モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
148 / 284
第6章 悪役令嬢は利用されたくない

25

しおりを挟む
「ええっ?!」

全員驚いたように私を見る。だけど、プンスカ怒っているミリアには悪いが、本当にそう思うのだ。

「マーリンさんはディーン様と幼馴染らしいし、本当なら二人が婚約していてもおかしく無いのよ。二人がそうしたいなら、それで良いと・・・。」

そこまで言って思い出した。

(いや・・・駄目だった!。とりあえず、ディーンとの婚約は継続しておかなくちゃいけないんだった。くっそー!。色々身動き取れない上に面倒くさい!。トラヴィスの事が無ければ、ディーンとマーリンを祝福しながら綺麗に婚約解消出来るって言うのに・・・。)


私が途中で黙り込んだのをどう解釈したのか、レティが心配そうな顔で私の手を握る。

「アリアナ様。ディーン様が本当にお好きなのは、もちろん婚約者であるアリアナ様ですわ。マーリンが勝手にディーン様の優しさにつけ込んでるだけですからね。」

「えっ?あ、うん。・・・あ、ありがと。」

どう返したらいいか分からず、とりあえずお礼を言った。それにしても、皆すっかりマーリンの事を呼び捨てにしてる。今までのマーリンの態度に腹が立ってるのだろう。

すると、食事中はほとんど黙っていたパーシヴァルが、

「・・・レティシア嬢の言う通りだ。」

再び彼にしては棘のある口調でそう言った。

「ほんとに鬱陶しい女だよ。ディーンはアイツが独りぼっちなのに同情しているだけなのに。何かって言うと『何々した事を覚えてる?』だの、『一緒に何々したわよね。』だの・・・。昔の話を持ち出しては、ディーンの気を引くんだ。ディーンと幼馴染なのは、奴だけじゃ無いって言うのにさっ。僕だって、昔からディーンと一緒にいたんだ!。おまけにディーンにベタベタと触りやがって、まるで痴女だよ!」

パーシヴァルの剣幕に、皆は呆気に取られている。よっぽど腹に据えかねていたのだろう、いつもの外面の良さが完全に消えてしまっている。マーリンの呼び方なんて、女→アイツ→奴→、最後には痴女ときたもんだ。

「お、落ち着いてください!。パーシヴァル殿下。」

慌てて彼をなだめてみる。これ以上興奮すると、ディーンへのBLがバレてしまいそうだ。

「マーリンさんのディーン様への態度は、もしかしたらモーガン先生の精神魔術の影響かもしれませんよ。リリーの話ではマーリンさんはまだ、モーガン先生と接触があるみたいですから。」

例のモーガン先生主催の『淑女クラブ』もまだ続いている。密かに調査員が入っている筈だけど、なかなか尻尾がつかめない様だ。モーガン先生が闇の組織と繋がっているというイーサンからの情報も伝えてはいるが、その先の進展が分からない。モブ令嬢などには、詳しい情報は伝わってこないのだ。

(トラヴィスに聞いておけば良かった。)

でも、あの狸ねーさんが教えてくれるかどうかは分からないけど。

「リリーの聖魔術で精神魔術を浄化できるのですよね?。」

「今は、モーガン先生を警戒させない為に、まだ聖魔術の浄化は行ってないそうよ。まずは証拠を掴まないといけないらしいけど、ああ、もう!何をぐずぐずしているのかしら?。このままじゃ、精神魔術の被害者が増えるだけじゃないの。」

レティシアの問いに、ミリアが親指の爪を噛みながら答えた。

(エメライン王女のゴタゴタで、隣国とも対応しなくちゃいけないから、省庁もてんやわんやなんだろうなぁ。トラヴィスも忙しそうだったし。)

モーガン先生が闇の組織と繋がっていると分かった以上、調査は慎重に行わないといけない。きとんと黒幕までたどり着かないと、トカゲの尻尾切りで終わってしまう。
それに、精神魔術の調査は難しい。調査員自体も、相手より魔力が低かったら、精神魔術の被害に遭いかねないのだから。

「ねぇ、マーリンがまだ精神魔術にかけられてるとしたら、リリーとディーン様に危険は無いの?。」

ジョーの言葉にドキッとする。

(・・・あ、気付かなかった・・・。)

なまじゲームの中でのマーリンと二人の関係を知っていたもんだから、その発想が浮かばなかったのだ。

(確かにマーリンは、不自然な程リリーとディーン以外の人間と関わらない様にしている・・・。ディーンはともかく、リリーとは2年になってから出会った筈。いくら同じ聖女候補で、ゲームではリリーとは親友だったとはいえ、極端すぎない?。)

それにゲームのマーリンは、明るくて誰とでも分け隔てなく友達になれる子だった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...