君達と一緒に食事に行こうと思う。悪い?。」

拗ねたような物言いが、彼には珍しい。

「別に悪くは無いですが・・・、良いのですか?。ディーン様と一緒でなくて。」

「・・・あの女といるディーンは見たくない。」

(えっ?)

ボソッと私にだけ聞こえる小さな声でそう言うと、パーシヴァルは「さぁ、昼御飯だ!」と、いつもの人好きする笑顔を浮かべて、クリフと肩を組んで歩き始めた。





「実はまた、色々と無責任な噂がたっていまして・・・。」

カフェでのランチの後、そのままお茶を飲み始めた時ミリアが口を開いた。

「くだらない内容で、不愉快にさせてしまうと思うのですが・・・。きっとそのうちアリアナ様のお耳にも入って来ると思いますし・・・、問題にもなりそうなのでお知らせしておきます。」

「今度はどういうパターンなの?。」

「皆様、本当に暇なのですね~。」

ジョージアはアイスを口に放り込みつつ、そしてレティシアは呆れたように溜息をつきながらそう言った。

確かに、私絡みの噂は今までも色々流れていたから、今更どう言われてもという感はある。

(でもジョーとレティが知らないって事は、最新の噂って事か。)

ミリアはどういうツテがあるのか、顔が広くてかなりの情報通なのだ。

「うん、教えてくれる?ミリア。内容によっては対処しなくちゃいけないから。」

「はい。まず一つ目はディーン様とマーリンが恋仲であるというものです。・・・これは最近休み時間を一緒に過ごされる事が多いので、仕方ないかとも思うのですが・・・。」

「でも、ランチはリリーも一緒に行ってるじゃない?。どうしてディーン様とマーリンなのよ?。」

ジョージアが首を傾げた。するとミリアは顔をしかめて、

「マーリンの態度があからさまなのよ。まるでディーン様の恋人のように振舞ってるらしいわ。それを許してるディーン様もディーン様ですがね。見かねて、たまにリリーがたしなめているとか。・・・アリアナ様!これは、性急に対処された方が良いですわ。」

「えっ?。別に良いけど、放っておいても・・・。」
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